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天空城の主はこのオレだ!  作者: 日神 衛
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71、オーク族と寿命の山分け

オーク族の外見は“豚人間”と言えばピッタリ来る。

顔は正に豚であり、体格もブクブク太っており、皮下脂肪が自身の防御力を高める一助となっている。

身長は約170センチほどあり、ガタイもなかなかゴツイものがある。


オーク族は先の大戦で暗黒神側の先兵となり、人族と戦い合った種族である。

かつての大戦時では、人族とオーク族の実力はほぼ互角であった。


人族は体力面ではオーク族に劣ったが、武器を扱う技量は上であり、一般的な人族とオーク族の実力はほぼ拮抗していた。


然し、大戦で負けた人族と勝者のオーク族の実力差は雲泥の差となっていたのである。





そのオーク達がクレス達を認めるとバトルアックスを肩に背負い立ち上がり、獲物を見るような目つきをしつつ発言した。

「おやあ~、こんな処に人族とエルフ族が来たんだな。ブヒ」


「まさかとは思うが、人族のくせにダンジョンマスターを狙って、ここまで潜ってきたのか?ブヒ」


「それはないだろう。人族は貧弱なんだな。

オデの片腕一発のひと振りで吹き飛ぶんだな。ブヒ」


「そ、そんな事よりエルフ族を見ろよ。

あの黄金色の髪、オーク族の女どもではお目にかかれない小顔、はっきりと大きく見開かれた眼、細いくっきりと通った眉毛、す~~と、伸びた鼻筋、小さな口、そして、抜ける様に白い肌、取り分け、細くてチンマリした背格好!正にロリだ。

それも恐らく“乙女”に違いないブヒ。ああ~早く喰いたいぜえ~~、ハアハア」

そのオークは呼吸を荒くしながらサアシアを嘗め回す様にジトリと見ていた。


「はあ~、お前のそのロリ好みとブサイク好みの趣味は分からないんだな。

どうしてあんなガリガリで美形?の顔立ちで欲情できるんだ?

女はやっぱブクブク肥えたオーク族の女に限るぜ!ブヒ♪


それよりも、人族のちんまいガキの方を見ろよ。

ああいう容姿は有閑マダム連中に高値で売れるらしいんだな。

オデ達にはその嗜好は全く理解できないが、その手の有閑マダム…オーク族の婦人やホブゴブリン族の金持ちのメスどもはとても高く買い取ってくれるはずだ。

ここは奴隷の鎖で縛って、売りつけようぜ。ブヒ」


「いあ、オデは、人族を喰いたい。喰ったら力が漲る。

人族を喰ったら強くなれると聞いたんだな。ブヒ。あの人族はオデに食わせろ。ブヒブヒ」



部屋の中に居たオーク族は、それぞれクレス達を見定めるや、勝手に品評会?を開いて己の思いを口にしたのであった。



「どうやら、この目の前のオーク族とは穏やかな交渉は成立のしようがなさそうだな。

オレを喰うって?」

クレスはオーク達を憎々し気に睨んだ。



「目覚める前も、オーク族は殊更、シアたちエルフ族を襲ったの。

襲ってシアたちエルフ族の女性を生殖の苗床にしたの。

エルフ族の容姿はオーク族から見たらとても魅力的だったみたいなの。

その本能?は未だに一部のオーク族の中に脈々と息づいている様なの。

オークは害虫なの。一匹見つけたら50匹は居るの。すぐに駆除が推奨されているの」

サアシアは嫌らしい眼差しでオーク族に見られた事におぞ気を感じて、思わず両腕で自身を抱きすくめて“ブルブル”と身震いした。



(ちいっ、…少しオーク共を接近させ過ぎたぜ!

今から竪琴を構えて演奏するのは少し時間的に厳しいモノがありそうだな!)

そう判断したクレスは、何気ない様子である様に振る舞いんがら、傘を右肩の鎖骨辺りに背負いつつ、“カサの部分”を開いた。


「ああ?いってぇ~傘なんか開いてどうするつもりだ。ブヒヒ」

オークの一人は、怪訝な表情を浮かべつつ、クレスの様子をバカにした様に言い放った。


「ダンジョンの中で雨でも降っている訳でもあるまいに…バッカじゃね~か?!ブヒブヒ」


すると、リーダー格の頭一つ図抜けて大きいガダイのオークが仲間に注意する様に言った。

「いいか、奴隷商人に売る払う事もあり得るんだからな。

多少は手加減しろよ。

人族やエルフ族はオデ達と違って貧弱なんだからな。

アックスで攻撃するにしても刃の部分ではなくてアックスの腹の部分で殴るんだ。

それでもも人族やエルフは貧弱だから、勢いよく吹っ飛ぶと思うがな!

まあ死なない程度に痛めつけてやれ!ブヒブヒ♪」


「オデは人族のオスなんか興味ないんだな!

オデはあのちっこいエルフの娘っ子が欲しいんだな。

今スグににでも押し倒してハアハア良い事してあのエルフっ子を良い声で啼かせてやるんだな。ブヒブヒ」



いい加減、オーク達の嘲りの言葉にムカムカしてきたクレスであった。


「おやあ~?どこかの豚どもが下劣な声でブヒブヒ鳴いているなあ。

相変わらず豚の鳴き声がうるさくて堪んねえなあ…。

アレレェ?目の前に豚の癖に二本足で立っている奇妙な生き物がいるなあ?

豚の出来損ないかあ?ちぇっ、豚の出来損ないに出会うとはオレもついていないなあ。

目が腐りそうだぜ!いやはや参った参った…」

とクレスは、傘を首を傾いで右肩で支えつつ、両手の手のひらを裏返して肩を竦めて“ヤレヤレ”とばかりに大きく左右に首を2~3度振り呆れた表情を浮かべた。



その仕草を見たオーク達は、みるみる顔面が赤くなっていった。


「て、てんめえ~人族の分際でオデ達オーク族をバカにするとは良い度胸だな、ブヒ」


「オデは我慢なんねえ~、一斉に攻撃して足腰立たねえようにしてやるんだな。

おめえら一気にたたむぞぅ~~、ブヒブヒ」


“”おおおお~~~~~~“”


オーク達は掛け声を上げつつ、一斉にクレスに対してアックスで斬りかかってきた。

どうやら、頭に血が上って、手加減の事柄を完全に忘れ去ってしまったようである。


“”おうりゃあ~~~~“”


4つのバトルアックスがクレスの頭上に振り下ろされんとした正にその時、クレスの背負った傘が一瞬白く光った。

その途端4つのアックス全てが見事に弾き返されてオーク族全員の体のいずれかの部位に鋭くめり込んだのである。


或るオークには左肩に、或るオークには腹に、或るオークには右足を吹き飛ばし、リーダーのオークはアックスを持った右腕を吹き飛ばした。


「「「「ぎゃあ~~~、いっ、いってえええ~~~」」」」


手ひどい傷を受けたオーク達4人は大きく後方に弾き飛ばされた先の床でのたうち廻っていた。


(今だな。手傷を負いこちらへの注意も散漫になっている!)

そう判断したクレスは急ぎ竪琴を構えて、子守歌2の演奏を始めた。


“ポロ~~ン♪  ポロ~~ン♪ ポロロ~~ン♪♪”


すると、オーク達は痛みののせいで魔法抵抗力が低くなったのか、それとも元々魔法抵抗力が低かったのか、次々の深い眠りに入っていった。


「よし、ご隠居!裁きのお縄でオーク達を拘束してくれ!」


「フォフォ。任せるがよかろう♪」


ご隠居はすぐさま、“裁きのお縄”を具現化して、オーク達4人をグルグル巻きにして拘束したのであった。


そして、それを見ていたサアシアは一瞬目を細めたかと思うと、小さい声で聴いてきた。

「それが、噂に,聞いた…伝説の…裁きの印籠のご隠居の力…なの?」


「フォフォ。シアの嬢ちゃんは知っておったのか?」


「うん。昔に…今となってはロストロイヤルとなったエルフの私たち一族の中に伝承としてかろうじて残っていた。だから、ご隠居のじいちゃんの事は…少しは知っていたの」


「ふむ。そうであったか…。フォフォ」


「裁きの印籠は、或る意味極めて公平な裁決を下すと耳にしたの。

そして、その裁決は一たび下されると何人なんぴとであろうとも、逆らえないの。

例え、…国王でも…」


(だから、力ある貴族や上層部は裁きの印籠の介入を“厄介極まりない”として、忌避しているの)サアシアは内心で己の思いを付け加えた。



「してクレスよ。こ奴らをどうするつもりかのう?フォフォ」


するとクレスは“ニヤリ”と笑むと言葉を続けた。

「クククッ、決まっているだろう。

きちんと起こして差し上げてこの世との最後のお別れなんだから、オーク族が信じて止まない恐れ多い暗黒神様への懺悔のお時間を提供して上げようって寸法さ♪」


するとクレスは思い出した様に言葉を続けた。

「あ、そうそう。

叩き起こす前に面倒だから連中の資産を残らずはぎ取っておいて欲しい。

ご隠居頼めるか?」


「任せよ。フォフォ」

ご隠居がそう言うと、オーク族の装備品やお金がクレス達の前に積まれた。


「MPも増えた事だし、…一応鑑定しておくか…“鑑定”」


そして、クレスの鑑定の結果…

「4体のオーク族の装備品やポーション全ての買い取り価格は200万ザガネ相当か…。で、所持金は…こっちも200万ザガネくらいか…。〆て400万ザガネとなるのか…。では残るは…」


するとご隠居は、横に居るご隠居にこう話しかけた。

「連中の残り寿命の合計年数は幾ら位かな?」


「フォフォ。こ奴らは大体25歳くらいじゃのう。

で、残りの寿命は一人当たり残りは大体25年じゃのう。

じゃから25年×4人分で100年分を徴収できるのう」


「じゃあ、その寿命を残り3分だけ残して強制徴収してくれ。」

とクレスはご隠居に言った。



「フォフォ。了解じゃのう」

そういうや、ご隠居はオーク達から寿命を強制徴収した。

すると、オーク達はみるみる皮膚からハリが失われ、ヨボヨボのシワだらけの老体となっていった。


「さて、そろそろ起こすか!」

そう言うや、クレスはオーク族4体の顔面を蹴り飛ばした。


“ウギャ”


オーク達は苦し気な呻き声を上げつつ、徐々に覚醒していったようである。

途端に寝入る前の痛みが戻ってきて喚き始めた。


「うぎゃあ~~、い、いってえ~~。一体どうなってやがるんだ~~」


4体のオークは痛みで七転八倒したかった様であるが、裁きのお縄の影響でその場から動き廻る事ができなかった。


「おやおや、痛みのせいで現在の自分たちの状況が分からないようだな♪

お前らお互いの姿をよく見るんだな♪(邪笑)」


クレスは“クククッ”と低く笑いつつ、オーク達に言い放った。


「ウググ、こ、この縄は人族のお前の仕業か?!ブヒ」

そう発言したオークのリーダーは己に巻かれた縄を見て、憎々し気に言った。


「はあ…。何でオレの言う通りにお互いの様子を見るのではなくて、自分の様子をみているんだよ?

ったく、良いか?お前らはもう老衰寸前なんだよ!いいから仲間の姿をよく見るんだな!」


クレスの発言を聞いたオーク族はそこでお互いの姿かたちを確認した。

そこには、ヨボヨボになった老体のオークの姿があった…


「お、お前ら…年寄りになってるぞ、ブヒ」


「そ、そういうリーダーだって、ヨボヨボの年寄りなんだな、ブヒ」


「み、みんな年を取ってヨボヨボの年寄りになっているんだな。

どうなっているんだ?ブヒブヒ」


オーク達は一斉に騒ぎ始めた。


そこにクレスが話始めた。

「お前らはオレやエルフ族のシアを奴隷化。或いは殺して喰おうとしたんだ。

だからオレ達は反撃してお前らを喰ってやる事にしたんだよ。

主に寿命を喰ってやったんだ♪♪

ま、お前らもオレ達を喰おうとしたんだ。

喰われるリスクも当然背負わないとな♪

お前らの寿命はオレがせいぜい役立ててやるから安心して逝くんだな♪」


それを聞いたオーク族たちは赤い顔になったり青い顔になったり、色取りが豊かであったが、いきり立つという点では一緒であった。


「ふ、フザケるな!そんなバカな事があってたまるか!てめえを殺してやるブヒ!」


「畜生!この縄を解きやがれ!オデを自由にしやがれ、ブヒヒ」


クレスはその様子を呆れた様にみていたが、吐き出す様に次の言葉を言った。


「悪態をつくのは勝手だがら、あの世に旅立つ前にせめてもの情けで前らに3分ほど寿命を残して懺悔の時間をくれてやったんだ。

その時間くらい有意義に使って、お前らが強く信仰している暗黒神様とやらのお情けにすがってお祈りでもした方が天国に逝けるんじゃないのかあ?(邪笑)」

そう言うとクレスは“クククッ”と笑った。


「残り3分の寿命だと、懺悔の時間だと?フザケるな!ブヒヒ!!」

と言っていた矢先である。オーク達4体が霧となってみるみる消えて行った。


「こ、こんなところで死ぬなんて~~、ブヒ~~~~」

この最後の断末魔が、消え去ったオーク族の鎮魂歌の如く、最後にダンジョン内に響き渡った…。


その場には、オークの魔石4個とオークの肉4個とオークの牙4組がロドップアイテムとして落ちていた。



「これでひと段落ついたな♪」クレスはあっけらかんとそう言った。


「そうじゃのう。フォフォ」



するとクレスはご隠居にこう切り出した。

「そうだ、オーク達から徴収した寿命はシアと山分けにしての50年分ずつで寿命預金に収めておいてくれ」

とクレスはご隠居にそう言った。


「フォフォ。クレスよ、それでいいのじゃな?」

ご隠居は念を押す様にクレスに問うた。


「ああ。そうしてくれ」

クレスは、はっきりとそう言った。


その話を聞いていたサアシアはビックリした様にクレスとご隠居を見た。


「裁きの印籠って、本当に寿命のコントロールができるのね?

伝説では聞いた事があったけど、単なる都市伝説とばかり思っていたの」

サアシアは“まじまじ“とご隠居を見た。


その後、サアシアはクレスを見た。

「寿命の価値はとても大きいはずなの。

1200年以上前の世界でも寿命はとても価値があったの。

そしてそれは1200年経った現在でも価値の高さは変わらないはずなの。

それをクレスはシアと山分けにすると言うの?」

と、サアシアはクレスを半分鋭い目で、もう半分は信じられない様子で見ていた…


するとクレスはあっけらかんと軽い雰囲気でこう言った。

「はっ、以前にも言っただろう。

PTを組んで冒険に挑んだ場合は、戦利品の山分けは基本だとな♪

もしも、逆の立場だったら、オレもシアに対して遠慮なく同様に山分け要求するからな♪だから気にすんな(笑)」

そう、クレスはごく自然のリアクションで答えた。


「そう分かったの。

もしも、立場が逆の場合には、シアがクレスに戦利品を山分けして渡すの」


(クレスはシアに甘いのか女性に甘いのかそれともPTメンバーに甘いのか分からないけど、とっても好感を持てるの♪ 超優良物件なの♪♪

 あとは、女癖さえ悪くなければ……。 

シアたちエルフのロストロイヤルの女性の伴侶は、悉く女癖が悪いのはイヤな宿命なのかなあ…? そんな宿命イヤなの?! 何とかして常日頃からクレスをストーカ〇、もとい保護して見守る事でクレスの女癖の悪さを防止するしかないの!)

サアシアは改めて、決意で密かに両手に握りこぶしを作りつつ、“ウグググぅ~~”と強い決意を固めるのであった。







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