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天空城の主はこのオレだ!  作者: 日神 衛
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8、いよいよ転生…回想と覚醒

ご隠居からも声がかかった。

「ではな、クレスよ。暫しの別れじゃ。

今度話すのは15年後じゃな。楽しみにしておるからの。フォフォフォ」


やがてクレスの視界がぼやけてきて、そのうちに真っ黒になり何も見えなくなった………




………15年後………5月1日





クレスはラピス村の外れにある墓地の一角にひっそりと佇むようにある墓石の前におり、花束を墓前に手向けていた。その墓石にはこう記されていた…

“コボルト族リアン、ここに永眠す。享年85歳。”



「リアンばあちゃん。オレ“冒険者”になるよ…。

ばあちゃんに育ててもらった命、助けてもらったこの命大切にするよ。」


クレスの右肩隣りに浮いていたご隠居がしんみりとした声で話かけた。

「クレスよ。すまんかったのう。あの時にワシがもうちょっと注意しておれば…」


「いや、ご隠居。

ご隠居が悪い訳じゃないよ。

記憶が融合したから分かるけど、まさかあの木の陰にあんな強力な毒蛇…フォレストコブラの亜種がいるなんて思わないよ……」


そう言いつつ、クレスは記憶を回想していった………



クレスは捨て子であった。

誰が捨てたのか分からない。

そのときにはまだご隠居も残念ながら覚醒していなかったのであった…


クレスは、ラピス村の村外れの森のそばに一人住むリアンばあさんの家の軒下に捨てられていたのであった…


リアンばあさんは毎日の日課となる。

薬草採集に出かけようと早朝から出かけようと起きたのだが、家の外からかすかな赤子の泣き声が聞こえてきた。


「え?なんだい?なんで赤子の泣き声が外から聞こえてくるんだい」


リアンばあさんは慌てて外に出てみた。

そこには赤子のクレスが産着にくるまれつつかすかに泣いていた。


当時の季節はまだ冬であった。


「可哀そうに、寒かっただろうに…。急いで暖をとって温めてやらないとねえ」


リアンばあさんは、慌てて家の中に戻り赤子のクレスを温めた…



………クレス12歳………


「ばあちゃん、森に行って薬草とってくるね♪」


「クレスや、気を付けて行くんだよう」

と言う声が背後からかかった。



クレスはリアンばあさんに育てられていた。


赤子のクレスはリアンばあさんに助けられて一命を取り留めた。

だが、ご隠居の説明にあった通り、グランルース世界の人族を取り巻く環境が過酷であった。

人族であるという理由なだけでクレスは他の多くの村人のゴブリンやホブゴブリンやオ

―ク族などなら虐げられたのであった。

だが、それをリアンばあさんを始めとして少なくないコボルト族が庇ってくれたので何とか命をつなぐことができたのであった…。


だが、コボルト族は決して上位種族ではない。

むしろ下から数えた方が早い下位種族であった。

それゆえ、生活も苦しく日々の糧を得るのもままならない事もしばしばあった…。


成長していく過程でクレスも未覚醒ながら、自分を取り巻く環境の厳しさを感じ取り物心つく頃から、リアンばあさんの薬草採集の手伝いをするようになった。

最近はリアンばあさんの腰痛も思わしくなく、クレスが代わって薬草採集の一切をこなすようになりつつあった。


「今日も薬草・タンポーポを集めるか。

でもなかなか数を集められないんだよなあ。

1時間頑張ってようやく買い取ってもらえる1束の10本だからなあ。

そんでもってギルドでの買い取り価格が10ザガネだし…朝の8時から夕方6時までぶっ通し10時間かかって頑張ってようやく100ザガネ…。

これってすっげえ少ないと思うのはオレだけなのかあ?

もうちょっと稼げる方法ってないのかなあ?」

そうクレスはぼやきつつ、いつものように森に入りタンポーポの採集を始めるのであった…


午後2時ころ…


「今日はあまり採集できないなあ…。

う~ん、……仕方ないか、本当はあまり行きたくないけどもうちょっと森の奥に行ってみるか…」


クレスはそういうと、普段はあまり行かない森の奥へと入っていった…


1時間ほど経過した頃


「おっ♪ あの木の付近にタンポーポが結構自生しているも~らい♪♪」

そう呟きつつ、クレスは自生しているタンポーポのそばに小走りに寄って行った。


だが、そこには…

「シャーーー」と言う蛇独特の威嚇音と共に小さな蛇が、フォレストコブラがクレスの右足のふくらはぎに嚙みついてきた。


「うわあ~」

クレスは慌てて気が動転して転げまわった。

体を無我夢中で七転八倒させているうちに蛇はクレスの足から離れて茂みの奥へと消えていった。


「な、なんでこんなところに蛇が…。」

そう言いつつ、クレスは立ち上がろうとするが立ちくらみがして片膝をついた。


「こ、これって、ど 毒?」


「は、早く家に帰らなくては… “ハアハア”」


クレスはよろめきつつ、フラフラを帰り途を急いだ。


“キイ~”と扉を開閉する音が響いた。


「おや、クレスかい?」


「ば、ばあちゃん」

そういうクレスはもはや、息も絶え絶えの様子で倒れ込む様に家の中で倒れ込んだ。


「ク、クレスどうしたんだい?」


「ど、毒蛇にかまれたみたい…」

そういうやクレスの記憶は半ば途切れ途切れになっていき意識朦朧となった…



(な、なんだかリアンばあちゃんが叫んでいるなあ…。誰かと話しているようだけど…)


「何とかこの子を、クレスを助けて下さい!」



「そうはいうが、この毒はフォレストコブラの毒、しかも亜種の毒なんですよ。

そうなってくると毒のレベルはレベル5です。

そうなってくると当教会に現在いる僧侶様が使える解毒呪文では回復しないんですよ。

となると残る手段は温存してある“解毒薬5“(以上)でないと回復しないんですよね。

ただ、現在、当教会にある解毒薬は解毒薬3まで。

あとは万が一に備えて温存してある解毒薬8の薬は1本のみです。」


「だ、だったらそのお薬を…」


「え~と、ご存じないかも知れませんが、今言った解毒薬8の通常の平均価格は8千万ザガネするんですよ…」


「は、8千万ザガネ……」

それを聞いたリアンばあさんはヘタヘタと地面にへたりこんだ。


「ですから、その子はもう…諦めた方が…」

そう言ったリアンばあさんの会話の相手は言葉を続けた。


「あ、だが、…ギルドの寿命銀行に行って…、あ、でもコボルト族だしなあ、長生きしても普通は70歳くらいまでだろうし…。

え~と現在の年齢は幾つ?」


それに対してリアンばあさんは

「え?今は60歳です。」


「じゃあ、恐らく無理だと思うけどなあ…。 え~と、総合ギルド管轄の寿命銀行は知ってますか?」


「は、はい…知ってます」


「では寿命銀行では我々住民の寿命を1日分1万ザガネで買い取っているのは知ってますか?」


「……知ってます…」


「だったら、一種の賭けだけどその寿命銀行で寿命を買い取って貰うのも手かもしれない。ただ、コボルトの寿命は長生きしても大体70歳くらいまでらしいよね。

一方、必要なお金は8千万ザガネ。

これは寿命に換算すると約22.2年分に相当するんだよね。

だとすると今の年齢が60歳だから、一気に82歳くらいになるんだよね。

だとすると、まず寿命切れ、老衰死することになると思うよ。

でも、まあ中には稀有な例でもっと長生きするコボルト族も居るらしいから、確実に老衰死するとは限らないけどね…」


「わ、分かりました…」


………オレが朦朧とした意識の中で何とか聞き取れたのがここまでだった…




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