大山 駿編 二級冒険者と加齢臭 その6
<異世界(大山 駿)サイド>
王都ベスベスタまで、あと2日の距離。そして最後の峠。あと少しという気の緩み、疲労のピークも相まって、どうしても油断してしまうポイントだ。そんな事情から、ここは盗賊の出没率が高い。騎士団も重点的に巡回しているのだが、それでも盗賊たちは隙きを突き商人たちを襲っていた。
そして、オレの目の前で商人たち御一行が、盗賊団の襲撃を受けていた。
(二級冒険者のオレが逃げるわけにもいかねーよな…。)
盗賊団との交渉など、商人を人質に盗られて、こちらが不利になるだけだ。狂ってると思わせるのが一番良い。オレは背を向けている盗賊の背後から躊躇なく斬りかかる。敵の数は13名。盗賊たちに気が付かれる前に、7名ほど斬り倒した。
「な、なん…なんだよ…オメーは…」
盗賊たちの顔が恐怖で引きつっているが、構わず首を刎ねる。オレが首を刎ねた直後、背後から盗賊の刃が迫る。強いやつの倒し方その1をオレに実践してくるとは…。
振り返ると同時に、剣を持つ手をキャッチして、両手剣で切断する。絶叫するが構わず、剣を横に払い胴体を切断した。
「こ、こいつは… 冒険者のヴァグナーじゃねーかよ!」
逃げ出す盗賊を後ろから、短剣を投擲し、仕留める。
「逃げるなよ」威圧で動けなくなた、残り3名の盗賊を拘束する。
(オ、オレ…やっぱ、すげーつえぇぇぇ!!)
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<北条 彩乃サイド>
わたしは大山くんを指定して心の中を除いていた。
「本当によかった。異世界満喫してくれて、それよりもアークの眼球をどうにかしないとね」
”異世界を改変できる万年筆”の力では、既存キャラの眼球を治癒することはできない。魔法にも制限があって、腕とかも切断直後ならば直せるのだけど、時間が経つと治癒ができないらしい。最後の手段として、中二病必須の邪眼という手もあるのだけれど、これも直接アークに干渉できない自分ではどうしようもなかった。
ここは、魔法の本であるさくらに、どうにかしてもらうしかなかった。
でも…さくらは、元々人助けは不得意な方だ。しばらく考える。やはり、わたしが手を出すしかないのだろう。
一応、用意だけしとこうかな。
『とある地下迷宮の最下層。魔法のランプだけが誰もいない、永劫に時が止まった空間を照らしていた。この魔法のランプの正体は、炎の精霊を閉じ込める檻である。閉じ込められた理由を知る者も、炎の精霊を裁くものも、この世にはいないだろう。しかしランプが壊れた時、炎の精霊も消滅するのだ。運命が交差する。盲目の魔法使いアークが、この魔法のランプを手にするのだ。』
うんうん、この魔法のランプをアークに持たせてれば、この精霊がアークの目となり、冒険へ出発できるね。得点が45点、転生リミットは369時間となった。
魔法のランプ役は、お調子者の石田 悠人君に決定!! さくらの片思いの相手だよ?




