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天空城の主はこのオレだ!  作者: 日神 衛
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72、中立反応のPT。そして、”人族とコボルト族”

その後、クレス達は地下3階へと降りる階段を下っていった。


「降りたは良いが、始めは一本道かよ…。

で、すぐ近くの2分ほど歩いた距離にPT反応が出ているなあ…。

まあ、今の処中立色の黄色だが、オーク達みたく、出会った瞬間に敵対色の赤に変わっちまうかも知れないよなあ…。どうすべえ…」


クレスは暫し思案にくれたが、道順が一本道で避けようがないので、腹をくくって傘を差して防御態勢を整えつつ、進む事にした。


「シア。前方に中立のPT反応がある。

但し、オーク族共の様に一瞬で敵対的に変わる事が考えられる。

シアもそのつもりで準備しておいてくれ!」


「分かったの」

シアは一つ“コクリ”と頷いた。


やや暫く通路を進むと冒険者らしきPTが視界に入ってきた。


そのPTはコボルト族2人、ドワーフ族2人の男性?の4人構成のPTであった。

そのPTも背後から近づくクレス達に気づいた様であった。


「おう。人族とエルフ族のPTか。人族がダンジョンに入ってくるとは珍しいわい。ガハハ」

そう言ったのは、PTのリーダーらしきドワーフの男でバトルアックスを肩に担いで豪快に笑いながらそう言った。


続いて、コボルト族の一人も言葉を綴った。

「人族は弱いはずなのに、ダンジョンのここまで入ってくるのは珍しいと言うより、危ないと思うワン」


もう一人のコボルトもクレス達…特にクレスの恰好を見ながら話しかけてきた。

「装備もローブ?普段着?みたいだし、さすがにダンジョンを甘く見過ぎだと思うワン。

お節介かも知れないが、ダンジョンから帰る事を進めるだワン」


それに呼応するかの様に、もう一人のドワーフの男も話始めた。

「ワシらドワーフ族は、人族の坊主や生意気なエルフのおなごがダンジョンでどうなろうと本来知った事ではないがさすがに年端も行かないガキどもをこのまま何もせずに見逃してダンジョンのどこかで野垂れ死なれては、メシが不味くなるからなあ!


一応、忠告だけはしといてやる。お主らの様なガキどもにはまだダンジョン、取り分けダンジョンマスター争奪戦はまだ早いわ!モンスター共に食われんうちに早々に引き上げんじゃな!」


目の前に居るドワーフたちのPTは口は悪いがクレス達に忠告めいた事を言ってきた。


その忠告めいた言葉を耳にしつつクレスはこっそりと探索スキルで目の前のPTの態度・対応を見ていた。


(先ほどから、索敵スキルの反応は中立の黄色だな…!

て事はこのドワーフたちは本気でオレ達の事を心配して忠告しているのか…)


ドワーフ達が中立であり、クレス達に悪意を持っていないことが分かったのでクレスとしてもこれまでの冒険者たち…ゴブリン三兄弟や先ほどのオーク族とは異なる態度に内心どう対応したら良いのか戸惑っていた…。


が、いつまでもこのままでは埒があかないので、クレスは話始めた。


「あ~、オレ達の種族や恰好をみて心配してくれているようだが、こう見えてもダンジョン改変前には地下5階まで到達しているんだ。だから見かけほどヤワじゃないからよ」



それを聞いたドワーフ達のPTは、少し目を細めてクレス達を観察する様な目つきをした。


そして、リーダーらしきドワーフが、口を開いた。

「まあ、冒険は自己管理・自己責任が鉄則だからな。

本人がそういうのなら、他人のワシがこれ以上言うのもおかしなモノだからな…。

ならば、ワシラはこれ以上何も言うまい。死なぬ様に頑張るのじゃな。

そうだ、見ての通り少し行ったらT字路に突き当たる。お主らはどちらに行くんじゃ?」


それに対して、クレスは、すばやくマップを確認してこう答えた。

「オレ達は右に行くぜ!」


それを聞いたリーダーのドワーフは

「ふむ。ならばワシらは左の通路に行くとするかのう。では達者でな。ガハハ」


豪快に笑いつつ、リーダーのドワーフは、仲間のメンバーに対して

「いつまでも油を売って居らんと出発するぞ!」

そう言って、仲間に発破を掛けつつT字路を左へと進んで行った。


その光景を見送りつつクレスは独り言の様に言った。

「ダンジョンの中でもオレの様な貧弱な人族に絡まないPTも居るんだな…」


「フォフォ。そう毎回毎回違うPTと遭遇する度に絡まれ取ったら、身が持つまい。

それに先ほどのPTにはコボルト族も居ったじゃろう?あのコボルト族は、やけに人族のクレスの事を心配する眼差しで見ておったぞ」


それに答える様にサアシアが言葉を続けた。

「昔から、コボルト族と人族は何故か仲が良かったの。

尤も、昔は人族がコボルト族を庇護していた様な状況だったの…」


「え?昔って千年以上前の大戦の前の話か?」

クレスが驚いた様に、サアシアに質問した。


「そうなの。かつて知性ある種族の中では、コボルト族は一番弱小で虐げられていたの。

それを他の種族は無関心か虐げていたの。

ただ、人族だけはコボルト族を守ったり庇護していたの。

だから、もしかしたら現在コボルト族が人族に優しいのはその恩返しの側面もあるかも知れないと考えられるの」


そう言ったサアシアであったが、何だか自信なさげに、続きを話した。

「……でも、これはシアの勝手な憶測だから、本当の処は分からないの…」


それを聞いたクレスは、少し驚いた様に言った…

「そうか…人族とコボルト族には、そういういきさつがあったのか……」



クレスは暫し感慨深げに思考に耽っていた様であったが、気を取り直したかの様に言った。


「それじゃあ、オレ達も先を急ぐか!」


「分かったの」

そう、サアシアは相槌を打った。





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