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童歌で言うなら『はないちもんめ』みたいな?

 「なかなか面白い能力だな。

  それなりに役に立ちそうじゃないか。」


 上から目線の言葉と共に舞い降りてくるモンスター。


 有翼生物らしい動きで、背中の翼をバッサバッサと羽ばたかせながら、私の前に降りてきた。


 他の2匹も倣うように、最初のヤツの背後に並んで降り立つ。


 さすがに今は悪態をつく余裕も無い。


 見栄を張って無理に起き上がった手前、今は生存の安堵から乱れた呼吸を整えるので精一杯だった。


 ここ久しくやっていなかった息吹で呼吸を整える。


 素人レベルに理屈だけを詰め込んだ程度の実力だが、この息吹という技に技術は必要ない。


 ただ目一杯、息を吐き出す。

 肺の中にある空気を全て絞り出すように吐き出した後に、大きく深呼吸。


 …何とか呼吸が落ち着いてくれる。

 少なくとも肩で息をする必要は無くなった。


 私は呼吸を整えると娘たちの様子を見ると、2人とも元気一杯で何よりだ。


 むしろ沙羽ちゃんの方は私が必死のダイブを敢行したおかげか、異様にテンションが上がって嬉々としている。


 …投身自殺の一歩手前だったんだけどね。


 普段見せた覚えの無いアクション映画張りの動きが甚く気に入ったようだ。


 「今のところは我が身を守るので精一杯なんですがね。」


 私はモンスターに対して言葉を返すと、そこに問いを繋げる。


 「とりあえず外には出られましたが、これから私たちはどうすればよろしいので?」


 周囲の様子は部屋から出た時よりも悪化していた。

 当然と言えば当然なのだろう。


 迫っていた人影らしきモノは今ではハッキリと異形の軍団だと知れる。


 自分の頭の中にあるファンタジー知識を総動員すれば、ソレっぽい見た目だけでも

 『オーク、ゴブリン、コボルト、ハーピー、トロール…』


 おや?

 よくみると亜人種で構成されているようだ。


 これならコミュニケーション次第では十分に軍隊として機能できる。


 つまりは偶発的なモノでは無く、意図的に集められているということだ。


 …なおさら危険な状況じゃないか、これ。


 「我々の使命は召喚された者を守り連れ帰ること、だ。

  …お前の子ども達に感謝するんだな。

  不本意だが仕方ない。

  ついでに、お前のことも守ってやろう。」


 …これまでの会話で何となくだが、このモンスターたちは私たち親子が召喚された経緯も私が勇者認定外であることも知っているようだ。


 それよりも、そんなに選考外の私が気に入らないのか?


 こちとら一人ぼっちで召喚されたのならともかく、子ども連れ状態では嫌でも優先順位は自分のことよりも子どもの方が上位に来てしまうのだ。

 なのに散々な評価を押しつけられて頭にきているというのに。


 「それは有り難いのですが、あの数を相手に大丈夫なのですか?」


 このモンスターたちが見た目以上の潜在能力を有しているのならともかく、どう考えても数の面で圧倒的に不利だ。


 守りながらの撤退というのは、往々にして追いつかれたりするものだ。


 その心配から内心の怒りを抑えつつの発言であったが、モンスターはすぐに説明をくれる。


「お前から見て右を見ろ。そこに見えいている者は全て味方と認識して構わない。」


 モンスターが顎を上げて私に促してくる。

 促されるままに視線を向けると、私たちがいた建物の向こう側。


 荒れ地に色々と並んでいる、色取り取りの者が。


 俗的な言葉で言うなら『(なにがし)かの勇者たち』だった。


 西洋風の鎧で全身を固めて大剣を抱えている者、似たような鎧で馬に乗っている者、真っ青なマントを靡かせて剣を構えている者、先ほど乱入してきたドラゴンウォーリアとか名乗っていた人たちやガン無視ライダーも混じっている。


 それぞれが思い思いの『勇者』の姿をしている。


 迫り来る軍団の数には到底届かないが、それでも個々人が異能者あるいは超越者であるのなら十分に対抗できそうだ。


 ただ、少し気になる点も。

 …なんか、私の中の記憶にある『妖怪』に属する者もチラホラ見えてもいる。

 妖怪も勇者なのかな?


 そしてモンスターたちは我々親子を抱え始める。


 美緒ちゃんと沙羽ちゃんは脇に抱えられるようにして。


 私は…なんというか、もうお約束レベル。


 右手首を掴まれ吊り下げるような状態。


 どんだけ嫌なの。


 悪意以前に何かしらの根幹がないと、これ程ぞんざいな扱いをされる覚えが無いのだけれど…。


 モンスターたちは飛び立つと勇者軍団の背後に位置する場所に我々を下ろす。

 そこには大豪寺君の姿もあった。


 そして迫り来る異形と勇者の軍団は、距離にして200メートルくらいの位置で対峙することになる。


「神道さん。

 俺たちは戦ってはいけないそうです。

 なんでも、召喚されたばかりの俺たちは力が不安定なので危機に陥り易いとかで」


 大豪寺君の説明を受けると私は納得して頷く。

 美緒ちゃんの時といい、私自身が暴走紛いを実体験したので間違いでは無いのだろう。


 問題があるとすれば、そういう説明こそイの一番にするべきだと思うんだけどね、私は。

 死にかけただけに説明順番の大切さをドンボリさんに説きたい。


 そんなことを悶々と考えていたら、勇者軍団の方から声が上がる。


 「互いに無駄な消耗戦は目に見えている!

  引き上げたまえ魔王軍!」


 …叫んだ人こそドンボリさんだった。


 説明の時とは服装が変わり、装飾の激しい真っ青な西洋風の鎧で身を固め白馬に跨がっている。


 じゃあ、やはり死んだのでは無く幻影だか分身だったんだな。


 とりあえずモンスターたち面々の乱入について疑問が残って入る状態だが、それでも事態は遠慮無く進んでいく。


 異形の軍団。

 以降はドンボリさんの呼称に合わせて『魔王軍』と認識するが、魔王軍から返答の声が聞こえる。


 「無駄などでは無い!

  これ以上、貴様等の勝手を許し無残な犠牲者を増やさないためにも、世界平和のため召喚された者たちは我々魔王軍が保護する!」


 …ちょっと思考が追いつかなくなってきたぞ。


 誰も彼も我々を『守る』って主張されると善悪の区別が難しくなってくるのですが。


 魔王軍を倒すための召喚者じゃないの?

読んでいただけることに感謝を。


叶うなら意見、感想、要望を頂けると嬉しいので、よろしくお願いします。


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