岩下 さくら編 アークと魔法の本 その14
<異世界(岩下 さくら)サイド>
生命反応を探知した。この探知は生命エネルギーに反応するのだ。反応によると小さな生き物が一匹らしい。それがただのネズミなのか、魔物なのか、どちらかはわからない。いや、どちらにしても、攻撃されたらお終いだ。引き返すべきか? いや、戦ってみるべきだ。
25:影戯:事象:分離(指定):影を分離する
影を分離する。体から何かが引き千切れる感覚だ。この分離した影は自動で動く。こちらの目が見えなくても関係ないのだ。分離した影には、身体強化と格闘スキルが付加される。ベースが自分なので弱いけど…。結果はすぐにわかった。生命反応が消えたのだ。ほっと一安心する。
魔法の本に見てもらったら、ただのネズミだった。できれば小さな魔物がよかった。魔物を倒せるという実績が欲しかったのだけど。
しばらく進むと、三叉に分かれている。正解なのかはわからないが、下に伸びているは真ん中の通路だった。迷わず真ん中を進む。すると突然、自分が串刺しになった映像が頭に浮かぶ。
ハッとなる。これは予知の未来だ。空間認識で罠の位置と仕掛けを調べてみる。空間認識が半径15mのため、ゆっくりと進む。あった! 少し先だけど、圧力式の床罠だ。その床の手前で止まり、足を床に触れるギリギリで止めた。すると今度は接触のアラートが頭に響く。接触は触れる直前、だいたい10cmぐらいまで近づかないと反応しないみたいだ。なるほど串刺しの映像は、接触のアラートが鳴っても、どうして良いかわからずに混乱している最中に罠の餌食になったのだろう。接触のアラートが鳴ったら、一か八か何処かに飛んでみるのも良いかも知れない。
罠の床を先に進む。待て待て。予知は一分先の危険予知。つまり罠が二分後に発動するタイプだったら? 例えば、二分後に魔物が出現するようなタイプの罠ならば、予知できないのでは?? 嫌な汗をかく。突然、死というものが身近に感じた。
今以上に気を付けなければ。床の小さな浮き沈み、床に書かれた魔法陣、蜘蛛の糸のような細い糸の仕掛けなど…。これは…目に頼っていたら間違いなく気が付かないのではないだろうか?
慎重に慎重を重ねて進む。またしばらく進むと、目の前にある空間がおかしい。床が深くなる空間だ。5mぐらい落ちるのか? いや水が張ってある? 泳がないと進めないのか? 手を近づけて接触で安全な水か確かめる。反応がない。ただの水なのかな? アークは小さい頃、避暑地の湖で泳いだ経験があるため、決して泳げないわけではない。
深さ5m。幅も長さ15m以上と空間認識外まで続いている。100m以内に生命反応なし。
う〜ん。食べ物を入れた袋も、服も濡れる。立ち泳ぎみたいな感じで、頭に荷物を乗っけて泳げるかな? その前に、水の中に手を入れてみた。温かい。温泉水?
よし。行こう! 服を脱いで袋に詰める。体をゆっくりと水に入れる。立泳ぎができるか、その場で確認するが、上手く出来なかった。一応この袋は…牛革製だよな…。なるべく濡れないように頑張ろう! 袋は水に浮いたので、引っ張る感じで泳ぐ。
突然、自分が水中の渦に吸い込まれる映像が頭に浮かんだ。えっ? どういう仕掛けなんだろう? とりあえず戻ろう。方向転換する。しかし壁が空間認識範囲外にあるため、自分の向いている方向がわからなくなった。心臓がバクバクする。間違えた方向に進んだら…罠が発動する!? 動けない! だが罠は既に発動していたのである。
アークは巨大な渦に飲み込まれ…そのまま意識を失ってしまった。
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<北条 彩乃サイド>
「アークっ!!!」と夜中なのに叫んでしまった。
アークを映そうとしても、水晶は真っ暗になるだけだった。




