大山 駿編 二級冒険者と加齢臭 その5
<北条 彩乃サイド>
今日も懲りずに、鍛冶屋と肉屋の息子が、パメラに求婚している。
実際にパメラの気持ちって、どうなんだろうね? わたしはパメラを指定して心の中を覗く。
(なるべく、孤児院に少しでもお金が入るような家に嫁がなければ…)
あれ? パメラにとって結婚感って…。確かに、この異世界では理想よりも現実かも知れない。
パメラは、鍛冶屋と肉屋の息子の言葉なんて聞いていなかった。
(今は…優しいけど、結婚したら、炊事洗濯…仕事の手伝い…奴隷のように働かされるだけ…)
えっ! そ、そんなに過酷なのかしら、異世界結婚って!!
わたしは、いたたまれなくなり、水晶から目を背けた。
「はぁ…こんな日の昼食は!! 宅配ピザにしようかしら?」1枚頼むともう1枚無料のキャンペーン中だった。勿論、2枚になるのはいいけど、ちょっとぽっこりしてきたお腹を摘む。
宅配のお兄さんを下着姿で迎えるわけにはいかない。まだ着ていない服ってあったかしら? どんどん怠惰になる自分に、少しだけ笑ってしまった。
一通り準備が終わると、鏡の前で全身チェック!! うん、まだ大丈夫かも。
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<異世界(大山 駿)サイド>
オレは皮の鎧を身に纏い両手剣を持つ。竜と戦うような人間が、皮の鎧? っと不思議に思ったが、”冒険者のヴァグナー”に傷を負わせられる人間など滅多にいない。それにスピード特化の剣術を使うため、重たい鎧はマイナスらしい。
天気は快晴。気温も寒すぎず暑すぎず、たまに吹く風もに心地いい。
なんと、オレはモテる。昨日の夜も宿の食堂兼酒場で飯を喰っていたら、女が次々と寄ってくるではないか!! ”冒険者のヴァグナー”の肉体と記憶では非DT、”サッカー部の大山 駿”の精神と記憶ではDTだ。
オレは三人の大人の女性を相手に全戦全勝であった。おっさん&加齢臭というデメリット以外は、この肉体も精神もすげースペックなのだ。
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<北条 彩乃サイド>
大山くん…。異世界でなんてことを…。初めて性行為というものを見てしまった。動揺して無理やりお腹にLサイズ二枚のピザを押し込んでしまったじゃない…。ピザ食べながら見るものでもないけど。
ゴブリン退治のとき、少しカッコイイと思ってしまったことを後悔する。そんなことよりも、孤児院を守るのが、大山くんの使命ですよっ!!
まったく…。”魔法の本”のさくらも、”剣士”の大山くんも異世界を楽しんでいるだけじゃないっ!? でも…楽しんでくれてよかった…少しだけ、ほっとして、罪悪感が解消された。
あれ? ゾンビは何処行ったのだろうか? 水晶でゾンビを探す。
えっ…。花音さんも大概だよね…。ゾンビらしくお墓の中でお昼寝中。いや…何日間寝てるのよ??




