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彼方に飛ばされて  作者: 渡良瀬ワタル
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四面楚歌 その32

 こうも簡単にアジトが分かるとは思わなかった。

金髪少年が大掛かりに配備した人員の苦労を嘲笑うかのように、

ノンビリと表通りに面したマンションに姿を消したのだ。

その無警戒振りには、本当にバンパイアなのかと疑ってしまった。

マンションは外資関係者に人気の富裕層向けの低層集合住宅。

セキュリティーの厳しさが売りで不審者の付け入る隙がない。

実際、外壁や敷地内歩道には防犯カメラが存在を主張している。

 篠沢警部の遣り方は相変わらずシンプルだった。

今回の捜査は極秘と言っても間違いではない。

なのでマンションには表からは入らない。

マンションを管理している会社のサーバーに裏口から入った。

勿論、警視庁曙橋分室資料班がだ。

彼等は裏データの保守管理が主任務だが、

場合に寄っては新規データの取り寄せをも行なう。

篠沢は彼等に予断を持って欲しくないので、

「分かる範囲で結構だ、全居住者のデータが欲しい」と依頼した。

 彼等にはそれだけで充分だった。

管理会社のサーバーから必要な情報を全て漏れなく抜き出した。

そして読みやすく編纂して裏ファイルにアップした。


 マンションにバンパイア騒動以後に新規入居した者はいない。

しかし気になる契約があった。

法人一社がバンパイア騒動直前に契約していたのだ。

書類上は未入居となっているが、

いつでも住めるように電気ガス水道等の手続きは完了していた。

その法人を裏社会検索するが全くヒットしない。

幽霊法人ファイルでも空振り。

一般のネットに繫がるパソコンでも検索をしたが、

似たような名前の法人が無数にあるだけ。

 このマンションを所有する会社も管理する会社も、

一般に知られた会社である。

上場こそしてないが、所謂、信用のある会社。

テレビでCMも流していた。

そんな会社が契約にあたって基礎的な調査を怠るわけがない。

なにしろ、プライバシーを守るセキュリティーが売りなのだ。

内部に膿を抱えては、まさに「獅子身中の虫」。

培った信用が一瞬で崩壊してしまう。

不思議でしようがない。


 ネットでも見つからぬ法人と契約するからには、

それなりの理由がある筈だ。

考えられるのは権力による圧力。

それとも暴力による圧力。

あるいは金力による圧力。

いずれかは分からないが、何かがあることは明白だ。

理由なくして胡散臭い法人と契約を結ぶ筈がない。

幸い住所と電話番号が判明していた。

今も存在しているのかどうかは不明だが、

確認の為に捜査員を走らせることにした。


 加藤と池辺の刑事コンビは覆面パトカーに乗り、

マンションの表玄関を離れた所から監視していた。

金髪少年の出入りが確認されてから二日目の夜だ。

真夜中に運転席のウィンドウをコンコンとノックする音。

長身の男が車道に立って、こちらを覗いていた。

ようく見ると、大分は牟礼寺の住職だった田原龍一ではないか。

相も変わらぬ坊主頭。

剃り上げられた頭が街灯に反射した。

意外な男の出現に加藤と池辺は顔を見合わせた。

顔見知りではあるが、

そもそもは辻斬りの犯人と確信している人物。

証拠がないから追い込めないだけなのだ。

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