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『まぐれ』は何度も続かないから『まぐれ』なのである

訂正版になります。

呼称のAとBを途中で間違えていました。

 沙羽ちゃんが大爆笑する最中、お姉ちゃんである美緒ちゃんは何をしていたのか、というと…

 一緒になって笑っていた。


 もう少し何かしらのアクションを期待したいところだが、何も訓練らしい経験をさせたことの無い現代っ子に望むのは無理があるのだろう。


 結果として沙羽ちゃんは魔法少女モードだが、カラス天狗Aに捕らわれ状態。(カラス天狗は固有名も分からないし、右とか左とか一々説明するのも面倒なので、こう呼ぶことにした)

 美緒ちゃんがパジャマ代わりの普段着でカラス天狗Bと対峙。

 私はスッピンのままでカラス天狗Aと対峙。


 そして対するカラス天狗Aは沙羽ちゃんを抱えて私と対峙。

 カラス天狗Bは美緒ちゃんと対峙。


 …事態が好転しそうな要素は今のところゼロっぽいですね、これ。

 とりあえずは会話しつつ何かを考えよう。


 「貴方たち、ナパージュ領国とやらに戻ったのではないのですか?」


 薄々は帰った振りして潜んでいたのだろうと予想はしているけど、少しでも新たな情報とチャンスを窺いたくて話し掛ける。


 「他国の奴らは知らんが、我々は貴様を葬る為に潜んでいただけだ。

  今までの『崩壊者』たちのように、何かをされてからでは遅い。

  ヴィレスティン王国は結果として栄えるかも知れんが、他国は騒乱の元でしかない。」


 『崩壊者』なんていう大袈裟な言い方をされるだけに面倒な存在らしい。

 しかも私が最初に打ち倒したカラス天狗Cと比べると、カラス天狗Aは饒舌みたいだ。

 この際だから、ドンボリさん視点ではない情報を仕入れることにしよう。


 「話次第では私も考える余地が見いだせると思うのですが。

  どうでしょう?

  どうしてそれほどに『崩壊者』であることが忌み嫌われるのか教えていただけませんか?

  ドンボリさんとも話をしましたが、私は歴代の『崩壊者』とは勝手が違うようですから。」


 私の言葉に互いを見るカラス天狗たち。

 偶然だが、私の打ち倒したヤツがリーダー的な立ち位置だったのだろう。

 沙羽ちゃんの大爆笑の所為もあって、完全に出端を挫かれた形だ。


 …何よりも、私たちにこれ以上の戦力が見込めないことを悟られたくもないので。


 互いに何か言葉を交わして打ち合わせをする2体。

 すると、カラス天狗Aが私に一歩近づく。


 「我々にとって『崩壊者』は厄介ごとでしかなかった。

  勇者を引き連れて入国するまでは良かったが、その勇者同士が仲違いをして争い出し、今のナパージュを形作ってしまった。

  詳細は我々も知らないが、スペルニアダ王国に至っては勇者同士の争いの結果、1人しか残らなかったらしい。

  他の国も似たり寄ったりだが、ヴィレスティン王国だけは違う。

  その過程で文明度が明らかに発展し国そのものは豊かになっていくばかりだ。

  むしろ『崩壊者』を上手に使い潰している、と我々は捉えている。」


 …ここに来て、まさかの『召喚勇者使い捨て論』が再加熱してしまった。

 しかも、ヴィレスティン王国には損よりも益があったというのであれば、その時が来るまで苦虫潰したつもりで耐えれば、問題ないということらしい。


 明日のドンボリさんとの話、もの凄く不安になってくるんだけど。

 いや、今のこの状況を何とかしないと明日も何も無いのだが。


 「そういうことですか。

  では何か念書でも書かせてもらえませんかね?

  私は絶対に貴方方に迷惑は掛けないと一筆(したた)めたいのですが…」


 とにかく敵意が無いことを改めて伝えようと交渉を持ち出す。

 だが、カラス天狗Aの言葉は厳しいモノだった。


 「ならば貴様は今すぐ跪け。

  先ほどのような不意打ち以外にも何か手段があるなら、この会話をどこまで信用出来るか分からん。」


 もっともな返答をされてしまった。

 まあ先ほどのようなシチュエーションでもない限り、2度も同じことが出来るわけでは無いのだが。

 私自身が火事場の馬鹿力に近い感覚でしかないと自覚してしまっている。

 それを警戒されての言い分だが、少しでも生存率があるなら私は喜んで従おう。

 そんなことを考えていた矢先、カラス天狗Bは沙羽ちゃんに意識を向ける。


 「お前もだ。

  いつの間にか姿が変わっているな。

  その武器を渡して貰おうか。」


 カラス天狗Aの言う武器とは、沙羽ちゃんの右手に握られているステッキのことだった。

 変身と同時に自動的に現れているシロモノである。

 おそらく衣装とセットになっているんだろうね、あれ。


 それでも武器と言えば立派な武器だ。

 そう言ってカラス天狗Aが手を伸ばすと


 「駄目。

  これは沙羽ちゃんの魔法ステッキだから。」


 …経験も思慮も状況把握も子どもだからねぇ…。

 しかも間の悪いことに例の自立型ぬいぐるみ。

 今の今までスッカリ忘れていたのだが、沙羽ちゃんの変身と共に頭の上に乗っている。


 …あの人形もセットなのかな?

 私自身も構えを解いてはいないが、どうやって割り込めばいいのかも分からずに様子を見守る。


「この~、カラスの出来損ない野郎め!

 沙羽ちゃんに掛かれば、お前なんて奴隷まっしぐらなんだからな!」


 なに煽ってくれてんの、この人形君は!?

 最初の「この~」以外は完全に腹黒い系の発言だぞ!?


 私は慌てて頭の中で風能力を意識する。

 左肘辺りに感じるエネルギーのようなもの。

 こうなれば仕方ない。

 先手必勝というヤツだ。


 私は狙いをカラス天狗Bに定めると正拳突きを放つ!

 私の拳が突風のように突き出される。

 突きだした拳の先に見えない壁のような、それでいてクッションのように柔らかいものを打ち抜いた感覚。


 パン!


 と衝撃音が響き、私は左正拳突きを打ち出した形で止まる。


 ……え?

 もしかして『もの凄く速い正拳突き』を打ち出しただけ?

 私の想像では突きだした拳の先から突風が飛び出る予定だったのだが…。

 完全に誤作動、大失敗である。

 おかげで人生史上初の『空気の壁を殴る』ことは体験できたが、結果はただ音を出しただけ。


 待って!待って!!待って!!!

 今の無し!

 ノーカウント!

 やり直しをさせて下さい。


 状況を理解した途端に、頭の先から全身に渡って大量の汗が噴き出る。

 完全に今までの会話が油断を誘うための嘘だったと言われても、誤魔化しようのない状況になってしまった。


「貴様…やはり『崩壊者』だな!」


 カラス天狗Aは傍目にも分かるほどに怒気を孕んだ表情になると、私に向き直り沙羽ちゃんに伸ばそうとしていた手を私に向け指さす。


 結果、沙羽ちゃんが抵抗しようとして振り回していたステッキ。

 その先端の宝石のようなモノが、カラス天狗Aの伸ばした手に触れ…


 次の瞬間にポップコーンの弾けるようなポン!という音と共に掻き消え、1枚のカードとなってしまう。


「きゃん。」


 捕らわれていた沙羽ちゃんの身体が、支えを失い床に落ちる。

 それと同時に零れる沙羽ちゃんの小さな悲鳴。


 …え?

 何が起こったの?

 

読んでいただけることに感謝を。


叶うなら意見、感想、要望を頂けると嬉しいので、よろしくお願いします。

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