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婚約者を奪われた少女は、敵国の王を守る剣となる。  作者: さとう
第二章

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ラスタリア落とし

 ラスタリア王国周辺を完全包囲。

 カディ様直筆の書状を、使者がラスタリア国王へ届けた。

 それから、待つこと数日。ラスタリア王国の返答は、最悪なものだった。

 天幕で返事を待っていると、伝令兵が来た。


「殿下!! ラスタリア王国から返答が……」

「…………」


 カディ様は、伝令を聞く前からすでに、内側に怒りを貯めていた。

 ラスタリア王国からの書状は血濡れだった。

 返答は、「ラグナ帝国軍の蛮行を決して許さない」とのこと。血濡れの書状と共に添えられていたのは……使者の手首だった。

 爪が全て剥され、骨の一本一本が金槌で叩き折られていた。

 拷問を受け、切り落とされたのだとわかった。

 私は口を押さえ、震えた。


「…………」

「で、殿下……───っ」


 ゾワリと背中に電流が走ったような気がした。

 私と、伝令兵が震えあがる。

 カディ様は───静かに、燃えるような殺気をみなぎらせていた。


「よほどの自信があるのか。それとも……まだ俺を見くびっているのか。だが、使者に手を出した時点で終わりだ」


 カディ様は立ち上がる。


「全軍、戦闘準備。ラスタリア王国を落とす。一般市民には手を出すな。だが、侯爵以下の貴族は抵抗するようなら始末して構わん。我が軍を舐めた報いを受けさせろ」

「ハッ!!」


 伝令兵が天幕を出た。

 私はグラスに水を入れ、カディ様に渡す。

 カディ様は一気に飲み、息を吐いた。


「すまんな。どうも仲間の死を見聞きすると血が上る……ははは、我ながら器の小さい」

「私は、そうは思いません。カディ様は、とてもやさしいから苦しんでいる……そう感じました」

「……ふふ、そんなことを言われたのは初めてだ」


 カディ様は微笑み、私の頭をそっと撫でた。

 それが照れくさく、耳まで赤くしてしまう。


「ラプンツェル。お前は俺の副官だ」

「はい」

「俺と共に、ラスタリア王城に殴り込みをかける。いいか、ためらうなよ」

「……はい」


 私は、ラグナ帝国軍の剣。

 生きる意味をくれたカディ様のために、戦う。


「さぁ、国落としだ。俺を、俺たちを舐めた報いを受けてもらおうか」


 カディ様は、力強く微笑んだ。


 ◇◇◇◇◇◇

 

 戦争が、始まった。

 ラスタリア王国軍が展開すると同時に、ラグナ帝国軍が仕掛けた。

 だが……ラスタリア王国軍は、すでに準備をしていたかのように、城壁から火矢を放つ。

 私とカディ様は、馬で走っていた。


「ラプンツェル!! 火矢に当たるなよ!!」

「はい!! 見えてます!!」

「ハハッ!! それは頼もしい!!」


 私は、火矢が見えていた。

 馬を操作し、火矢が当たらないルートを走る。

 カディ様も同じだった。

 私とカディ様は、戦場を駆ける。向かう場所は王城。そこにいるラスタリア国王に敗北を認めさせ、処刑するのが目的。

 

「殿下を守れぇぇぇ!!」「ラスタリア王国を許すなぁぁぁ!!」

「かかれーっ!!」「全軍、突撃ぃぃぃぃぃ!!」


 ラグナ帝国軍と、ラスタリア王国軍が戦っている。

 私は、それを見ない。

 視るのはカディ様の背中。それ以外はどうでもいい。


「いたぞ!! ラグナ帝国軍のカドゥケウスだ!!」

「討ち取れ!!」

「はっはっはっはっは!! さぁさぁ、かかってこい!! 俺を殺してみろ!!」


 カディ様は剣を抜き、放たれる矢を全て叩き落す。

 そして、巨大な門の前に到着。馬から飛び降りた。

 門はしっかり閉まっている。どうするのか───。


「ぬぅぅん!!」

「えっ……」


 爆音がした。

 私が見たのは、カディ様は数トンはありそうな門に体当たり。その勢いで、門がゴゴゴゴと音を立て開いたのだ。

 これには、私も、ラスタリア王国兵も仰天。カディ様は門の隙間に消える。


「───行かなきゃ!!」


 私も馬から飛び降り、門の隙間に身体をねじ込んでラスタリア城下町へ。

 すでに、カディ様は数十メートル先にいた。さらに、たった数十メートル間に、十名以上の兵士が倒れている。

 すると、私の前に、二メートルはありそうな大男が立ちふさがる。


「あぁん? なんだ貴様!!」

「───っ!!」

「女ぁ? しかも、ラグナ帝国軍の鎧だと? ハハハハハ!! ラグナ帝国軍も人材不足のようだなぁ!!」

「…………」


 私は無言で剣を抜く。

 男は剣を抜き、ニヤニヤしながら向かって来た。


「足を潰して、その後は可愛がってやるよ!!」

「───」


 私は男の振り下ろしを半歩ずれて躱し、両手首をそれぞれ十回、両足のアキレス腱を斬った。さらに、男の振り下ろし速度に合わせ、剣を喉に突き立てる。


「カウンター、だっけ」

「こ、ぁ」

「ありがとう、ライ君。これ、使えるわ」


 男は崩れ落ち、白目を剥いて死亡───……初めて、人を手にかけた。


「…………全部、後にする。今は、カディ様の隣へ!!」


 私は自らを鼓舞し、カディ様の元へ走り出した。

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