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プロローグ

「オレを目覚めさせてどうしようってんだ」

長い眠りから古の悪魔が目覚める。

アスモデウス・サキュスト




「お前クビ」


白銀に輝く翼と頭の上に光の輪を乗せながら天使は解雇通告を一人の悪魔に叩きつける。



「え?」


驚きに目を丸くする悪魔。



「役立たずすぎて飯食わせるのももったいないわ」


呆れながら呟く天使、その発言に抗議しようとする悪魔。



「ちょ、ちょっと待ってくださいよ」



時間の無駄とばかりに無視し、他の天使たちに命令を飛ばす。



「あ〜誰かこいつどっか適当に封印しといて」


制止の声を投げかけるが、部下の天使の攻撃をくらい中断される。



「え、いやちょ、ウッッッ………」




そこで一旦意識が途切れた悪魔、目覚めるのは三千年後とは思いもしなかった。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







「……………ハッ………ハッ………ハッ………」


薄暗く埃っぽい古ぼけた遺跡、所々底が抜けている石畳、石壁も損傷が激しく穴が空いており中の様子を少し確認できる。


そんな廊下の中を短い呼吸音とともに疾駆する少女。


流れる金髪に透き通った青い瞳、通った鼻筋に可憐な唇、しかし今は時々、力一杯歯を噛み締め犬歯が剥き出しているため台無しとなっている。



豊満な胸と尻、女性の魅力あふれている体つき、上半身を包むのは薄汚れた繋ぎ跡だらけの上着着て、左右で長さの違うデニムズボンを履いている、どちらもボロボロもで今にも糸屑に変わってしまいそう。





ズボンの裾がほつれていて歪な穴から艶かしい太ももを覗かしている、だが、それよりも所々青痣が付いていて痛々しいさが勝る。


腰の後ろあたりにポーチを身につけている、歳は十代後半といったところ。




「…………文献によると………ここね!」


手に持つ表紙がかすれた分厚い本を開き確認しながら、見つけた嬉しさのあまり大声で叫ぶ少女、目的の部屋に入っていく、そこには黒髪の少年が一人いた。



雁字搦めに両腕を鎖に縛られ、首にも枷がはまっており、両膝を地面につけているが、足も腕と同じく鎖で乱暴に縛られている。



大罪を犯した囚人か自身を痛めつけることに喜びを感じる被虐性欲者といった印象。



少年に動く気配はなく死んでいるように瞼を閉じられ

ている、小柄ながらも鍛えられていることが伝わる体、上半身を包む上着は礼服のようなしっかりした生地の服、硬く襟が立っており、黒一色かと思えばコントラストのように金色のボタンがあしらわれている。




下は黒一色のズボンを履いていて、地面に足をつけているため砂と土で少し薄汚れている。



「…………これが、世界を滅ぼそうとした、魔王軍内最狂戦闘悪魔部隊、七つの大罪の中でも神に洗脳されず、唯一封印するしかなかった、色欲の罪、アスモデウス・サキュスト………」



感嘆の声を漏らし、達成感と充実感を滲ませなら呆然とする少女。



「探せ!!ここにいるはずだ!!!鍵を取り戻せ!!」



遠くとも近くとも言えない距離感の掴めないところから男の怒号が聞こえ、 立ち尽くす少女は意識を取り戻す。



「ハッ!!そ、そうだ……ゆっくりしてる時間はないんだった!!」



呟くや否や、手に持った本を地面に起き、腰のポーチを弄る、中から鍵を取り出す少女。


本をパラパラと乱暴にめくりページを斜め読みしていく。


「えっと……この鍵を………そこにさせばいいのね!!!」



喜びの叫びをあげながら首元についている錠前に鍵を差し込む、捻る少女。


喜色満面の笑みを浮かべながら少年の様子を見届ける。



少年の手足に絡みついていた鎖は甲高い金属音を立てながら解けていく、最後に首の枷が外れ重く低く短い音が流れた。



ゆっくりと瞼を開け、立ち上がる少年、いや色欲の罪、アスモデウス・サキュスト。


封印から解かれた七大罪の悪魔、アスモデウスは一言呟く。



「…………えっと、ここどこ?………」



呆然と立ち尽くすアスモデウス、そんな彼に少女は興奮を抑えられないといった様子で独り言を言っている。



「やった、遂に、神の長い征服も終わる……」


終始、自身を置いてきぼりにする少女に事情を問いかけようとするアスモデウス。



「お、おい………どういうことか説明して………」




彼の問いかけの言葉を発してる途中で割り込まれて中断させられる。



背に翼、頭に輪っかをつけた見るからに天使という容貌の男達の一人が喚き立てる。



「見つけた!こんなところにいやがった!!



別の男が嗜虐的な笑みを浮かべつつ、舌で唇をなめつつ脅し文句をはいてくる。



「痛い目見たくないなら大人しく言うこと聞きな………」



武器を構えつつ、明らかに実力行使もいとわない男達の言い分、彼女は強気に言い返す。


「へっ、誰があんたらのいうことなんか聞くか!……アスモデウス!封印から解いてあげたんだからいうこと聞きなさい!あいつらをやっつけて!!」



「へ?俺にそんなこと無理だけど………」



彼女の命令の後に響くのはアスモデウスの言葉。


彼の悲鳴にしばしフリーズする少女、かろうじて出た言葉はこれだけだった。


「………は?」



彼女とアスモデウスの様子に腹の底から笑い転げる天使達。



「そいつにそんな力ねぇよ!」


「ギャハハハハ!!!教えてやるよお嬢ちゃん、そいつはな七大罪歴代色欲の罪の中でも最弱の悪魔なんだよ!!!!」


「は、は、腹がよじれる〜」



笑い転げる者、腹を抱えてうずくまる者、天井に向かって顔を上げる者、様々だが共通する事がただ一つ、全員爆笑している事だ。


彼らの笑い声でフリーズから復帰する少女、耳から入ってきた信じられない情報の真偽を確かめる。


「あ、あんた、最弱って、ま、マジなの?!?!」


間抜けな顔を晒しつつ返答するアスモデウス。


「え、あ、うん、歴代最弱かつ896世代目の七大罪の中でもぶっちぎりで最弱って言われてるな………まぁでも君が逃げる時間くらいは稼いでやるから、今すぐここを離れるんだ」


本人に言われてしまえば信じるしかない、しかし、少女にとってそれはあまりに絶望的な事実だった。




顔を青くした後、呆然とふらつく少女。



「そ、そんな………あっ!!」


意識を手放した代償として石につまずきバランスを崩してしまい、アスモデウスに向かって倒れこむ。


「あっ、危ない!!」


咄嗟に支えようとするが、間に合わず、もつれ合いながら転倒する二人。



「「………んっ………」」


地面に倒れたと思ったら、少女が上から自身の唇でアスモデウスの唇を塞いでいた。


俗に言う接吻というやつだ。



少女は赤面しながら急いで離れ、文句を言う


「プハッ、あ、あんた、わ、私のファースト」


だがその文句も途中で中断される、少女に馬乗りされてるアスモデウスから凄まじい魔力の本流が流れ出て少女を吹っ飛ばした。



「きゃっ!!!?!」


短い悲鳴と共に飛ばされるもなんとか足から着地する少女。


さっきまでいやらしい笑みを顔に貼り付けて傍観してた天使達も表情に戦慄を浮かべ始める。


「な、なんだこの魔力、じ、尋常じゃねぇぞ!!」


「ああ、明らかに上級悪魔並みにはある」



「さ、最弱ごとにビビってんじゃねぇ!!ど、どうせ虚仮威しだ!」



屁っ放り腰になる天使達、足音を立ててゆっくり起き上がるアスモデウス。



「なんだか、体が軽くなった……事情は知らないが、女の子相手に多勢に無勢で襲うお前らに加減は必要ないよな……」


全身に紅い魔力をみなぎらせながら、強気に言い放つアスモデウス。


怯えを誤魔化すように異口同音で大声を上げる男達



「「「な、なめんじ」」」



しかしその言葉も言い終わる事は永遠になかった、アスモデウスは超速で彼らの前に踏み込み、神速の正拳突きを三回放った。


彼ら3人の腹にぽっかりと穴が空いて、そのまま事切れる天使達。


一人が死に切らず、最後の嫌がらせに少女に手に握っている槍を投擲する。


「えっ!!?!」



突然の攻撃に驚き、身を硬ばらせるしかない少女、あわやその柔肌が貫かれるその時、信じられない速度で彼女をお姫様抱っこで抱き抱え、槍を躱すアスモデウス。


腕の中の女の子に話しかける。


「大丈夫?怪我ない?」



「え、あ、な、ないです♡」


頰を赤く染めながら恋慕の感情を抱き、心臓が弾けそうなくらいドクドクいっているのを何とか鎮めようとする少女。




隙なく観察し、彼らの死を確認した後、腕の中の彼女を立たせてアスモデウスは呟く。



「えっと〜ノリでやっちゃったけど、こいつらと君は誰?」




困り顔で頰を掻くアスモデウス、返事もできずそんな彼を立ち尽くし呆然と見る少女。











アカルイミライオー!!!!

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