表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/89

北条 彩乃編 彷徨う心 その1

2つの小説が規約違反でお蔵入りになってしまったので、気分を変えるため新しい小説をスタートさせました。

<北条 彩乃サイド>


『とある少女は何をしても一番だった。容姿端麗・才色兼備・純情可憐・仙姿玉質・沈魚落雁・閉月羞花・窈窕淑女・脱俗超凡・才華爛発・伏竜鳳雛・詠雪之才などなど、なんと表現したら良いのか? どう表現したら正解なのか? 兎に角、和風美人。何をしても、一番。弱者に優しく、強者と歩む。父も母も有名企業の社長。だが心は歪み軋んでいた』


***** ***** ***** ***** ***** 


周囲の人間が、特別な子として認識し始めたのは、小学校での定番の習い事を始めた頃であった。スイミングで泳ぎを楽しもうとしたら…いつの間にか競泳選手になり一番。友達に誘われた剣道でも一番。マニアックなジュニアカートでも一番。ピアノもそろばんも書道も…。


習い事の先生からアドバイスをもらったり、教科書やマニュアルを見たりするだけで、大凡のことはできてしまった。


またクラス内でいじめがあれば、力ずくで止めることも、論理的に言葉で言い聞かせることも、周囲の友達の団結力を使うことも、どんな方法でも止めることができた。


いじめられた子には、まず友達になって、原因を一緒になって解決したり、生きる意味や、夢を与えた。いじめた子にも手を差し伸ばし、いじめのエネルギーの矛先を、その子の才能を伸ばし開花させ、発散させたのだった。彩乃にとって、それらは何一つ難しいことではなかった。


それらは…算出された結果をなぞるという行為であることに、いつしか気が付く。


完全無欠のお嬢様と呼ばれた少女。北条 彩乃、16歳。そんな彼女は、家から一番近いという理由で、極々普通の高校に入学する。


だが心に綻びが生まれた。切っ掛けは、何気ない日常の中で、笑ったり、泣いたり、怒ったり、落ち込んだり、喜んだりする同級生であり親友の”岩下 さくら”が輝いて見えたことに起因した。


彩乃の中に、初めて感情が欲しいという…欲望という感情が生まれた。


心が混乱する中、彩乃を闇のどん底へ叩き落としたのは、さくらが放った一言だった。


「私、恋をしたの」


恋の話をする岩下 さくらは、彩乃にとって…できることならば、入れ替わりたい程の、自分が夢見る本当の姿であった。


恋するさくらは、きらきらと瞳を輝かせて、少し頬を赤らめながら、はにかんだ笑顔で語っている。体もリズミカルに、天使の羽が生えてるかのように、空へ飛び出すのではないかと錯覚する程に、生命を感じさせるのだ。


わたしと、さくらは、一体何が違うの!? 待って、さくら! 置いて行かないで…。


焦りと混乱が支配する心に生まれた新たな感情は嫉妬であった。


自室のベッドに制服のまま倒れ込んだ。


ドアをノックする音。夕飯を知らせに来た母親。当たり前のように優等生で模範的な返事をするわたし。永遠と続く終わりのない無意味なループに押し潰されそうになり、ドアの前で呆然と立ち尽くす。


”違う自分を手に入れたいなら、これを使いなよ”


「えっ!?」誰もいないはずの部屋を見渡すと、床に見たこともない万年筆と水晶が転がっていた。


その2つを手に持つと、頭の中にメッセージが流れ込んできた。


【通知:異世界を覗ける水晶です。異世界が覗けます。】


【通知:異世界を改変できる万年筆です。異世界に誰かを送れます。その人物の導入シナリオを書いて下さい。】


水晶玉を覗くと、中世ヨーロッパのような街並みの中で、人々が動き回っているのが見えた。


ここに誰かを送り込めるの? 一体、何のために?


理由はわからないが、詳しい情報が頭の中に浮かんできた。


【送るということは、転生扱いになります。転生した記憶・精神・心は、異世界に存在する元々の性質が50%、送られる本人の性質が40%、シナリオでの改変が10%を、混ぜ合わせます。異世界の割合が高いのは、異世界に早く順応させるためです。また大半が異世界の性質に引っ張られる形で融合していきます】


異世界とこの世界の両方の記憶・精神・心を持つということに、どんなメリットがあるのかな?


【姿形は、異世界に存在する元々の姿形となります。また送られる本人の肉体は、”時の結晶”という水晶の中で腐らずに保存されます】


うん? 肉体が保存されていること言うことは、こちらの世界に戻ってこれるということ?


この現実離れした現象に対しても、動揺せずに起きた事象を一つずつ確認していく彩乃であった。


動力源もなく反対側まで透けているため投影装置も内蔵されていない水晶が、触れると映像が投影される。


まだ使用していないが、万年筆を持ち疑問を思い浮かべると、脳に直接語りかけてくるように説明してくる。


とりあえず、水晶と万年筆を机の上に置き、夕食を食べるために一階に下りる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ