岩下 さくら編 アークと魔法の本 その1
<異世界(岩下 さくら)サイド>
(はぁ〜。よく寝た〜。今日も学校か。あー、違う違う夏休みだ!。うん? あれ?)
重い…。あれ? 体が動かない!? な、何? 怖いよ。
(誰かっ!! た、助けて!!)
泣いても叫んでも、誰も助けてくれない…。あれ? 泣いたり? 叫んだり? できてた??
すっごく怖いことに気が付いてしまった。手足の感覚がない??
心臓が動いていない! 息をしていない!!
あれ? 死んでるの?
いや、でも何か人が話している声や、足音は聞こえる。スンスン。匂いもホコリ臭い。
不意に体に乗っていた何かが退かされた。多分だけど…。眩しい。太陽の明かりだ。
真っ白な髭をお腹まで生やした老人が、手に持っている本と私を見比べている??
老人が手に持った本を置くと、私に手が伸びる。
(ちょっと!! せ、セクハラ!!)
クイッと片手で持ち上げられてしまう。老人なのに、どんだけ力持ちなの??
ペラペラと紙をめくる音がする。私は体中を触られている。
(や、やめて!! くすぐったい!!)
認めたくない。絶対に。そんなわけがない。
(これ夢だよね? ねぇ。誰か、夢だと言って!!)
本。私、本です!! 本になってしまいました!!
えっと、名前は岩下 さくら。年齢は16歳。高校一年生。性別女。趣味読書。
好きな人は…。石田 悠人くんです。
趣味が読書だからって、本になりたいなんて、一度も願ったことないよ?
本ってことは、ブックカバーがないと全裸? いや、カバー…ジャケットがあるから下着姿?
いや、やっぱり、ジャケットもない。厚手の皮が表紙なのかもしれない。いや下着だと信じたい。
そんな…下着姿で、老人にベタベタと触られているの!? 信じられない!!
「なんじゃ、この魔法書は、くだらぬ魔法ばかりじゃ」
老人がそう呟くと、私はドンっと投げ捨てられた。
(痛い…。何するのよ!!)
状況が全く掴めない私の頭の中に…いろいろなメッセージが流れ込んできた。




