作文能力の無いとある学生の日記ー1
学校から帰って来た僕は制服のまま自室の椅子で、特に響きもしない、歌詞の意味も訳の分からない曲をイヤホンから流しながら月刊誌を読んでいた。特に気にならないような内容だけど、風呂が沸くまでの時間潰しに僕は読んでいた。ここで僕は学校の体育と部活で、正直今すぐにでも眠りたかった。でも今寝てしまえば、夜に眠れなくなってしまうので、何とか堪えようとしていた。夕飯もまだ食べていない、風呂もまだ、おまけに制服のままで眠るのは僕の精神衛生上嫌だった。月刊誌の百七十ページぐらいだったか。それぐらいで僕は寝落ちをしてしまった。ここまでは恐らく一般的な学生の帰宅後の過ごし方だろう。ここまでと記したから分かるだろうが、問題はこの後だった。僕が次に目を覚ましたのは自室では無い何処かの部屋のベットの上だった。
僕は目を覚まして直ぐに疑問符が脳内に浮かんだ。でも声は出なかった。本当に声が出ない程困惑していたからである。少しの間悩んでいたが、ふと手元にスマホが一つあることに気付いた。自分のではなかった。最新機種ではなく、一昔前の型のものだった。恐る恐る起動してみると、パスワードはなく、直ぐにホーム画面が開いた。だがそこにあるアプリは時計とメモ帳と名前の無い真っ黒の変なアプリが一つあるだけだった。気になってタップすると、真ん中に白い文字に一般的なフォントで三浦彰と自分の名前があるだけだった。それ以外は何処をタップしても何も反応は無かった。一体何の為にこのアプリがあるのか全く分からない。そうこう考えていると、急に通知が来た。あの黒いアプリからだった。内容は「机の上にある鍵とスマホを持って講堂に来い」というものだった。この通知を見て初めて僕は机の上に鍵がある事に気付いた。それ程気が動転していたのだろう。その時僕は講堂が何処にあるのかも知らないのに指示通りに行動した。鍵とスマホをズボンのポケットに入れて部屋を出た。