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異世界でも私は育メンである、実績は未だ無い

 「シントウ様…お嬢さんは、いつから居たのでしょうか?」


 ドンボリさんが焦る様子で問い掛けてくる。

 …本当に私が居ない間、何を話していたんだろうか…。


 陰口を否定はしない。

 だが、そこまで露骨に表情が歪んでいると、私に対する陰口どころでは済まないレベルの悪意ある会話をしていたのではないか、と邪推してしまう。


 「いつからと言われれば、塔を出てからでしょうね。」


 今居るこの場所に来た時点で美緒ちゃんの姿は見えなくなっていたし。

 咄嗟に庇おうとした時にも、美緒ちゃんの身体を掴んだ感触だけは伝わっていたから。


 …完全にドンボリさん押し黙ってしまったぞ。

 此方も何と声を掛ければいいのか、分からないまま静かに時が流れる。


 正確に時間を計れば数分ぐらいだったのだろう。

 ドンボリさんは意を決したように表情を改めると、私に向かって説明を始める。


 「それでは誤魔化しも無しに説明しましょう。」


 そこから聞かされた話は、私個人の意見で言わせてもらうと

 『バカバカしい』

と苦笑いしながら鼻で笑いそうな話だった。


 しかし、ドンボリさんたちからすれば、笑えないジンクスとなってしまっているそうだ。


 話の内容は塔の中で中断されていた話の続きと補足だった。


 100年前、召喚された勇者の中に私のような『勇者認定外』が3名ほど居たらしい。

 その中で

 1人目はヴィレスティン王国の宰相となり国政の礎を築いた。

  ところが後に悪政者として処断された。

 2人目は女性で一緒に召喚された勇者と結婚。

 しかも勇者がヴィレスティン王国の新国王になったために王女となったのだが、後継者争いで旧国王の一族郎党を謀殺し後に粛清を受けている。

 そして3人目。

 これが厄介なことに、努力に努力を重ね勇者召喚された者たちに並ぶほどの力を手にした後に…なんと魔王に成ってしまったらしい。

 これだけでも十分に面倒なのだが、厄介な前例は続く。


 80年前、同じように呼び出された『勇者認定外』は1名だったのだが、同期の勇者たちを誘って魔王軍の四天王として寝返った。


 70年前、『勇者認定外』の3名がヴィレスティン王国で内乱を起こし、現在の7カ国統治体制の礎を作ってしまった。


 20年前、この時は今までにない数で40名の勇者と5名の『勇者認定外』が召喚される。

 そして、その5名が先頭となり個々別々に40名の勇者を各国に引き連れて亡命。

 現在の勇者乱立状態を形成してしまった。


 …いや、バカバカしいよね?

 私が裏切ったわけでも何か企んでいるわけでも無いよ!?


 なのにジンクスなんかに引っ張られちゃってさぁ。


 面倒なのはドンボリさんの言っていた『変革をもたらした勇者』の出現時期。

 70年前以外は『勇者認定外』が召喚されている時期と重なってしまっているって事だ。


 おかげでドンボリさん的には今回の召喚に期待が上がっている。

 そして私は悪い芽が出ないうちに摘み取られそうな勢いって事だ。


 ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。

 何か、何かジンクスを打ち消しそうな可能性を示さないと。


 今までに得た情報では『私の早期排除が面倒が無くて良い』って扱いが濃厚だ。


 説明を終えて押し黙ってしまったドンボリさんと大豪寺君の沈黙が怖すぎる。


 大体、100年前の勇者は何やっていたんだ!?

 魔王倒さずに建国ゲームに移行とか。

 ど~せ、ハーレム状態に気を良くした一夫多妻のツケを子ども達が払わされたってだけだろうに。

 若さ故の過ちか!?

 異世界に来て(たが)が外れてしまったのか!?


 …いいなぁ…若いって。

 オジサンも若い頃は奥様と知り合ってハッスルして…ん?


 そこで、ふと脳裏によぎる可能性。


 そのための確認を先ずは、しなければ。


 「ドンボリさん確認させて下さい。

  今までに私のような中年の召喚者は居ましたか?」


 「え?」


 私の意図を読めずにドンボリさんは声を漏らす。

 だが、直ぐに思案する様子を見せると口を開く。


 「そう言われてみると、今までの召喚者は貴方たち親子以外は皆17歳でしたね。」


 ドンボリさんの答えを聞いて、私は心の中でガッツポーズ。

 真実の如何はともかく、この場を乗り切る材料としては十分だ。


 「では、こう考えられませんか?

  私は娘たちの養育者として呼び出された。

  そして、娘たちは『2人の年齢を合わせて17歳である』と。」


 暴論と返されそうだが可能性として無い、わけではない。

 なんせ100年以上の歴史の中で我々親子が本当にイレギュラーなのだ。


 勿論この場を何とか乗り切りたいという思惑も相まっているが、納得してもらえれば希望はある。


 「娘さんたちの年齢は?」


 ドンボリさんからの当然のような問い掛けに私は自信もって答える。


 「美緒が10歳、沙羽が7歳です。」


 「なるほど…。

  そう考えればシントウ様は娘さんたちの保護者ってことになりますね。」


 なりますも何も、この子たちが生まれた瞬間から私はずっと保護者だ。

 有り難いことに異世界でも、この子たちを守るのは私って事にしてもらえたらしい。


 「分かりました。

  では、シントウ様の処遇については今後の働き次第ということに、させていただきましょう。」


 下手に隠すことが無くなったおかげか、ドンボリさんの言葉にも遠慮が無い。


 今段階では信用はしないが無視もしない。

 そのかわり実績で示せ。

 …って事でいいのだろう、多分。


 幸いにも情報は頂けた。

 努力次第で勇者に匹敵することは可能。

 …オジサンにはキツいけど頑張らなきゃだね。


読んでいただけることに感謝を。


叶うなら意見、感想、要望を頂けると嬉しいので、よろしくお願いします。

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