75、綺麗なお姉ちゃんは奴隷商人
その作業が終わったスルワはジロリとクレスを睨みつけた。
「おい!人族のガキィ~、確か、クレスとか言ったなあ…。
今回のこのけじめはどうやってつけてくれるんだい。
あんたのせいで危うくあたしらは奴隷にされかけたんだよぅ~」
「ど、どれい?」
「そうさね。今、縛り上げた連中は冒険者なんだけど同時に奴隷商人も兼ねていたのさ。
そんな連中に危うく捕まりかけたんだよ。一体どう落とし前を付けてくれるんだい?」
それを聞いたクレスはさすがに“ヤバイ”と思った。
「だ、だけどそこはオレが眠らせて…そして、仲間の傷を癒す事で帳消しになったはず…」
そうクレスは抗弁した。
だが…
「はん。なあクレスよう。
あんたが下手に介入しなければ、あたしらは時間こそかかったろうが、確実に勝てる情勢だったんだよ。
そこにあんたが介入したばかりにセコ助とチカラは負わないで済んだ怪我を負って瀕死の重傷にまでなって、痛い思いをした。
あたしも奴隷落ちする恐怖を味わったんだよ。
それを元の状態に戻しただけで済むと思っているのか~~い?(怒)」
鬼気迫るものを感じたクレスはどうしたら良いのか方策に困って、こう尋ね返した。
「だ、だったら、どうしろと?」
それを聞いたスルワは舌なめずりをしてこう答えた。
「な~~に、簡単な事さね。クレス、あんたがお詫びとして奴隷になれば良いのさ」
そう言いつつ、“ジャラン”と先ほど見た鎖を見せた。
「え?それって?まさか、奴隷の鎖、…だったのか?」
「おやあ、知っていたのか~い?そうさ、これは奴隷の鎖さ」
そう言って、スルワは、“ニヤ~~”と邪な笑みを浮かべた。
「よくよく思い出したら、クレスぅ、あんたのような容姿、それも人族だったら、大金持ちのマダムか大貴族が凄い金額で買い取ってくれそうだと言う事を思い出したよ♪
それにクレスぅ~、あんたその背格好だと若いだろ?せいぜい12~13歳くらいだろう。つまり、ショタだね?」
そう言ったスルワの瞳の中にはなぜかドルマークが浮かんで見えた気がしたクレスであった。
「ス、スルワお姉ちゃんは…もしかすると…奴隷商人だったりするのかな?」
クレスは恐る恐る聞いた。
「ア~~ハハハハ 大正解さ。
クレスの様な人族を…まあ人族に限らずに売り払って、稼いでいる奴隷商人さね♪♪」
「ま、おしゃべりはこの位にして、セコ助、チカラ!この人族のガキを捕まえるんだよ!」
それを聞いた二人は
「「アラホラサッサ~」」
と返事して一斉に襲い掛かってきた。
スルワも何やら呪文を唱えて魔法の矢らしきものを発現させて、その矢をクレス目掛けて飛ばしてきた。
一方のクレスもこのまま捕まるつもりは全くなかったので、傘を開いた。
はたから見ると白い傘を差しただけだったので、セコ助とチカラはお構いなしにクレスに突っ込んできて殴りかかろうとした。
そして、同時にスルワの放った魔法の矢がクレスに命中しそうになったその時である。
傘の効果は遺憾なく発揮された。
結果は…
クレスに襲い掛かった二人は悉く弾き飛ばされて8メートル後方にまで吹き飛ばされた。
スルワの放った矢もまるで反射したかの様に、スルワへと戻っていき、スルワに命中した。
すると、スルワは“アババババ”と何かに痺れたかの様に悶絶しつつ倒れた。
3人揃って倒れた事を好機と見たクレスは疾く、竪琴を構えると主にセコ助とチカラを中心に子守歌2を演奏した。
すると二人共後方に吹き飛んでいて倒れ伏していたので、起き上がってクレスを攻撃する余裕がなく、そのまま寝入ってしまった。
そして、スルワはどうやら自身の放った、矢が痺れ効果のある攻撃だったらしく、そのまま痺れており、動けそうには無かった。




