10.簡単に、凄惨に。
真面目な話を作り始めると
すっげぇ疲れると再認識したフユトです
もっとふざけたい(病気)
てんやわんやは付き物と言わんばかりにグダグダし
てんやわんやから数時間が経過し、怒鳴りつかれてか、部長にビビって逃げたのか
急に眼を細めると、そのまま眠りについてしまった。
「なぁ、もう仕事放棄で契約破棄したいんだけど」
「今までだって、似たようなことあったでしょう。めんどくさがらないでやりなさい」
「そうわいっても、俺の仕事はあくまでカウンセリングだ。いまだに迫害の後を引きづっている奴らとのコミュニケーションと社会復帰が仕事なのであって、間違っても、我がままお嬢様のお守なんて割に合わない仕事じゃない」
「それでも、カウンセリング対象として、上司から預かったなら、最後まで責任もって面倒を見なさい。さっきも言ったけど、こんなケースも初めてではないでしょう。あの時だってうまくやったのだから、やりなさい」
渋々と言うか、無理やりと言うか、
そもそも、このカウンセリングと言う仕事自体、状況を強制されてやらされていることで
なにも自分からやりたいと言って、やっているわけではない。
一番最初は、いつの間にか自分の部屋にボロボロの布切れ一枚で寝ていた少女だった。
なにがなんやら、わからないし、小さい少女だからと言って布切れ一枚だと視線に困るような状況で母に見つかったのが運の尽きだった。
状況を説明できない俺は、母に責任やら問題やら通報やらと脅されて理解する間もなく少女の面倒を見る事になって、それが奇跡的にも上手くいったせいで、母に度々、面倒を押し付けられるようになって、あぁ思い出すだけで嫌になる。
一番最初の、あれだって母のマッチポンプだったし、もう泣きたくなる。
しかしまぁ、俺は責任という言葉に弱いらしく、その後も、今に至るまで
なんとか、カウンセリングとをやり遂げ続けて、今回もそうするしかない様で
最低限、裸を見た責任は取ろうと思ってしまう自分の思考回路が恨めしい。
「で、カウンセリングをする上で、この子は何を抱えているんです?」
道理である。
カウンセリングなんて事を、せざる負えない対象。
この家に連れてこられても逃げようともしない様な何かに対する気力を失った精神疾患者。
何かを抱えて、何かに怯えて、何かを恨んで、何かが欠けて、何かで隠す。
そういった、モノのカウンセリングというかお世話というかをするのが仕事なのだから、最低限、触れてはならないところ、覗いてはならない場所、開いてはならない内だけは聞いておかなければならない。
「そうね、彼女はなんていうのかしら、何もかもに裏切られたとでも言うのかしらね。
私が、あのセクハラ上司から聞いた話と新聞部を勝手に使って得た情報から話すなら
彼女、徹底的に裏切られてづけて生きているわ。あんな風にしゃべれるのが不思議なくらいにね」
「裏切りねぇ、それはウチじゃあ珍しい話じゃないですよね。もっと具体的にはないんですか?」
一瞬、朱鷺無の顔が曇る。
これもいつものことだ。普段は怖いぐらいに冷静に状況を揃え情報を得ていく朱鷺無が決まってする良くない情報をしゃべる時の顔。
平気で人を殴るしペンを投げるし追い詰め吐かせるような彼女は妙なところで同情的で
そういうところが、まだ人間なんだろうなと感じさせる。
だが一瞬だった。
また、いつもの怖い部長の顔に戻るとフェルの話を始める。
「彼女が生まれたのは、130年くらい前の北欧の山奥よ。小さな山に隠れるように住む村の外れくらいに城を構えた、貴族ばかりの吸血鬼にしては質素な家に生まれたわ。まぁ、質素と言っても私たちよりは優雅に暮らせるだけの衣食住はあったし欲しいものがあれば私たちの常識の範囲内ぐらいなら買い与えられる程度だった」
「裏切りなんて言葉とは無縁の様ですが?」
「まぁ、黙って聞きなさい。彼女には双子の妹がいたの。でも何せ一世紀以上も前の村では双子は忌み子として扱われていた。村に災厄をもたらす悪魔だとされていて、双子が生まれたらどちらかは殺さなければならない掟があった」
「それで?妹が殺されて復讐鬼にでもなったと?」
「そんな単純な話なら、サキナの父さんが片づけられるでしょう?フェルの両親は、どちらも殺したくなくて、妹を親戚の家に匿ってもらうことにしたのよ。村の人には殺したことにして、フェルにはそもそも双子なんて居なかったと隠してね」
「なぜ、隠す必要が?」
「なぜかはわからないけど、秘密を知ってる頭数は少ないに越したことないのよ」
なるほど、やばい秘密ばっかり管理している奴が言うと説得力が違う。
それなりに長い付き合いなのに部長に関して知らないことしかないもん。
「話を戻すけど、しばらくは何事もなく隠し通していたわ。妹が帰ってくるまではね」
妹?
でてくるよ!幼女がね!!