表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/22

1、逃げ出した先は

屋上には誰も居なかった。

「はあ、疲れた・・・」

奈緒と日向はふらふらと太陽のあたる場所まで出たが、もともと体力のない影は、ぜえぜえと荒い息をしてドア口に膝を着いてしまう。

「影、大丈夫か?」

慌てて日向が戻ると、影はどうにか・と微笑む。

「刑事、名前何て言ったっけ?」

「・・・確か大崎って言ってた。警部って言ってたけど、喰えないオッサンだったわ」

苦い顔で唾棄する奈緒。

少ししか会話していない筈だが、既に奈緒は大崎という警部を毛嫌いしているようだった。

「でもさ、ずっと逃げ回ってる訳にはいかないし、余計に疑われないか?」

日向の疑問に、奈緒は更に苦い顔になる。本当に苦虫を噛み潰しているかのようだ。

「そりゃあ、あのオッサンを前に逃げ出したら問題だろうけど、あっちはあたしたちがオッサンを眼にしたから逃げ出したってことに気付いてないんだから、大丈夫じゃないの」

喰えないのはお前もだよ、と思ったことは日向は黙っておく。

「それに、九連だって嫌でしょう。影が警察に疑われるなんて」

「そ、それはそうだけど、」

疑いを晴らすことが出来るなら、早くそうするに越した事は無い。

「あの、」

ずっと呼吸を整えるので精一杯だった影が、ようやく口を挟んだ。今にも消え入りそうな、細い声だったが。

「どうした?」

「ぼ、僕・・・その警部さんとお話、してみる」

それは寝耳に水の発言だった。日向は声を上げ、奈緒ですら眼を点にして影を見返している。

「影?」

「・・・兄さんの言う通りだよ。逃げ回ってても、何も解決しない」

「よく考えなさいよ?影。・・・・・あの日、学校から姿を消した理由をどう説明するの?あんた、あの日のこと覚えていないんでしょ?覚えてませんて言って、警察が納得すると思う?」

奈緒は辛辣だ。鋭い眼で影を見据える。

「そ、それは・・・・でも、」

それに、影が御鶴城を殺したのは間違いない事実なのだ。手を下した際の意識は“赤い眼”の影ではあったが、体は影本人のものだった。

(影の中の別人格が殺したから、見逃してくれ・・・そう言って、警察が納得する訳が無い)

奈緒の言い分は最もだ。

だが、影が苦しんでいるのも分かる。逃げ回ることは、想像以上に体力と気力を消耗するものだ。

「影、お前の気持ちは分かった。でも、悪いけど今は無理だ」

日向が言えば、影が哀しげに瞳を揺らした。だがこればかりはどうしようもない。

影を警察に引き渡すなど、死んでもしたくない。

「蓮本、何かいい案は無いのかな。警察が影を疑わないで済む方法」

「・・・そんなの簡単に浮かんだら苦労しないわよ」

最もな言葉で一蹴され、日向も影も項垂れた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ