新宮司 純編 聖女と吸血姫 その1
<異世界(新宮司 純)サイド>
脳内記憶アップロード? 何だ? ぐっ…。これは…。フラッと倒れながら、消え行く意識の中で、大人たちが駆けつけて来るのがわかった。
誰かが…頭を撫でている? ぐっ…。すごい頭痛だ。
痛みをこらえながら、目を開けると、金色の髪に海のように青い瞳のお姉さんが、俺を見つめていた。
「ハーデェレン? 大丈夫でしたか?」
「ウェリルメルお姉様? いつ? お帰りになったの?」
はっ? ナンダ? 勝手に口が動いている?? それに、この声…女? どうなっていやがる??
「半年前には、王都に戻っていたのだけれど、いろいろあってね…」
「仕方ないですよ。お姉様は、聖女様なのだから」
おいおい…。マジでどーなんてんだよ??
「ハーデェレン、まだ顔色が悪いですね。痛みを消す魔法をかけますが、ゆっくりと眠ってなさい。私は、しばらくここにいます。またゆっくりとお話しましょう」
「はい。お姉様…」
「ふふっ。ハーデェレンは、本当に良い娘ね」
金髪女が出ていってから、ずっと目を閉じている。思い出しただけでも恐ろしい。何だ? ここは? まるで博物館にいるみたいだ。アンナもん飾ってある家なんて見たことねーぞ? それにぶっ倒れたら病院だろ? 何だよ、ここはっ!
それに女、いやガキっぽい声だったな…。確かめなくてもわかる、ソレがないことに…。
連続失踪事件に俺も巻き込まれたのか? 頭にあるハーデェレンというガキの記憶が、正しいのであれば、俺は…異世界転生しちまったんだ…。認めざるを得ない…。
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<北条 彩乃サイド>
新宮司 純。ちょい悪系。しかし、その正体は、オ・タ・ク。知ってるのよね。君と何回か、オタクの街ですれ違っているの。キャワワな二次元ガールのグッズ大量に抱えて、嬉しそうな笑顔だったもん。マジ人って、裏・表あるんだなーって、いい勉強になりました。
君が転生したハーデェレンって吸血姫は、ウェリルメルの本当の妹。姉のウェリルメルは、大山くんこと”冒険者のヴァグナー”と竜退治に行った本物の聖女様。
その世界でヒールを使えるのは、ほんの数人だけ。聖女ウェリルメルもその一人。その聖女様は”女神教会”に協会籍を持つ。それだから、妹のハーデェレンも、ちょー親切されているの!!
でもね、聖女様はマジ腹黒。だってヒールの魔法を手にしたいがために、悪魔と契約してたの! 条件は、妹が吸血姫になること。うん、速攻でOKしたよ、迷い一切なし、気持ちいぐらいの最高のクズ。えっ!? わたしだったら? そりゃ、ヒール使いたいなら、OKでしょ?
そんな腹黒聖女であるウェリルメルお姉様は、誰にも妹が吸血姫だとバレないうちに、暗殺したいと思っているのでした。めでたいね。一応、”異世界を改変できる万年筆”の力によって、アークと出会うまでは命の保証はされているんだけどね!
その後? 知らないよ? こいつ嫌いだし。あれ? 嫌いとか…。
いつから、わたし…そんな偉そうなことを言えるようになったの!?




