50、完璧な理想のエルフの女性だった。たった一つの条件を除いて………
そう、たった一つ……
ただ一点の条件だけを除いて………
「し、身長がオレより10センチほど小さい位か…135センチほどか?
身体的特徴も見事に凹凸がなくて、……くっ、完全にお子様だ…」
そこにご隠居が声をかけて来た。
「フォフォ。完全に小学5~6年生位じゃのう。
まあ、ある意味クレスとは身長的にお似合いと言えるがのう」
ご隠居は両手の手のひらを返して肩を竦めつつ“ヤレヤレ”とばかりに首を振りつつ言葉を続けた。
「じゃから、さきほど何かが胡散臭いと思ったので急ぎお前さんを止めようと思い声をかけたのだが、お前さんは愛しのエルフ女性とやらに夢中になっておってワシの言葉に耳を傾けんかったからのう…。自業自得じゃな。フォフォ」
「ぐっ」
クレスはご隠居の言葉に詰まったのであった。
そのエルフの女性、もとい少女は裸であった。
その少女はゆっくりと上半身を起こして起き上がり、徐にその棺?から抜け出してクレスの前に立った。
周囲を確認したそのエルフの少女はクレス以外に誰も居ない事を確認すると、クレスを見据えて口を開いて聞いた。
「問うの!あなたが私の伴侶なの?」
(ここでFA〇Eネタかよ!!)
クレスは思わズッコケそうになるのを堪えつつ、何とか言葉を紡いだ。
「い、いえ人違いだ(汗)」
(オレはロリじゃない、ロリじゃないんだ!
オレの理想のエルフの女性はナイスバディのお姉さんなんだ。
先ほどのご隠居の切羽詰まった言葉や目の前の少女の言動から今のオレの立場が“ひっじょう~~に”ヤバイ事を容易に察知できる。
ここは何とかしらばっくれて、ウヤムヤのうちにさっさとトンズラしよう!)
そう決意したクレスではあったが…
その時に、どこからともなくさきほどの声が聞こえてきた。
「古のエルフの種族、ロストロイヤルエルフ族にして王族の一人、サアシアの伴侶として認定されたのは、サアシアの目の前に居る人物に間違いありません。
名前をクレス、出自はロストロイヤル、種族は人族、男性、最低限の条件をクリアしております。加えて本人・クレスの希望によりエルフの女性、即ち、サアシアを望むと発言しました。
これを受けて所定の手続きである“婚姻の契約書にクレスの自署、左手の手形による押印。最後にサアシアへのキスをして正規の婚姻の手続きを完了しました。
それも以前のサアシアの要望通りに一夫一妻制の離婚禁止の”究極の婚姻契約“を無事に完了した事をここに宣言致します。
これはいかなる効力よりも上位概念となるので破棄・無効化できません」
それを聞いたエルフの女性・サアシアは
“やはりそうだったの♪”とばかりに大きく頷いた。
「やはり間違いではなかったの。貴方が伴侶・旦那様に間違いないの」
(名前も激似のサアシアかよ!)
その会話を聞いていたクレスは内心で突っ込みを入れていた。
一方、サアシアは辺りに聞こえる様に言った。
「サアシアがこの棺に入る前に述べた最後の希望を叶えてくれて感謝するの」
するとさきほどの声がこう答えた。
「いいえ。それが私の存在価値です。
これで長きに渡る役割もようやく終える事ができました。これにて私は消滅します」
「長い事世話になったの。ありがとうなの」
「サアシア。さようなら」
そう言うと、以後は一切声が聞こえなくなった。




