48、転送魔法陣と水晶部屋
「さてさて、いよいよ前回はキャリオンクローラーのせいで確認できなかった隠し扉と隠し部屋のチェックだな♪」
「確か、探索のマップ表示によるとこの隠し部屋の北側にもう一つ別の隠し扉があるんだよな…」
そう独り言ちるクレスは目星をつけた辺りに近づいて調べた。
「うん。ここだな♪」
クレスは壁に腕を伸ばした。
すると“スウ~”と右手が突き抜けた。
“ビンゴ♪”
クレスはニンマリすると奥へと歩いて行った…
隠し扉を抜けた先は幅5メートルほどの通路が100メートルほど続いていた。
「これは今までの隠し扉と隠し部屋とはちょっと趣きが違うなあ…」
クレスはボソッと呟いた。
クレスはゆっくりと通路を歩いていった。
100メートルほど歩いたら、突き当りとなっており、そこは10メートル四方の部屋となっていた。
「部屋?部屋は部屋だけど…これは…??」
「これは魔法陣じゃのう。フォフォフォ」
と、ご隠居が教えた。
部屋の中央にはご隠居の言う“魔法陣”が描かれていた。
「魔法陣?」クレスが思わず聞き返した。
「そうじゃ。魔法陣じゃて。
それもいわゆる六芒星と言われている魔法陣じゃのう。
これはクレスの前世のライトノベルとやらの知識の中にも結構頻繁に出て来た単語じゃのう。フォフォ」
その言葉、六芒星の魔法陣という単語を聞いたクレスは“ハタッ”と何かを思い出したかの様に言った。
「ああ。ラノベでお馴染みの六芒星の魔法陣か。
確か円の中に六角形の星が描かれているんだよな」
そう言いつつ、クレスは目の前の床に描かれている魔法陣を指さした。
「フォフォ。そうじゃ。それもこの、魔法陣はどうやら転送陣の様じゃのう」
「転送陣?」
「そう、転送陣じゃのう」
そう言うとご隠居は暫し、床に描かれている魔法陣を観察した。
「う~~む。どうにも詳しい事はワシにも分からんのう。
これはかなり古い年式の魔法陣のようじゃのう」
「古い?どの位?」クレスは聞き返した。
「そうさのう。ほぼ千年以上前の古い年式・形式の魔法陣である事は何とか分かるがそれ以上は、ところどころ文字が掠れてしまっており、判読するのは難しいのう…」
「そうかあ…」
クレスは暫し悩んだ。
「なあご隠居。
この魔法陣って罠とかの可能性はないかなあ?
例えば、空中1万メートル上空に転送するとか。或いは逆に地中1万メートルに転送するとか?」
クレスは罠の可能性について言及した。
「ふ~~む。…ワシの見た処そういう罠の可能性のある魔法陣には見えんのう」
「そうか…」
それを聞いたクレスはまたも悩み始めた。
(どうすっかなあ…。
恐らく、この先に何がしらの手がかりかヒントがある気がするんだよなあ…。
………ええ~い。“虎穴に入らずば虎児を得ず!”とも言うしな!
ここは一丁賭けてみるか!!)
「ご隠居!少なくとも罠の可能性は無いとご隠居は判断したんだよな?」
「フォフォ。そうじゃ」
「よし、分かった」
そう言うと、クレスは意を決したかの様に魔法陣の中に歩みを進めた。
………魔法陣の中に入ったクレスではあったが何も変化が起こらなかった…
「なあご隠居。これって本当に転送魔法陣?」
「見立てではそのはずなのだがのう…はて?」
ご隠居も戸惑っていた。
すると例のコンピュータ声が聞こえてきた。
「個別指令、予備条件を完了です。これより次の段階へと進めます」
と聞こえてきた。
その途端、魔法陣が輝き出した。
「ご隠居。これって?」
「ワシの見立て通り転送魔法陣じゃよ。気を失わない様にしっかりする様にのう」
数舜後、クレスとご隠居の姿は、掻き消えた…
“フッ”
「ここは?」
「どうやら、別の場所の様じゃのう。フォフォ」
クレスは、先ほどとほぼ似通った魔法陣の上に立っていた。
ただ、辺りの風景はかなり違っていたのであった。
クレスは空中?らしき場所にそのまま佇んでいる。
周囲はどうやら半径50メートル位ありそうな円形の空間が広がっている。
その先の境界は水晶のような壁で遮られていた。
ただ、その水晶の壁が曇りガラス様になっておりその先の景色の識別が不可能であった。
「どうやらここは、巨大な水晶の中みたいだな…」
「そのようじゃのう。フォフォ」
「それにしては何だか結構明るいよな。
何だか境界となっている水晶が光っているせいかもな」
クレスの言う通り、周囲は薄ぼんやりと周囲を観察できるくらいの光量があった。
周囲を観察できる事を確認するとクレスは視界を周囲に走らせた。




