プロローグ ▪️▪️▪️▪️
―――そこには二人の男女がいた。
見える景色は赤く染まり、あちこちで火の手が上がっている。
焼けた木々の弾けると怒号が飛び合っている。
空気には何かが焼け焦げる匂いと、足元の血だまりの匂いが入り混じっており嗅覚が狂ってしまう。
炎と血だまりと夕焼けで一面が赤く、赤い世界が広がっている。
その真っ赤な世界の中に二人の男女が立っている。
二人ともおびただしい量の血に汚されているがそんなのは気にならない。
血も傷も痛みも苦しみも、そして地面一帯に転がる死体も、そんなものは関係ない。
少年は目の前に立つ少女から零れる涙を拭う。
「―――ごめん…ごめんな…君を守れなくて…」
「―――ん、ううん、大丈夫…大丈夫だからあ…」
「これが、終わったら…聞いて欲しいことがあるんだ」
「――うん」
「だから、だから……だから」
少女は少年を抱き寄せ、頭を優しく撫でる。今度は少年の目から涙が溢れ出してくる。次第に少年は力が抜け、少女の胸に頭を預ける。
しばらくし、落ち着いたのか少年は少女の胸の中から離れる。
「――もう、大丈夫?」
「ああ、また頑張る力を貰ったよ」
少年は少女に向けて笑顔を見せる。無意識に握っていた手は温かく生きている感覚を思い出さしてくれる。
―――突如世界が暗闇に包まれる。
真っ暗な暗闇が、冷たく悲しい影が、全てを飲み込んだ暗黒が―――
握られていた手が離れていく。伸ばした手も届かず、体の感覚がなくなり上下左右すらわからない。
「――――――」
愛おしい少女の名前を呼んで、世界は終わりを迎える―――