76、懲りないクレスとサアシアの二度目のお仕置き
それを見たクレスはようやく一息を着けたとばかりに“フウ~~”と深呼吸をした。
(あれ?そう言えば、シアとご隠居は?全然今回の騒動の時に動きがなかったな?
どうしたんだろう?)
そう思ったクレスは、入ってきた入口の南の方へ声を掛けた。
「おい、ご隠居!シア!居るんだろう?もう出てきて良いぞ!」
と声を掛けた。
すると、入ってきた入口付近から“すう~~”とご隠居とシアの姿が現れた。
が、その様子は何だかおかしかった。
はたから見るに、ご隠居がなにやら身振り手振りでサアシアに対して懸命にゼスチャーをしている。
そのセズチャーは何やら必死にサアシアの動きを止めようとしているようである。
だが、そのゼスチャーを振り切る様にサアシアがご隠居の前に出て、そのままゆっくりとだが、クレスの方へと進み始めた。
クレスは一瞬“変だなあ?”とは思いながらも、さほど気にせずにサアシアの方へと近づいていった。
「よう、シアどうした……ん……だい?……」
と言おうとしたのだが、サアシアの表情を見たクレスは言葉を続けることができなかった。
それはサアシアの瞳から光りがが消えていたのである。
口元が三日月の弧を描いてほほ笑んでいたのである。
然し、眼は完全に吊り上がっていた。
(あ、あかん!あの表情はダンジョンに潜る前にオレがネコ族の女性に飛びつこうとしたときに見せた表情と同じや…(汗))
「ねえ~~クレスぅ~~~、クレスはどうして同じことを1日に何度もできるのかしらああ~~~(怒)」
サアシアの背後からは、どす黒い炎がメラメラと燃え上がっているのが見えているような幻覚が見えた気がした。
「シ、シア…どうしたのかなあ? 何だか、シアの背後からメラメラと黒い炎が立ち込めている様な気がするんだが、…気の 気のせいだよなあ… アハハハ」
と、クレスは場を和まして誤魔化す様に明るい口調で言った。
するとそれにそれに合わせる様に、サアシアは答えた。
「いいえぇ~~~。これはメラメラじゃないわよぅ~。
だってこれはメラゾーマンだものぅ~~ ウフフフ」
とサアシアは暗い笑みを浮かべた。
(な、何でシアがそのネタを知ってるんだ?! てか、それは今は後回しだ。ここは何とか急場を凌がねば…(汗))
「ねえ~~クレスぅ~~、私は昼間にも言ったはずよねえ~~、浮気は許さないってええ~~~、ウフ、ウフフフ」
「い、いやだなあ。シア。オレは浮気なんてしてないって…、アハ アハハハ(汗)」
すると、サアシアは一瞬で能面の様な無表情となり、“ボソっと“一言呟いた。
「呪縛のお仕置きなの!!(怒)」
途端にクレスの体に黒い縄が巻き付いたかと思うと、即座に赤く燃えだした。
「あっちい~~~~~~~~~~~~~~~」
クレスは自身を焦がす高熱の縄に耐え切れず、その場にて転げ廻り出した。
「あうちっ あち~~~ シア熱いってえ~~~」
「これはお仕置きなの。暫く、そうしていたら良いの」
サアシアは頬を膨らませて、怒りの表情を浮かべていた。
「わ、わかった。わかったってえ~~、シア~~やめてくれよう~~」
「ダメなの。1日で2度目の罪は重たいの!だから今回は1分間はそのまままの」
“ふん”という擬音と共に横を向いたサアシアはクレスの言葉に耳を貸そうとはしなかった。
一分後………
「はあ はあ」
青息吐息のクレスは、やっと終わったお仕置きに脂汗を流していた。
「これに懲りたらもう浮気をしたらダメなの」
“ツン”とばかりに、サアシアはクレスに言い放った。
クレスはヨロヨロと立ち上がると、こう答えた。
「ま、まったく、シア勘弁してくれよ~」
「クレスが悪いの」
「にしたって、さすがにこれは堪らんって…(汗)」
(くぅ~~~~~、浮気?とやらのたんびにこんな目に合うのは割に合わないぜ…。
ふう~~、これはシアの目が届かない場所を何とか見い出して、そこでナンパするのが得策か?)
クレスは想いをはせるのであった。
一方、その様子をみていたご隠居はようやくひと段落?着いたと判断したのか、話しかけてきた。
「全く、クレスの暴走?は困ったモンじゃのう。
そこの女ダークエルフとのトラブルの決着が着くまでは何とかシアの嬢ちゃんを抑えておったが、今後同じ様な事があれば、抑える自信がないぞ。
もちっとクレスも状況を考えてくれ。フォフォ」
「あ、ああご隠居悪かったな」
そう答えたクレスであった。
「フォフォ。それで、そこで倒れ込んでいるダークエルフの連中はどうするのかのう?」
「あ、ああ。連中なあ…。
男のダークエルフのPTに関してはオレがどうこう言える立場にはないなあ」
と倒れている男のダークエルフのPTを見た。
「それと、スルワの姉ちゃんたちの方はなあ…」
暫し思案するような表情を浮かべた後に、こう切り出した。
「確かにオレはスルワに奴隷にされかけたけど、そもそもの騒動の原因はオレの抱き着きからだったからなあ…。
まあ、その事柄と今回オレが勝利してスルワのPTメンバーを拘束して奴隷にできる状況にあるけど、それを見逃すから差し引きゼロのチャラにしよう!
という趣旨の内容の置手紙をしてこのまま、立ち去る事にするわ」
(それに折角出会えた綺麗なお姉さんのダークエルフでしかも乙女!これはいずれ口説き落とすしかないでしょう♪♪)
と内心で懲りずに女好きの妄想を燃え上がらせているクレスであった。
一方、クレスの思惑なぞとんと知らないご隠は…
「まあ、それがある意味一番妥当かも知れんのう…」
と言った。
「では、そういう感じで片付けよう」
そう言って、クレスは内心でワクワク将来の楽しみを思い描きながら、スルワのそばに置手紙をした。
「シア、そろそろ出発するぞ」
とクレスは声を掛けた。
「分かったの」
サアシアもお仕置きをしたからか、機嫌が直っているようである。
そうして、クレス達はその場を後にしたのであった。




