表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/68

29、美少女作家のわがまま

「あの……綾上?」


「鈴にゃん」


「え?」


「鈴にゃん」


 綾上は、じっと俺を見つめて言った。


 意地でも鈴にゃんと呼ばせたいのだろう。


 俺は覚悟を決めて、綾上のリクエストに応えた。


「よ、読幸にゃんは……鈴にゃんのことが、大好きにゃん」


 やっぱ超恥ずかしい。

 俺は俯いてからぼそっと呟くのが精一杯だった。


 そんな俺の腕を、力強く綾上は握った。


「もっと可愛らしく! 猫の手ポーズも付けて!」


 お手本を見せる様に、『にゃん』と拳を握ってポーズを決めた綾上。


 は?












 ……何この綾上。

 いつもこれ以上ないくらい可愛いと思っていたのに、いつもの10倍可愛いんだけど。













「ほら、にゃん♡して?」


 可愛らしく猫パンチを俺に繰り出す綾上。

 俺はその超絶可愛い綾上に免じて、頑張って『にゃん♡』することにした。


「鈴にゃんが大好きにゃん」


 ……頑張っても恥ずかしいものは恥ずかしい。

 俺は鈴にゃんの可愛さと恥ずかしさに身悶えしつつ、ポーズを決めた。



「読幸にゃん、可愛いにゃぁ~♡」


 嬉しそうにニコニコ笑顔を浮かべる綾上。そして、俺の胸に自らの額をぐりぐりと擦り付けた。


「鈴にゃんも、読幸にゃんが大好きにゃ~ん♡」


 俺の背中に手を回して、ぎゅーっと身体を密着させる。


 ……超可愛い。

 綾上の身体の起伏や熱さが、全身で感じ取れて……あー、ヤバい。


「あ、でも読幸にゃんは鈴にゃんよりも鹿島先生の方が好きなんだよね……」


 ……あー、ヤバい。

 綾上が一瞬でダークサイドに堕ちた。


「俺が好きなのは、綾上だけだ」


「また嘘」


「嘘じゃない!」


「……幸那ちゃんのことも好きでしょ?」


 綾上の問いかけに、俺は間髪入れず正直に答えた。


「俺が好きなのは、綾上と幸那ちゃんだけだ!」


「……バカ」


 綾上が俺の胸から額を離し、こちらを上目遣いで見上げてくる。


「ほんとに、鹿島先生じゃなくて、私のことが好きなんだよね?」


「うん、綾上のことが好きだよ」


「それじゃあ……キス、して?」


 綾上は、俺の身体から手を離して、白い太ももの上で手を握りしめる。

 そして、瞳を閉じて唇を軽く突き出して、待っていた。


 ……彼女の唇に目を奪われる。

 どんなに理性で本能を抑えようとも、衝動的に口づけをしたくなってしまうほど、魅力的だ。

 

 すごいシチュエーションだ。

 好きな女の子が、ベッドの上でタオル一枚だけ身に纏い、キスを求めてくる。


 ……俺、本当に綾上のわがままを聞き続けても、我慢できるのだろうか?


「はやく……、キスして」


 欲しがるような、綾上の声。


 俺は無言のまま、瞳を閉じた綾上の両頬に、そっと手をそえた。

 びくり、と綾上は肩を震わせてから、ゆっくりと息を吐いた。


 俺は唇を近づけて、彼女にキスをする。


 ……


 キスを終え、俺と綾上は目を合わせた。


「……バカ」


 顔を真っ赤にし、そして不満そうに、いじけたように綾上は言った。

 キスとは言っても、綾上のおでこにしただけ。それが彼女には、大変不満だったようだ。


「唇にして欲しかったのに……バカぁ」


 今にも泣きだしてしまいそうな弱々しい声で、綾上は呟いている。


「ごめん。唇にキスしたら……絶対我慢できないから」


 俺の言葉を聞いた綾上は、目じりにたまった涙を拭ってから、大きくため息を吐いてから言う。


「じゃあ、頭を撫でて?」


 俺は彼女の言ったとおり、頭を撫でる。

 艶々していて、触り心地の良い髪の毛だ。


「ハグして?」


 彼女の細くて華奢な身体を抱きしめる。


「んっ……」


 熱っぽい呻き声が聞こえる。

 綾上は俺の背中に手を回してから、「好き」と耳元で囁いてから。


「ぎゅー、ってして?」


 と、俺の身体を抱きしめる腕に力を込めて、言う。


 俺もぎゅっと彼女の身体を、強く抱く。


「好き……大好き。結婚したい」と、俺の腕に抱かれながら繰り返す綾上。


 ……もうそろそろ我慢の限界なんですが。


「キスして。……唇にだからね?」


「あの、綾上。今そんなことしたら、マジで、絶対に。我慢、できなくなるから。勘弁してくれ……」


 俺の情けない言葉に、綾上は溜息を吐いた。


「……そしたら、君の好きなところにキスをして?」


 俺はどこだったら正気を保てるか、そして額とは違って彼女が不満を抱かないのはどこか考えてから、首筋にキスをした。


「ひゃっ!」


 綾上が体を大きく震わせてから、俺に視線を向けた。


「……っ! ば、バカぁ……君ってやっぱりエッチだ!」


 狼狽する綾上を見て、確かにエロかったなと反省する。


「そ、そうだな。頬とかの方が、良かったな」


「別に、良いけど。……お返しー♡」


 嬉しそうに言ってから、綾上は俺の頬にキスをして、それから頬ずりをしてくる。

 やべー、超かわいい……。

 俺の理性は吹き飛びそうになるが、何とか正気を取り戻す。 


「ねぇ、次は腕枕して?」


「い、いや……流石にそれは」


「腕枕して!」


 綾上は俺をベッドの上に押し倒し、俺に腕枕を強要する。


「私、これ好き―♡」


 俺の腕の中で満足そうにニヤける綾上を見ると、取り戻したばかりの正気が一瞬でなくなりそうになる。


「大好きな君の腕に、私今、抱かれちゃってるー♡」


 俺の腕の中で笑顔を浮かべる綾上は、そう言ってから首筋にキスをしてきた。


 身体をぴったりと密着させながらのキス、しかも……


「……長いです、綾上さん」


 結構な時間、俺の首筋にキスをしていた。


 時折「ちゅっ」というリップ音が耳に届いて、興奮しすぎて気が狂いそうになる。

 すでに我慢の限界が近い。

 むしろよくここまで我慢ができたなと自分を褒めたいレベル。


 長い長いキスを終え、綾上は俺と目を合わせると、妖艶に微笑んだ。


「好き♡ だーい好き♡ 結婚しよ?」


「……エロいです、綾上」


「む、君の方がエッチだもん!」


 俺の抗議にすぐさま反論する綾上は、視線を違うところに向けた。

 その視線の先には……。


「さっきからすっごく気になってたんだけど、さ」


「ちょっと待って、綾上。分かった、俺の方がエッチだ。だからもう何も言わないでくれ」


 俺の哀願を無視して、綾上は俺の下半身を見ながら、


「……すごいことになってるね」


 と、耳元で囁いた。


「エッチなこと考えてるの?」


 綾上は俺の耳たぶを甘噛みする。


「ちょ、やめっ……」


「やー。やめません♡」


 甘く耳元で囁いてから、綾上は頬を赤く染めて、俺の下半身に手を伸ばす。


「ちょ、まじでそれはまずい、ストッ……」







 残念ながら。

 俺の言葉が聞き届けられることは無かった。








 綾上は、すぐに触れた手を離し、顔を真っ赤にしてから、俯く。


「君がどれだけ我慢できるか意地悪するだけのつもりだったのに、うぅ……。私も、変な気持ちになっちゃったよぅ」



 俺とは一切目を合わさないようにして、小さく呟いた。 


 冷房で冷たい室内だけど、お互いの体温を感じて少し汗ばみ始めた身体。

 バスタオル一枚だけで隠された、綾上の女の子な身体を、俺は今全身で感じている。

 細く華奢なのに、女の子らしい柔らかさがある彼女の身体に、目的をもって触れてしまえば、取り返しがつかなくなってしまいそうだ。


 息を吸うと、綾上の甘い香りが鼻腔をくすぐって……。






 あ、ヤバい。

 もうだめだ。






「ごめん、綾上。今の状況でそんなこと言われたら。もう……我慢できない」



「もう我慢できなくなっちゃったの? 君って、本当にエッチだ。でも、良いよ……」



 俺の腕の中で、真っ赤になる彼女を見て……これまで耐え続けていた俺の理性は、とうとう崩壊することになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

新作投稿!主人公のイケメンを差し置いて、友人キャラの俺がモテまくる!?!
友人キャラの俺がモテまくるわけがないだろ?
ぜひ読んでください(*'ω'*)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ