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20、美少女作家と天使

ピンポーン


 デスクチェアに座って小説を読んでいた私の耳に、インターホンの鳴る音が届いた。

 自室から飛び出し、玄関を開けると――。


「こ、こんにちは。鈴ちゃん……」



 目の前には、天使がいた。



 ……あ、違った!

 天使のように愛らしい笑顔を浮かべる幸那ちゃんがいた。


「いらっしゃい、幸那ちゃん!」


「今日は、よろしくお願いします」


 応えると、上目遣いに私を見てくる幸那ちゃん。

 まだまだ日差しが熱いけど、思わずギュッと抱きしめたくなっちゃうくらい、可愛い。


「うん、こちらこそよろしくね。幸那ちゃんが来てくれるの、とっても楽しみにしてたよ!」


「私も……すごく、楽しみです」


 照れくさそうに、はにかんだ笑みを浮かべる幸那ちゃん。

 すごく……キュンキュンしてしまいます。

 

 なので、私は幸那ちゃんの頭を撫でる。

 頭を撫でられている間、照れくさそうにしつつも、上目遣いでこちらを見ていて。

 やっぱり、とっても可愛い。


「って、ごめんごめん。私の部屋まで案内するね」


「あ、うん。それじゃ、お邪魔します」


 幸那ちゃんは履いていたパンプスを脱いでから、家に上がった。

 廊下を進み、階段を上りながら、私は彼女を自室へと案内する。


「そういえば今日は。お父さんもお母さんも、仕事で帰りは夜になるから。今は二人っきりだよ」


「共働きなんですね。私の家と同じだ」


 幸那ちゃんの反応をみながら、あれ? と思う。

 

 まさか彼に言うよりも早く、幸那ちゃんにこのセリフを言うことになるとは。

 ……って、少しだけ思ったけど!

 彼を私のお家に呼ぶのは、もうちょっと先の話になるだろうし、別に不思議ではないのかも!


 なんてことを考えつつも、すぐに自室の扉の前に到着。


「いらっしゃい、ここが私の部屋だよ」


「わぁ、すごく綺麗に片づけてるんですね!」


「う、うん。そうなんだ」


 普段は資料の本や趣味で読んでいる小説で、お恥ずかしいけど少し散らかっている。

 幸那ちゃんが来ているから、気合いを入れて片づけをしたことは秘密にしなくちゃ。


「ちょっと待っててね!」


 私はそう言って、一階の冷蔵庫から、飲み物とお菓子とコップを用意して、部屋に置く。


「ありがとうございます」


 コップに冷たいお茶を注ぐと、幸那ちゃんがお礼を言う。


「どういたしまして」


 一先ず、お互いにお茶を飲んで一服。

 それから。


「そういえば今日は、何をしますか?」


 幸那ちゃんが私に尋ねかけてきた。

 ……その言葉、待ってました!


「今日は、……映画を見ようと思うの!」


「映画? 何、見るんですか?」


「ふっふーん。これ、一緒に見ようと思って!」


 そう言って私は、机の上からレンタルビデオ店の店名が入った貸出バッグを取る。

 そこから、一本のBDを取り出した。


「ホ、ホラー映画……」


 幸那ちゃんは、ディスクのタイトルを見ただけで怯えた表情になった。


「うん、夏といえば怪談! せっかくだし、一緒に見ようと思ったんだけど……」


 私は、幸那ちゃんとホラーを見ると、反応がとっても可愛いことを聞いていたから、こうして準備をしていたのだ。


「その、私。……すごく怖がりだから、鈴ちゃんに恥ずかしい所見せちゃう……かも」


 顔を赤くして、俯きながら言う幸那ちゃん。

 その様子を見ていると、本当にホラーは苦手で、見たくないのかもしれない、なんて思った。

 ……嫌がる幸那ちゃんに、無理矢理ホラー映画を観せるのは、可哀そう。


「大丈夫! 私がずっと隣にいるから、怖くないよ! ……でも、ホラーが苦手で、どうしても無理そうなら、違うのを観てみよっか」

 

 今度は、恋愛映画のアニメBDを取り出してから言う。

 すると、慌てて幸那ちゃんは口を開いた。


「わ、私……すごく怖がりだけど、怖いものにはすごく興味があって。……だから、鈴ちゃんと一緒だったら、大丈夫だから。ホラー映画観たいです」


 きゅ、と弱々しく私の服の袖をつかみながら、上目遣いに、おねだりするように言う幸那ちゃん。

 ……可愛すぎて、抱きしめたくなったけど、私はその衝動を堪えてから、彼女の頭を撫でる。


「それじゃ、早速みよっか」


 ディスクプレイヤーにセットして、リモコンでテレビの電源を入れてから、再生。


 私と幸那ちゃんは、二人で並んでベッドの上に腰かけて、テレビを見ることに。

 隣に座る幸那ちゃんからふんわりと良い匂いが漂って、なんだかドキドキする。


「わ、早速怖いです……」


 と、私が幸那ちゃんに心を奪われていると、映画は早速恐怖のシーンとなっていた。


「うわ、ホントだ」


 怖いシーンでは、「やっ……」「ひっ」と、幸那ちゃんが怯えた様子を見せる。

 そして、私の腕に、ぎゅっと抱きついてくる。


 ……可愛い。

 どうしよう……可愛い。

 幸那ちゃんが可愛すぎて映画に集中できない問題発生中だ。


「……わ、今のシーン怖すぎ」


 怯えながら呟く幸那ちゃんの頭を、私は掴まれていない方の手で、優しく撫でてあげた。

 幸那ちゃんの髪の毛は、よく手入れがされていて、羨ましくなるくらいサラサラ。


 心地よさそうに目を細める幸那ちゃんに、


「大丈夫だよ、私が隣にいるからね」

 

 と、私は言う。

 幸那ちゃんは顔を真っ赤にして、


「う、うん。……怖がってばっかりなとこ観られちゃって、なんだか恥ずかしいです」


 そう言って、


「恥ずかしがる必要ないよ、大丈夫。……怖がる幸那ちゃん、すっごく可愛いよ?」


 そう言って、私は幸那ちゃんにぴったりとくっつく。


「も、もう。そんなことないです。鈴ちゃんの方が、私よりも綺麗で可愛いのに……」


 幸那ちゃんは、ホラー映画にびくびくしながらも、不満そうに私に言った。


 びくびくしつつも頬を赤く染めて「……鈴ちゃんの方が、可愛いのに」と、繰り返して言う幸那ちゃん。

 私はそんな風に照れくさそうにする幸那ちゃんが愛おしくって、思わず抱きしめていた。


「幸那ちゃん、すっごく可愛いよ!」


 幸那ちゃんは、私の腕の中で耳まで真っ赤にしながら、「鈴ちゃんの方が、可愛いもん……」と繰り返していて。


 私は胸の鼓動の高鳴りを、止めることができなかった。



 ……ホラー映画を観ているはずなのに。

 こんなにほんわか幸せな気持ちになれるなんて、思いもしなかった。


 やっぱり、幸那ちゃんは天使なんだなぁ、と。

 

 改めて私は確信したのだった。 

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新作投稿!主人公のイケメンを差し置いて、友人キャラの俺がモテまくる!?!
友人キャラの俺がモテまくるわけがないだろ?
ぜひ読んでください(*'ω'*)

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