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呪われた森で-1-

さぁ、何から話そうかねぇ。。。

そういえばどんな話でもいいのかい?私が知ってる話は大抵胸糞悪くなるような話しや、救われない話が多いのだけれでもね。

血沸き肉躍るような話は他所で聞けるだろう。たまにはそういう話を酒の肴にするのもいいもんさ、、、

しんみりするじゃないかって?いいのさ、時にはそういう気持に浸りたいときもあるのさ。

 まぁ、よくある昔話だ。ある時貧しい村のごく普通の家の普通の夫婦が一人の女の子を授かった。二人は喜び半分不安半分、なにせ食う物があまりない、育てていけるかわからない。それでも初めてできた子供はうれしく二人は自分たちの食うものも割いて、一生懸命に育てた。


 5歳を過ぎた頃合いだろうか、、、はっきりとした顔立ちが目立ち始めた。言葉では言い表せないほどの美少女、いや、美幼女というべきであろうか、表を歩けば人の目を惹き、可愛がられ、もてはやされる。なにぶん世間の狭いところだ、いつしか周りの村でも有名になっていた。


 10歳になった幼女は少女に、より美しく、より華やかに変わっていた。

 そして運命は回り始める。

 たまたま、王子がその村に視察に来ていた。偶然、同じ年ごろの男と女が出会ってしまった。そして、王子は少女に恋をした。女の子の親は驚き喜び、村はありがたがった。

 実の所、少女の親は限界だった。自分の食うものでさえままならない現状、それを情けないと思う親としての圧迫(プレッシャー)。心が苦しんでいた。貧しさとは心まで苦しめるものなのかと、少女の親だけでない。不作、災害がたて続き、採れるものも狩るものも少ない。備蓄などとうの昔に尽き果てており、村人全員が明日の食べるものにすら困っていた。

 ほどなくして、王子の付き人より、少女と親に申し出があった。婚姻前提で少女を引き取りたいと、、、

 その申し出を少女は嫌がった。物心ついているとはいえ、まだ10を少しばかりか過ぎたばかり、父、母に会えなくなることを悲しく思い、親に泣きついた。親は困っていた。自分たちが苦労して育てた娘を嫌がる先に嫁がせることへの罪悪の心、そもそも、娘のせいで苦労が増えた。嫁ぎ先としてはこの上ないところだから嫁がせてしまえば楽になるという思い。2つの間を迷い、決めかねている親に、付き人がそっと耳打ちをした。

 「娘さんに来ていただけるなら当然、多額の結納金も出ますし、お礼としていくばかりか色もお付けできるでしょう。村にはそうですね、、、別の形で、例えば報奨金のようなものを出すこともできると思いますが、、、」

 利害関係が一致した瞬間だった。

 その夜、村では会議が開かれた。大人の都合、思惑しかないつまらないものであり、とどのつまり少女は売られるがごとく、嫁ぎ先が決まったのである。

 そして、彼女は王子の妻として迎えられ、籠の鳥になった。そこに自由はなくて、ただその美しさゆえに愛でられるだけのもの。華よ、蝶よと言われ、愛玩動物となり果てた。


 彼女はますます、美しくなっていく。噂は千里を走る。王子の派遣期間が終わりを迎え、王都に帰ることになった。

 少女が王都にやってきた時には既に有名人であった。とてつもなく美しい、、、透き通るような肌に、流れるような髪。今はまだ、だがゆくゆくはと思わせるような少女から女性への転換期。噂の真偽をその目で確かめる民衆の群れがそこにはあった。

 やや、誇大になりすぎたといえよう王子の帰還式。歓喜、羨望、嫉妬、嘲笑様々なものを抱え込んで行われた。


 もしここで、話が終わるなら少し悲しめな、でもおとぎ話のようなストーリーで終われたのかもしれない。。。


 さて、一般民衆からすればおとぎ話のようなものだが、当事者はどうであったのだろうか。

 貴族でもなく王子取り入ったと妬まれ、ただの村娘である身分を蔑まれ、維持の悪いことに王子の母にも嫌われた。何か言おうものなら額が無いと、何かしようものなら品がないと、結局は王家に嫁ぐような器でないと罵られた。

 少女は悲しかった。そして、このままだと確実に美しくなる自分を想像し、落胆した。今よりもっとひどく扱われるに違いない。望んだわけではない美しさを憎んでいた。容赦のない誹謗、心無い中傷に傷ついた。そして、少女は願った。醜くなりたいと。。。

 それは、魔法か奇跡かわからないが事実、一夜にして美しかった少女は醜いモノへと変わり果てた。王子はもう"それ"を愛することは出来なかった。周りの者にはその形容しがたい醜さゆえに嫌悪された。そして、王宮を追放された。王家のスキャンダルであるこの事件は秘匿され、そのモノは深い深い森へ置き去りにされた。最後に情けをかけたのだろう。簡単な家と少しの食料だけを与えて、この森から二度と出てくることのないようにと言い残して。。。

 それから、その森はこう言われた。呪われた女の住む森と、、、


ふぅ。。。自分ばっか話すと喉が渇くねぇ。

ん?その少女は救われないのかって?あぁ、どうだろうねぇ。。。

まぁ、まぁ、そう慌てなさんなって、この話は続きがあるのさ。

だけど主人公は少女じゃないのさ、ヒロインでもない。

だから、救われたのかっていうと、、、どうだかねぇー

ところで、お兄さん。さっきから一杯も進んでないじゃないか。

目の前の女が話をしてるんだ。ちゃんと飲みながら聞きなさいな。

そして、私のグラスにも良い酒を注いでくれたなら、次の話しを始めよう。。。

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