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分かっているのは、育メンは厄介者だということだけ。

 沙羽ちゃんと共に生理現象に対して一応の決着を着け一同の所へ戻る。


 …あれ?


 何だか大豪寺君が難しそうな顔をして私の方を見てくるぞ?

 私が居ない間に、ドンボリさんたちから何か言われたのかな。


 疑問を抱きつつも元の位置に戻る。


 「どうも時間を取らせてスイマセン。

  それで、私たち親子がどちらの国に所属するかを決めれば、よろしいのですかね?」


 ちょっとしたカマを掛けてみる。

 もしかしたら私たちがいない間に、大豪寺君の表情が変わっていることの理由が発生した恐れがある。

 となると、大豪寺君個人としては所属国を決めてしまっている場合もあると考えたのだ。


 「いいえ、シントウ様。

  大豪寺様は貴方たち親子と合わせるということだそうです。

  ですので、この場の裁量は貴方次第ということになっております。」


 え?そうなの?


 所属国の選択って凄く大切なことだと思うのだけど、勇者対象外の私が決める流れって本当に何かあったのかな?


 折角もらえた権利だが、おいそれと行使するわけには行かない。

 どうせなら私の中にある疑問を解消した上で宣言させて頂こう。

 …実は私の中では決めてしまっているんだけどね。

 ヴィレスティン王国ってことで。

 でも、それを先に言ってしまっては解消したい疑問が有耶無耶になる恐れもある。


 私は意を決すると、改めて一同に対して問い掛ける。


 「先ずは教えていただきたいのですが、どうして迎えに来た皆さんは私のことを敵視されるのですか?」


 それなりに言葉は選んだつもりである。

 だが誤魔化しや論点をずらされても困るので、あえて『敵視』という単語で問い掛けてみる。

 今までのパターンだとモンスターたちが応えてくれると思っていたのだが、意外にも反応を一番に示したのはガン無視ライダーだった。


 「やっぱり分かっているんじゃねぇか!

  じゃあ、お前は敵って事で確定だな!?

  この場で倒してしちまって構わないよな!」


 やだ、この人。

 沸点、低っ。


 しかも「やっぱり」とか言わないでよ。

 説明求めて居たはずなのに段階すっ飛ばして敵対確定とか。


 明らかな臨戦態勢の様子を見せるガン無視ライダーに対して、沙羽ちゃんが怯えるように私にしがみ付いてくる。

 ほらみろ。

 チビッ子のアイドルであるヒーローが、そんな事を宣言したら困るじゃないか。


 無償で信条に従い勧善懲悪の象徴である人から敵なんて言われたら困るんだって。


 ただ、今はこの流れを断ち切っておかないと面倒なので、出来るだけ慌てること無く落ち着いて言葉を続ける。


 「待って下さい。

  何も分かっていませんよ?

  むしろ出会った時から、ドンボリさん以外の方々は私のことを敵視するように接していますよね?

  それじゃあヴィレスティン王国以外に着いていく方が不安だって事になるだけなんですよ。

  えぇ~っと…お名前が分からないので羽の生えている方々をカラス天狗さんと呼ばせてもらいますが、貴方たちも我慢していましたよね?

  貴方たちからでも構いませんから説明を下さい、平和的に落ち着いて。」


 心の中では『モンスター』と呼称していたが現実に言うわけには行かない。

 第一印象から『カラス天狗』と呼称することを宣言して助け船を求める。


 「やはり、か。

  我々の正体に気づいているのだな。

  貴様はこの場で始末する方が我々としては憂いが無いのだがな。」


 ええ~!?

 何で助けを求めたら抹殺希望!?

 どうして説明してくれないの?

 どうして煽るの?

 私、来たばっかりなんだよ?


 てか、本当にカラス天狗なんだ。

 …ファンタジー寄りのカラス天狗って生々しいな…。

 ゲゲゲの世界観があるせいで、カラス天狗と言えば山伏の服装って描写が頭にインプットされてしまっている。

 そんな身としては、亜人種って見た目で差別されるのもうなずけることだと思ってしまう。

 だって怖いもの。

 おっかないもの。

 せめて文明種らしく服ぐらい着て下さい。

 人類サイドの押しつけかも知れませんが、全裸は無いでしょう全裸は。


 とにかく敵対の意思が無いことをアピールすべく、両手を前に掲げて後退って見せる。

 丸腰感を印象付けないと今にも襲いかかってきそうだよ、この人たち。


 言うこと言うことが地雷って、どういうことよ!?

 私の選択肢には地雷原しかないのか!?

 もう何を言えば地雷を踏まずに済むのか分からなくなり言葉に詰まってしまう。


 そこで漸く入るドンボリさんからの助け船。


 「皆さん。

  今回の召喚については、ここが引き際でしょう。

  シントウ様についてはヴィレスティン王国で何とかします。」


 …凄く冷静だよねドンボリさんって。

 それともアレかな?

 最初の説明の時に私の能力が大したことないと見限ってっての優しさなのかな?


 …もう同情でもいいや。

 この場を無事に切り抜けられるなら、どんな藁でも縋ってしまおう。

 対価も用意出来ない身としては、甘えに甘えまくってやる。


 「ですから気をつけてお帰り下さい。」


 ドンボリさんが締めの言葉を口にすると、カラス天狗たちは羽ばたき、ガン無視ライダーとドラゴンウォーリアは別々の方向に向かって…走り出した。


 あれ?

 専用の乗り物とかは出てこないの?


 戦闘の時もそうだったけど、どこかしら残念感が半端ないな変身ヒーローズ。

 あの人たちも、うちの美緒ちゃんみたいな身体強化仕様なんだろうか。


 そんなことを考えていると、あることに気づいて声を掛ける。


 「美緒ちゃん。

  出ておいで。」


 「うん。」


 私の言葉に返事をすると、沙羽ちゃんとは反対の位置。

 沙羽ちゃんと2人で私を挟み込むような場所に美緒ちゃんの姿が現れる。

 魔王軍と戦っている時から、ちゃっかりと姿消し続けていたんだね。


 私の頭の中では恵心となっていたので説明もしなかったのだが…


 ドンボリさんと大豪寺君が凄く驚いた表情になっている。

 …完全に失念していたのかな、うちの美緒ちゃんのこと。


読んでいただけることに感謝を。


叶うなら意見、感想、要望を頂けると嬉しいので、よろしくお願いします。

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