第二話 就職童貞と女騎士
「きみ、キミ」
「――しゅうしょく、どうてい……」
「おい、だいじょうぶか。キミ!」
「うらみ、こつずい……!!」
「起きてくれ、キミ!!」
はっ、と目覚める。
目覚めた時、俺が感じたのは――硬い、だ。
「ほっ。よかった。死んでいるわけではなかったんだな?」
目線を動かすと――山があった。
銀色の二つの大きな山。それが俺の視界を塞いでいる。ナンだコレは、と思わず手を伸ばすと「ば、バカもの!! 鎧のうえとは言え、女子の胸をいきなり掴むものがあるか!?」と怒鳴られた。そして落ちる視界。ゴン、と俺の頭が地面にぶつかった。
い、痛い……。
なにが起きているか分からず、立ち上がり、頭を動かす。それと俺の前にはひとりの女性が立っていた。
「ふん。どうやら心配して損したようだ。まさかこのような変態だったとは…………ぐすん。はじめてのことだったのに…………」
涙目になった金髪の女。
いや、金髪の女とまとめるにはあまりに美人だった。それ自体が発光しているような鮮やかな金髪、鎧のうえからでもわかる整ったプロポーション、目鼻立ちは整い、とくに瞳が大きい。
「すまない。どうやら失礼を働いたらしい」
「……む。いや意識を取り戻したばかりなのだろう。私も大人げなかった。すまない、許してくれ」
互いに頭を下げ合う。
――状況を整理しよう。思い出すに、俺は彼女に膝枕をされていた。
そして寝ぼけた意識のままその胸に手を添えたみたいだ。
手をにぎにぎすると、「わ、私の胸は本当はもっとやわらかい!」と金髪の女性は顔を赤らめて反論した。
とても堂に入っているが、その格好は鎧姿・帯剣という――まるでゲーム世界の住人みたいだ。
そうまるで『女騎士』みたい。
なぜに東京に『女騎士』が?
「……」
それに周囲の景色は東京とは思えない抜けるような草原だ。
おまけに空を見上げると太陽が二つある。
ここは、どこだ……?
俺が戸惑っていると、金髪の女性はコホンと咳をした。
「せっかくだ。近くの街まで一緒に行かないか?」
彼女からの申し出に、俺はコクリと頷いた。