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「ヒーロー」それは個人の胸の内にある憧憬の世界が基準




 それでは早速、交渉開始。


 気持ちを切り替えた私は、口を開き言葉を発しようとして…動きが止まる。


 割れた窓から次なる侵入者が現れたからだ。


 「どぉおおおりゃぁ!」


 気合い十分に余韻のある掛け声と共に現れたのは、一言で言うと特撮ヒーローのような出で立ち。

 しかも一人型。


 心の中でライダーと仮称する。


 基本カラーは緑に黒を混ぜたような感じ。

 顔はバッタと言うよりは蛾に見える。

 首には真っ赤なスカーフを巻き付け、爛々と光る目 (らしいもの)が黄土色のせいで、余計に蛾を意識してしまう。

 額の辺りから生えている触覚 (らしいもの)には羽毛のようなものがビッシリと付いている。


 ちゃんと説明が無いと本当に蛾がベースとなった肉弾戦変身ヒーローにしか見えない。


 そして最初に侵入してきたモンスターたちは予め了解でもしていたのか。

 当然のように場所を空け、新たなる侵入者を受け入れる。

 立ち位置は大道寺君に近づく場所で。


 「待たせたな!助けに来たぜ!」


 片膝を着いた姿勢で着地したライダーは、私たち…ではなく、大豪寺君の方に視線を向けながら右手を揚げ親指を立てて、グッ!


 …なんだろう。

 色々な意味で疲れがドッと肩に伸し掛かってくる。


 先ほどまでの緊張感と殺伐とした空気は一気に吹き飛んだが、此方の頭の中には嫌な予感が込み上げてくるのを否めない。


 しかも、このライダーは初手から此方をガン無視ときたもんだ。


 まあ、黄金色に輝く方と怯える子連れ中年では分が悪いのは知ってるけどね。


 どう声を掛けたものか。


 此方を向いていない相手へ無理に存在をアピールするより、今の状況を説明してもらえる方が助かるので、どうしても相手が口を開くのを待ってしまう。


 なんてことを考えていると、再び窓から侵入者が。


 しかも複数。


 「くそぉう!俺はまだ自己紹介をしてないぞ!」


 熱血漢っぽい文句を吐きながら、ガン無視ライダーは私たち親子の近くへと飛び退いてくる。


 でも立ち上がってからも、私に見えるのはガン無視ライダーの背中だけ。


 ひょっとすると無視ではなく存在に気づいていない。

 あるいは視界に収めても意識されていないレベルでの扱いを感じる。


 そして侵入者たちは、最初のモンスター達のように立て続けに飛び込んでくるが、今度のは統制された動きを感じる。


 だって回転を加えながらの着地にもかかわらず、地に立つ音が


 『タタタタタンッ』


 ってリズミカルだったから。


 「「「「「ドラゴンウォーリア、参上!」」」」」


 声も見事にハモっている。


 個人的には次に来るのは巨大化ヒーローかと思ったけど違ってた。


 今度は見た目がほとんど同じながらも、カラーリングで個別化された戦隊モノの5人組だった。


 ファンタジーな世界でウチの娘達の仕出かしを目の当たりにした後だし、動揺はしない。


 むしろ10年単位での気安いレベルで繰り返される異世界召喚の正体を目の当たりにした気分だ。


 『おお、異世界から来た勇者よ。どうか我々の世界を救ってくれ。』


 この一言はギャンブル性の高いシステムだということを、痛感させられてしまった。



読んでいただけることに感謝を。


叶うなら意見、感想、要望を頂きたく、よろしくお願いします。


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