色欲の罪、勇者の尋問開始する
頑張った!
盗賊達を一掃した後に勇者の拘束を確認、武器をしまい、人魚のお嬢様に近づきつつ軽く挨拶をするアスモデウス。
「武器収納、さて大丈夫ですか、お嬢さん」
腰が抜けてるのか、立たせるために手を伸ばし、その手をつかむ彼女を引っ張り上げる。
「え、ええ……助かりました……あ、ありがとうございます!、わ、私はソフィア・ローレライと申します」
少し赤面しつつ、感謝の念と自己紹介をしてくるソフィア。
「そりゃよかった……ソフィアさんね……躾は悪いんで礼儀がないのはご了承お願いします」
頰を掻きながら自身の礼のなさを先に謝るアスモデウス。
「そ、それは別にいいのですが……」
そんなアスモデウスの言葉に肯定しつつも、言葉の末尾に否定の意を帯びさせるソフィア。
「うん?………」
彼女の否定の言葉に疑問に思い、真意を確かめようと唸るような声で問い返す。
「さっきの人は、その、見逃してあげてもよかったのでは、もう戦う気は無かったようですし………」
ソフィアは真っ直ぐこちらを見ながらそんなことを言ってくる、少し呆然とした後にでたのはこんな言葉。
「はい?」
アスモデウスの疑問符にわずかに慌て始めるソフィア。
「い、いやその、あの」
ソフィアに対して呆れながら子供に言い聞かせるように呟く。
「はぁ…………偽善だろう偽愛がだろうが貫き通せばそれは本物だろうよ………が、あんたにその覚悟があるのかい?」
彼のつぶやきに要領を得ず、疑問符を浮かべるソフィア。
「え?」
そんな彼女に懇切丁寧に説明していくアスモデウス。
「可哀想だから見逃してあげる……もしかしたら明日には天啓がおりて改心するかも……神様がなんとかしてくれるかもしれない……次ソフィアさんが敵を殺す時に本気で思うなら見逃しゃいいさ……ただし取り逃したそいつがあんたや誰かを害した場合、それはあんたが背負うべき罪だからな」
呆れを含ませた声色で説明されたことに対して反発するソフィア。
「で、ですが!」
感情的な否定の意思に落ち着かせるように静かな声色で語り聞かせる。
「………自身を犯して殺して売ろうしてた奴らにそんな言葉が出てくるなんてあんたは慈悲深い、だけどな、俺は優しくないし臆病なんだよ、不確かな可能性より他を害してでも自身の安全を確保したがる卑怯者…………悪いなあんたを助けたのがこんなんで……ただ一つ忠告しておく、武器を持ったら貴族も平民も関係ない、殺るか殺られるか、それだけだ………ソフィアさんがそのポリシーを貫くつもりなら夜道には気をつけろ、あんたみたいな優しくていい人が死ぬと目覚めが悪い」
臆病者と皮肉気味に呟く彼、自身の安全第一と言っているが、ソフィアの安全も確保するための行動ということを思い出し、少し頭を冷やす彼女、これ以上は無駄な問答と理解する。
「……そ、そんな、臆病者なんて思ってないですよ…………は、はい………わかりました……」
(……私を助けてくれた………そ、それに私の言葉を真剣に考え、歯に着せない物言いで否定も肯定もせず……私が貫きたければ貫けば良いと尊重してくれ、身の安全を心配してくれた………周りにいる顔色ばかり見てきて……心にもないおべっかばっかり言う人達とは全然違う………初めて会ったこんな人………♡)
「……まぁ、すぐに全面的に納得できないだろうが、そういうもんだと思っといてくれ……」
そんな事を呟きながら、エマの方に近づき、メイドの容体を確認する。
「……どうだ?」
「……なんとかなりそう、私の癒しの炎で峠は超えたわ、対処が遅れてたらちょっとやばかったかも……あっ!意識が戻ったみたい!」
「………あの時、エマに任せたのは英断だったか………」
そう呟く彼に起き上がった、彼女は自己紹介と感謝の念を込めて深々とお辞儀をする
「………主人と私を助けていただきありがとうございます、私はソフィア様の御付きのメイド、イザベラと申します。」
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辺りは真っ暗になり、馬車の前で焼いている焚き火がここら一帯の灯台と化していた。
「うぅぅ………はっ!………な、なんだこれはとっとと縄を解け!!」
縄に縛られた勇者は自身の状況を把握した瞬間喚き散らす。
勇者の怒声に耳と目を塞ぎながら、迷惑そうに眉を寄せるアスモデウス達。
「………うるさい……」
アスモデウスは手ぬぐいを勇者の口に羽交い締めで結び、脚を踏み抜き砕く、痛みに痙攣して叫ぼうとするが、声が出ない。
そんな光景に顔を背けるソフィアとイザベラ
「魔物が寄ってくるだろうが……大人しくしろ」
肯定の意思をコクコクと示してくる勇者、ゆっくりと喋れるようにしてやる。
「俺をどうするつもりだ?」
勇者の最も気になるだろう疑問に対して悪どい笑顔を浮かべながら語り聞かせる。
「何、いますぐとって食おうってわけじゃない、ちょっと聞きたいことがあってな」
そんなほぼわかっていた脅し文句に反発の意を示す勇者。
「はいそうですかって聞くと思ってるのか?、言ったら甚振られるとわかっていて誰が言うか」
面倒臭そう溜息を吐く、勇者が喋りやすいよう、飴の逃げ道と鞭のイバラ道、二つの道を与えるアスモデウス。
「信じるかどうかはお前次第だが、喋れば嬲ることなんてしない本当だ………まぁ喋る気があろうがなかろうが、喋るまでは尋問させてもらう……実は俺の仲間に高度な回復魔法を使える奴がいてな、あのメイド………イザベラさんが助かってるのもそのおかげ、尋問のために幾らでも嬲れるってわけだ………お前が話したくなるまでさっきのを続けるだけさ」
イザベラの方を見てハッタリではないことを確認し驚愕する勇者。
「なっ!!?」
そんな勇者の戸惑いを律儀に待ってやるわけもなく、脚を振り上げる。
「じゃあどれくらい耐えられるかなお前は!!」
振り下ろす直前に勇者は叫ぶ。
「あっ!!わ、わかった!はな、ギャアアア!!?」
肉が裂け人骨が砕ける嫌な音がそこらに響き渡り、謝る気が皆無の声色でアスモデウスは謝罪する。
「あ、わり、話すなら話すでもっと早めに言えよ、止損なうだろ?」
形だけの謝罪の後に即責任を押し付けてくる。
親の仇でも見るかのような憎悪の瞳を向ける勇者は嗚咽を漏らしながら呟く。
「お、おまえェ」
お前の事情なんか知らんとばかりに勇者に詰問するアスモデウス。
「まぁいいや、ほらとっとと話せ」
そんなアスモデウスの詰問にまたもや反抗の意思を示す勇者。
「………その前に治療しろ」
勇者の言葉に青筋を浮かべ静かな殺意を込めて喋る。
「あ?……手下もそうだったが、おまえら頭足りないな、自分達が攫うために人を殺し、攫ってきた人間も犯して殺して売ってたんだろ……自分の時だけ御免被る丁重に扱ってくださいって通るわけねぇだろ、それとももう一本いくか?」
実質的な被害を被る前に速攻で折れる勇者。
「ひ、話す話す!!」
イラつきながら呟くアスモデウス。
「……わかったならとっとと話せ、また止め損なう……悪いが外道を蝶よ花よと愛でる趣味もないしな」
アスモくん鬼畜スギィ!