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Memory of ReLIFE  作者: 雨霧紅人
第1章 始まりの一週間
15/25

14話 道

 ここ王都では中心に王城、その目の前に聖騎士団の本部。そこには大きな門があり騎士団、貴族、王族しか入れないようになっている。中心から外は住民の民家に商店街、農家などが建ち並ぶ。中心の王城が王都の一番高くに建ち、外に行くほど土地が下に下になっている。

 そのため王都の高くに見える王城はよく見え、王都の一番外の貧民街は王城近くの王族、騎士団にはあまり情報が耳に入ってこない。


 そして少年は騎士団本部の二階を走っていた。


 あの後にブラッドと別れて、少年はそのまま階段で下に下に向かっていた。最初はブラッドの異能と共に外壁から外に下りようと考えたが、どうやらそれだと王城に入れないらしい。


 騎士団本部から王城への道。外から王城には入れないということだった。

 ブラッドはすでに異能を使って外から下に下りて、今はもうテンと合流を目指しているはずだ。


 「見つけた。階段」


 一階に下りるための階段を見つけた少年。王城に入るためには一階層から通路があるとブラッドが言っていた。何故を知っていたのかはわからない、だけど今は絶賛信じよう習慣中だ。


 だから、言えない理由も今は聞かない。だけど信じる。矛盾しているかもしれない、だけど少年はブラッド、テン、エレナとノアのことでさえ信じようとしている。


 疲れた体に鞭を打ち、階段を飛ばして下りていく。

 一階に出ても、今までと変わらない長い廊下。それに加えて見慣れた扉が点々と存在している。


 長い廊下をひた走り、廊下の分かれ道に来た時にふと少年は何かに気づく。


 「———風…?」


 少年は微かに風の動きを感じる。

 分かれ道の右の方向。窓は至る所にあるが、人が通れる大きさではなく、目の見える場所でも窓は開いていない。


 「外に通じてる?それともそこから王城に行けるのか…」


 風を感じる方向に進むことに決めた少年は右の方に歩き始める。奥に進めば進むほど風を強く感じるようになり、今ではそよ風を感じるようになった。


 「え?…階段…」


 少年が風が来ている方向に進むと下に続く階段を見つける。


 「ここは一階…のはずだ。地下があるのか?」


 今までの階段とは違い、先が暗くて見えず、石造りで螺旋階段のようになっている。

 その地下の階段から風が出ているのを肌で感じる。


 「外に通じているのか…」


 少年は下に続く階段に足を踏みいれ下りていく。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 



 少年と別れて、テンと合流を目指すブラッド。

 

 二層から三層に下りるには階段を使わなくてはならない。各層には壁ができており、とてもじゃないが十メートルの壁をそのまま上ることはできない。それに加え、三層、二層、一層は各層に門と検問が張られている。それ故にそのまま下に下りることはできない。

 

 だが、ブラッドにとっては壁や門はあってないようなものである。


 ブラッドが三層に下りるために二層から飛び降りる。十メートル近くある高から落下。そこから落ちればただでは済まないが、壁から壁と同じ材質の床が表れる。次々と表れる床にブラッドは飛び移っていき、三層に無事に着地する。


 「さて…テンはどこにいるか」


 三層の端、四層が見える壁の上に立っている。


 「傭兵団を見に行くって言っていたから…五層かな?」


 ブラッドはそのまま空中に足を踏み出す。そのまま壁から足場が飛び出し、落下を防ぎそのまま四層にたどり着く。


 音を立てて地面に着地すると、二層、三層とそうだったが人が全く見えない。

 ところどころで人の気配を感じるが、それでも見える範囲では人がいない。そのことに違和感を感じながらもブラッドはそのまま五層へと降りるために壁のある方へと走る。


 

 ふと足を止めるブラッド。王都の商店街とされている四層、商人や客層が多く、人通りも多いこの階層だが今は人一人見当たらない。

 だが、その人がいない商店街に佇む一人の異物。


 黒い制服にマント、腰に剣を帯剣している一人の騎士。


 「――近衛騎士か…?」


 真っ赤な赤毛の髪に、整った顔、そして黒い制服をした者など一人しか考えられない。


 「王国所属の近衛騎士団、ルシウス・ダーウィン」


 赤い髪を揺らし、ブラッドのもとに近づいてくるルシウス。

 

 王国の近衛騎士と言うのは、王国で最も気高く皆の憧れだと口を揃えて言うほどものだ。小さな子供から大人まで、なりたい、してみたいと思うほどの職業だ。

 だが、それでも騎士に、ましてや近衛騎士になるのはそう簡単なものではない。


 まず家柄が問われる。普通の平民などはなれず、一流貴族や二流貴族などの教養を受けた者でなくてはまず騎士になりたいと思っても現実にはならない。

 それ以外にも騎士団団長からの推薦、騎士としての役立つ、スキル、技術を持っている人物。

 そして、歴史に名を残すほどの偉業をやってのけた者。その偉業をやってのけて騎士になったという者は歴史上に一人しか存在しない。


 そんな近衛騎士に所属する人物となれば、国民からも顔を覚えられ、皆から信頼されている騎士の一人だ。それに加え———


 「———私を知っているんだね。君は」


 「僕はこの国出身ではないけど、他の国でも貴方は有名だからね。それに今の近衛騎士は…」


 瞬間、目にもとまらぬ速さで十メートル以上離れていたルシウスがブラッドの目の前まで移動する。剣を抜刀して輝く剣先がブラッドの首先に届く———


 「くっ!あっぶない」


 剣先が首元に届く前にブラッドは壁を地面から作り出して迫りくる斬撃を守る。だが、ルシウスの剣撃の技術では作り出した壁を斬り、ブラッドの首の皮膚を軽く斬られる。

 軽く斬られた衝撃で後ろに跳び、間を取る。


 「さすが、異端者嫌いの騎士」


 「君を相手に本気を出さないはずがないだろう?異端者だとわかれば一瞬で首を取る」


 「僕がレオの仲間だと知っても…?」


 ブラッドの言葉にルシウスの眉が少し動くのがわかる。


 ———なるほどね。


 「僕は君に恨みはないし、戦う理由がない。だから無益な殺傷はやめた方がいいよ」


 「君にはなくても私にはある。ここで眠れ異端者!」


 再び走り近づいてくるルシウスにブラッドは足に力を込めて壁を次々に作り出す。壁はルシウスを囲うように作り出され、動きを止めようとする。


 だが、ルシウスにとっては壁はないようなもの。彼の腕から振るわれる騎士剣が作り出されたルシウスの倍以上の大きさの壁を難なく斬り崩していく。その熟練された腕によってできる技は超人に値する。


 壁を次々に作るブラッドに迫るルシウスに思わず吹き笑いをする。


 「異端者以上の化け物、さすが王国屈指の近衛騎士団…」


 ブラッドはルシウスに背を向けて商店街を走り、五層へと向かう。


 ブラッドの異能は壁を作り出す異能。一見して世界を最悪へと導いた異端者の異能としてはそこまで力がないと思われる。


 世界からの嫌われ者異端教団。その異端教団一人で一国の街を落としたという記録もある。その異端教団の一人の戦闘力は一つの国の軍に匹敵すると言われている。


 それに加えてブラッドの異能は———


 「———?」


 ルシウスの後ろから突如四角くくりぬかれた岩石が凄い勢いでやってくる。

 咄嗟に岩石の向かう進行方向から離脱する。その隙にもブラッドは五層へと向かう。商店街を抜ければ、五層へと降りる壁が見える。


 「——さすがにあの攻撃を当てることは無理だったね…」


 ブラッドの異能は地面に接する物を自在に操ることができる能力。大地である地面、地面に接する壁、建物、そこから自在な大きさの物を陥没、隆起することができる。それは自分の周囲二十メートル以内に限り、自身の体が地面、壁に接していないと発動できない。


 五層へと降りるための壁に到着したブラッドはそのまま飛び出し、五層へと落下する。落下中に足で壁を蹴りつけて異能を発動。そのまま足場をところどころに作り出して五層に無事に着地。


 地面に着地したブラッドは上を見上げると———


 赤い炎の色をした騎士が空から飛来してやってくる。


 「———は?」


 そのまま地面に着地した赤い騎士は大きな音を立てて、彼の周りから爆風が立ち込める。普通に落下すれば即死、そうでなくても足の骨が折れるほどの高さだ。それなのに目の前男は五体満足でぴんぴんとしている。


 「全く、化け物だな…」


 剣を握りなおしてブラッドのもとに歩いてくるルシウスに溜息を吐く。


 「力を抜けばすぐにでも楽にする」


 剣を上に上げ、騎士剣が光り輝く。そのまま騎士剣を振り下ろせばブラッドの首は体が別れることになるだろう。


 「化け物だらけだ…この王都にいる奴は…うちの仲間にも化け物がいるんだけど———」


 ———すると横から物体がルシウスの体にぶつかる。瞬時に剣でぶつかってきた物体を受け止めたが、勢いは止まらずにそのまま数メートル吹き飛ばされる。

 そのやって来た物体は、


 「もう少し遅かったら僕の首から上がなかったよ…」


 「なら、これからはもっと場所と日時を指定しておくんだな!お前が岩をこっちに投げ飛ばさなかったら場所なんかわかんなかったよ!」


 そう話すのは短い金髪に悪人面のテン。テンの超高速の蹴りがルシウスの体を吹き飛ばしたのだ。


 「何で、そんなにかかったんだ?テンならすぐにでもこっちに来ると思ったんだけど…」


 「そうしたかったんだが、どうやら事は上手くいかないらしくてな」


 テンの横眼には大きな鉈を担ぎ見下ろす巨体の男が歩いてきている。

 体の大きさは優に二メートルを超えている。鍛え上げられた腕に一振りで体が粉々になりそうな鉈。それに加え背中には大きな大剣をかけている。


 「荒くれ者の傭兵団、紅の鉈。副団長のマックス・サエール」


 「ああ?よく知ってんなぁお前ぇ!」


 「声もうるさいな」


 ブラッドの答えにマックスは大きな声に威圧した顔色でこちらを睨んでいる。


 「悪いな。俺が撒けなかった。騎士団と傭兵と追われて災難だよこっちは」


 テンは今の状況を作り出してしまったことを詫び、軽くため息をつく。

 

 その間に吹き飛ばさていたルシウスは服に着いた汚れを手で払いながら、こちらに迫る。

 一人の近衛騎士と一人の傭兵団副団長に挟まれたテンとブラッド。

 

 「———状況はきついな。こいつらがずっと追いかけてくるとなると、レオとの約束も果たせそうにないな」


 「レオには会えたのか?」


 「ええ、会えたよ。レオは多分王城に行っている。後で合流だ、その前にこいつらをどうにかこうにか倒さないとね」


 ブラッドとテンが背中合わせで会話をするのを二人の男が見ている。どちらも得物を狙う鋭い眼、目の前に見ると尚更わかる化け物。


 「余裕だろ?」


 「はっ、言うねえ。お前も少しは手伝ってくれるんだろうなぁ?」

 

 ブラッドがそう話すと地面が陥没し、一部が盛り上がる。テンがマックスの方に走り出し、マックスは鉈を上に掲げ振り下ろす―――


 五層、異端者と騎士と傭兵の戦いが始まった―――

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