作文能力の無いとある学生の日記ー5
まず端的に、率直に、結果を記す。死者が出た。死者はナカムラだった。この顛末について、朝の会議から記す。前日と同様に鐘が鳴り、全員が講堂へと向かった。そしてそこにはナカムラの姿は無かった。前日の夕方の会議には一番最初にいたというキドの言葉から全員が不審に思ったが、今日はたまたま遅いだろうと一番最後に来たサイトウが席に座ると、鐘と同時に画面に会議開始と表示された。流石にこれには全員が動揺した。まだ死んだとは決まった訳では無いと誰かが言ったが、画面に中村裕子が死亡しました。と、表示され、部屋中に戦慄が走った。流石にこれには応えたのか、シミズを始めとした女性陣やまだ幼いハルトらは泣き崩れていた。声を荒げながら泣く者もいたが、起こってしまったものは仕方がないと、場が落ち着くまでとても長い時間がかかった。大分落ち着いた頃に、僕の占い結果はどうだったのかと訊いてみると、アダチとワタナベの両名は僕が白と出たと答えた。これで僕が白確だということになったが、シミズがアダチとワタナベのどちらかが本物だとしても、もう一人は狂人か人狼だろう、ならばぼくが狂人の可能性もあるのではないのかと言ってきたため、完璧には信用出来ないと言い、だが十分白よりではあるだろうと僕が言い、議論が始まった。議論を続けている中途半端な時に鐘は鳴り、会議終了となった。ここで全員心境を整理するために一旦解散しようということになった。ここからどうなっていくのか、これは全員共通であり、最大の不安であった。そんな不安の中僕は手帳に記録している。この不安の中で僕は何もしないという状態でいることが出来ないからだ。だが一つの疑問が残っていた。何故死者は一人だけだったのか。人狼は躊躇したのか殺す対象が被っていたのか、だが危険な事には変わりは無い。現状は人狼が互いに分かっているハズだから、狂人がどう人狼と接触するか心配だった。
鐘が鳴った。全員が講堂に集まる。全員が席に座る。鐘が鳴る。画面に会議開始と出る。五回目となればもう慣れたものだろう。次からは、まあ生き残っていればだが、ここは省略しよう。流石に全員が多少は覚悟を決めていたのか、険しい顔が多かった。朝に伝え忘れていたと探偵のニイイが能力を使った結果を話すと、中村は当然だが白だったとのことだった。本人は能力を使ってみたかったとのことだった。だが死者が出たというこの状況は非常に良く無いと悟ったのか、ハヤシザキがローラーを行わないかと提案してきたのだった。これには流石に驚いた。前日では彼女はローラーには反対派だったのだから、尚更だった。だが彼女と同じ考えを持つ者が半数近く名乗り上げた。身内切りをしてでも恐怖を取り除こうという考えなのだろう。多数決とは強大な力を持つ。ここで僕は改めて知った。極限状態までに追い込まれた人が集合すれば、人を殺す力さえ生まれるのだということに。この状況に彼女は苦渋ながらも追放を行うと決断したのだろう。だがここで上がってくる問題が誰を追放するのかという事だ。探偵であるニイイしかもう信じられないこの状況で黒陣営は笑っているのだろう。もうこのゲームは人が死ななければ動かない。アダチ、ワタナベ、ニイイ、そして一応白寄りである僕を除いた八人でローラーを行うことになった。まず結果としては、ササキが追放されることになった。ササキは自分が死ぬ事に当然だが信じきれていなかった。今更ながら、老人を労われだとか敬老精神は無いのかと怒鳴り散らかし始めたが、もう投票は終わっているのだ。何も覆しようが無い。画面に投票により佐々木太郎が追放されます。と表示され扉が勢い良く開き、無数の暗い色した手がササキを襲った。泣きじゃくって命乞いをしたが、ササキは十秒と経たずに扉の中へ引き摺り込まれていった。後には勢い良く扉の閉じられたニブイ音と間違いなく僕達が殺したのだという事実が残った。その後は今までと変わらなかった。鐘が鳴り、会議は終わった。人を殺したという表しし難いこの気持ちは、この晩僕を襲い続けた。もう後には退けない。僕達は紛れも無く人を殺したのだから。この気持ちは朝目覚めた時でも、消え去ってるわけは無かった。