色欲の罪、盗賊を全滅させる
「動けば即殺す!!」
「動かなかったら?」
「楽に……殺してやる…」
トキコさんカッコ良すぎィィィィ!!
「………だからお前は聖剣頼りだってんだ……三千年も前の情報を鵜呑みして相手が弱いと油断……力量や持ってる武器を確認すらせず………挑発されたからといってなんの策もなく懐に飛び込み……挙句返り討ちに合う……阿保が……」
侮蔑の色をたっぷり含んだ視線で足元の勇者を見下ろす、こんな奴だが最後くらいは見とってやろうと、それが殺したものの務め、そう思っていたが、勇者は喘ぎ声を出して苦しんでいるが、今すぐ死にそうには見えない。
「………がっ、あっ、……」
しばし喘いだ後意識を手放す勇者。
たしかに致命傷を与えたはずだが、なぜかまだいきていることに疑問を抱くアスモデウス、しかし、服の切り口から必殺の一撃を受けながら九死に一生を得たタネがわかった。
「……ああ、お前、服の下に鎖帷子着てたのか、それで死なずに済んだ……そういう保険はかけられるんだな……」
溜息をつきつつ、呆れ半分感心半分で呟く、そんな様子に盗賊の手下達は大声で喚きながら慌て始める。
「ひ、ひぃぃ、ば、バケモンだ!!」
「な、何が雑魚だよ!!テメェの方が雑魚じゃねぇか!!」
「や、ヤベェ、逃げるぞ!!」
蜘蛛の子を散らしたように右往左往、こちらに背中やけつをむけて逃げ出す盗賊達、しかし、圧倒的に強者を前にしてその行動は愚鈍にすぎた。
「エマ、勇者を拘束した後にメイドさんを頼む、まだ間に合うかもしれない………」
「え、あ!!う、うんわかった!」
隣のエマに指示を出し、盗賊たちの方に向き直るアスモデウス。
「…………逃がすわけないだろ………」
悪魔は囁くや否や、一番遠くにいる盗賊の首を刈り取る、通り道にいた何人かもついでとばかりに致命の一撃を与えていく。
「ひ、ひぃぃ!!?」
回り込まれた事で驚愕と恐怖に顔を染め、一人が固まっていると、目の前の悪魔は剣を横薙ぎに振る。
紅黒い刀身から炎の蛇がのたうち、背後に飛んでいく、そうすると後ろから仲間の断末魔が聞こえてくる。
後ろを恐る恐る確認すると、自身の仲間は全滅したようだ、その光景に呆然としてると後ろから喉元に冷たい刃を突き立てられ、前を向き直す男。
「………さてと……尋問の趣味はないが……少し聞きたいことがある……」
脅すように切っ先を少し喉に低火力で皮膚を焼きながら突き刺す、その痛みに怯えながら問い返す男。
「な、なんだよ……」
脅しの条件を整え、自身の疑問を問いかけるアスモデウス。
「……なんでお前らはあの子を襲っていた?……ただ金持ちだから襲ったのか?……見たとこいいとこのお嬢様って感じだが……」
アスモデウスの疑問に少しの間沈黙するが、喋ったら殺されると考え、まず自身の生を約束させようとする男。
「………それを喋ったら………見逃してくれるか?」
男の命乞いに呆れながら返答し、最後の言葉に殺意を込めるアスモデウス。
「………お前自分がそんな保証をもらえる立場だと思っているのか?……別にどうしても知りたい情報ってわけでもない…………話さないなら即殺すだけさ……」
慌てて制止を投げかける男。
「ま、待ってくれ!話す話す!」
面倒そうに眉をひそめながら囁くアスモデウス。
「……手短にな……」
話し始める男、ビビりながらもすらすら言っていく男。
「あいつを人質にとって、身代金を要求したりとか、神族への貢物にしたりとかな……」
男の説明に疑問が増え、再度投げかけるアスモデウス。
「身代金はわかるが……貢物?」
助かりたい一心で自身の知ってる事情をありったけ話す男。
「ああ、あいつはマーメイドの中でも純潔の亜人だからな、神族も欲しいってやつはごまんといる、でもあいつの家は神族に賄賂をこれでもかと納めてる、そうそう手を出すわけにはいかないが………」
アスモデウスは納得したように頷く。
「盗賊に襲われた末、偶然買い取ってしまったら、その限りではない……ってところか」
達成感と生き残れる希望が入り混じった顔で頷く男。
「あ、ああ……」
そんな男に飄々と死刑宣告をするアスモデウス。
「ありがとよ、楽に殺してやる」
神速の横薙ぎで首を両断する。
「へ?」
呆然と間抜けな顔を晒しながら胴体とお別れする男、嫌な音を立てながら地面に落下する。
「……さてと……勇者様はもっと情報持ってるかな?」
殺人の狂気に浸ってもいなければ弱者をいたぶる事に狂喜もせず、ただ淡々と呟くアスモデウス。
尋問の標的は勇者に変わる。
主人公は普段はちょっとエッチで間抜けな感じですけど、戦闘時とかやらなければいけないことや自分の大切な人が傷つけられると非情になります。