70、オーク族との初遭遇
「畜生酷い目に遭ったぜ…。それにしても何で傘で呪縛を防げなかったんだろ?」
「フォフォ。それはのう、思うに傘を差しておらんかったからでろうのう…」
「え?どういう事?」
「フォフォ。クレスは先ほどの獣人族のネコ娘に“両腕”で抱き着こうとしたじゃろう?」
「ああ、そうだな」
「つまりはそこじゃよ。傘を差しておらん。傘を使っておらんじゃろう?傘を使っていない以上は傘の効果は発揮できんかったという事だろうのう。フォフォフォ」
それを聞いたクレスは“なるほど!”と頷いた。
「そうかあ…。そういう事かあ…。合点がいったぜ。それにしても傘を差していないと効果を発揮できないなんて、つくづくオレって防御特化の仕様だよなあ。」
クレスは諦観したかの様な眼差しで遠くを見つめるのであった…。
「フォフォ。クレスよ、そろそろ正午のようじゃぞ」
ダンジョンの入口付近が何やら慌ただしく準備を始めるスタッフ?が視界に入った。
「だな!オレ達も潜る準備を始めるか!」
クレスはサアシアにも声をかけた。
「大丈夫なの。もう準備は整っているの」
クレス達の順番は10組目位のようである。
10分おきに、PTが順繰りにダンジョンに入っていった。
「さて、オレ達も降りよう」
そう声をかけて、クレスは先頭切って入っていった。
「相変わらず、中は薄暗いなあ…。ま、定番通りに“暗視+探索+索敵”のスキルを使用してっと…」
そう言いつつクレスはスキルを使用した。
「シアもインフラビジョンを使うの」
サアシアもインフラビジョンを使って視野を確保したようである。
「昨日も、言ったけど、基本方針はできるだけ戦闘や罠を避けて、下に降りる階段を探してダンジョンボスの部屋に到達する事だ。それでいいよなシア?」
「うん。OKなの。先導はクレスにお願いするの。シアは不意の戦闘に備えて精霊魔法をいつでも使える様にしておくの」
「その時は頼むぜ!」
そうクレスはシアに頼んだ。
(ほんと、戦闘面ではシアは有能で頼りになるけど、あの呪縛は困るよなあ…アレじゃあおちおちナンパもできやしないからなあ…)
と、内心でぼやくクレスであった……
クレス達一行は徘徊しているモンスターや先行しているPTと出くわしそうになると、スキルの索敵で迂回したり、罠も事前に察知してサクサクと進んで地下2階へと降りる階段を見つけ出せた。
地下2階に到達したクレス達であった。
「どうクレス?徘徊しているモンスターや先行しているライバルのPTとか近くに居る?」
と、シアは確認してきた。
「そうだな…すぐ近くではないけど、ここから徒歩で約10分ほど離れた場所に先行しているらしきPTがいるな…。下手に遭遇すると面倒だから迂回して進むとしよう」
「分かったの」
サアシアは相槌を打った。
クレス達は30分ほど進んで、地下3階へと降りる階段の場所へと近づいた。
その場所は20-メートル四方の部屋となっており、その部屋の奥に階段がある配置であった。
「まずいな…」
クレスは“ボソっ”と呟いた。
「クレス、どうしたの?」
「階段のある部屋にさきほどからずっと動かずに4体の冒険者らしき反応がある。20分以上動いていない。恐らく、休憩を取っているのか或いは…」
「或いは他の冒険者PTを待ち伏せしているかも知れないのね?」
サアシアは自分の懸念を言った。
「ああ、そういう事だ…」
「戦闘を避ける為に顔や頭を隠す様にローブを被ろうか?なの」
サアシアは、応急的な対処方法を述べた。
「オレもそれを考えたけど、ここはダンジョンの中だからな。動きやすい恰好や視界を広く持ちたいからダンジョンの中で誰か他のPTに出会う度にローブを被るのはあまり得策とは思えなくてな…」
クレスは苦々し気にそう言った。
「そう…。分かったの」
サアシアもクレスの考えに同意する様にそう、答えた。
「いつまで待っていても連中は動かないかも知れない。それにライバルは連中だけではない。もしかしたら既に先行しているPTが居て、もっと先に進んでいるかも知れないからな。行こう!」
「分かったの!」
二人は準備を整えつつ、階段のある部屋の中に入った。
“ガチャ”
クレスはドアを開けた。すると部屋の中には、4体のオーク族が居た。
オーク達はどうやら休憩兼軽い食事をしていた様であった。
そのオーク達がクレス達を見たのであった。
初のオーク族との遭遇であった。




