45、これが噂の”防御力の高い傘”
7月5日の午後6時頃…
滝行をしたクレスの耳元にファンファーレの音が響いてきた。
そして、コンピュータ声で
「個別指令完了。クレスはアイテム“防御効果の高い「傘」”を入手しました♪」
と聞こえてきた。
そしてその場に1本の真っ白い傘がクレスの目の前に浮遊していた。
と同時に詳細が見えてきた。
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詳細
“〇姫仮面の傘”の効能:極めて防御効果の高い「傘」である。
この傘は個別指令を完了した本人のみ触れる。
また、他の性能も秘めているやも知れないと言われている…。
謂れ:かつて、難攻不落を誇った魔導研究所があった。
その研究所はたった一発で国を亡ぼす太陽を召喚すると言う伝説の“元始の炎“の
魔導攻撃の直撃を受けても耐えられる強固な防壁に守られていた。
その研究所を擁する国の敵対国がその研究所の研究成果を奪わんと欲し、伝説の青竜…ブルーアイズホワイ〇ドラゴンの魔石10個を各地の王宮の宝物庫や名だたるコレクターから強奪したと言われている。
そして、その強奪した一味のリーダーの名が、“●姫仮面”と言われている。
その●姫仮面は一本の傘をとても愛用していた。
その●姫仮面の目的は、10個の青竜の魔石を揃える事で使い捨てではあるが、極めて強力な兵器を使用しようと目論んでいた。
つまり、その強奪した巨大な青竜の魔石10個を用いて一発限りの超強力な魔導砲を準備して、件の研究所の防壁を突き破ろうとした。
そして、実際にその魔導砲(名称はブルーアイズ魔石砲とか言われている)を用いて研究の防壁を突き崩さんとしたまさにその時に研究所を守るべく、研究所の所属する国の最精鋭騎士団が登場した。
彼らは、5人の精鋭騎士団であった。
その騎士団は●姫仮面を倒さんと様々な攻撃を怒涛の如く繰り広げた。
いつもであれば5人の精鋭騎士団による連携攻撃による魔法攻撃・近接攻撃を織り交ぜた攻撃の前にはいかなる存在も荒野に屍を晒すのが常であった。
然し、●姫仮面はとても強かった。
いや、●姫仮面が強かったのではない。
より正確に言うと●姫仮面の愛用する傘の防御効果が極めて高かったのである。
精鋭騎士団のいかなる攻撃も跳ね返され手も足も出なかった精鋭騎士団はとうとう業を煮やしてあろうことか本来は青竜の魔石の回収任務も負っていたにも関わず、精鋭騎士団のメンバーの一人紅一点の女性騎士が、●姫仮面のスキをついて何とブルーアイズ魔石砲を操作して●姫仮面に砲撃したのである。
攻撃は見事●姫仮面に命中した。
命中したのだが、●姫仮面は生きてきた。
つまり、ブルーアイズ魔石砲と●姫仮面の傘は互角、相撃ちとなったのである。
愛用の傘を失った●姫仮面は、精鋭騎士団に討ち取られたのであった。
余談ではあるが、ブルーアイズ魔石砲は、“元始の炎”の直撃にも耐える防壁をも突破できるいわば究極の使い捨ての兵器であった。
が、その究極の兵器と互角の防御効果を誇る“傘”は後に究極の防御武器として伝説として知られる様になっていった…
この伝説の「傘」と同一の存在と言われているのが、この「傘」である。
信じるか信じないかは“あなた次第”である。
以上
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この説明文を読んだクレスは大絶叫した。
「はああああ~~~~? なんだこれえ~~」
「もしかしてアレか?滝行だからそれを防げる様に“傘”ってか?ダジャレのつもりかよ!!」
クレスと同様に説明文を読んだご隠居も顔と大いに引き攣らせつつ、言葉を紡いだ…
「のう、クレスよぅ…!これって…」
するとクレスもどんよりとした眼をご隠居に向けつつ
「ああ、そうだよ、ご隠居も分かっただろう?」
「まあのう。伊達にクレスとは前世での知識を共有しておらんからのう…」
「あの謂れの説明文ってどう考えても前世で子供のころに再放送で見た特撮の戦隊モノで出てきた敵の怪人の持っていた“傘”だよなあ?」
「そうじゃのう。確か、戦隊モノの設定では…
怪人側が研究所への潜入を企んで、核兵器の●爆の直撃にも耐えられる壁を突破しようとして、各地から天然の100カラットのブルーダイヤを10個強奪して、使い捨ての兵器のブルーダイヤモンドビ〇ム砲で攻撃しようとしたんじゃのう。
一方、そのダイヤの奪還を任務とした5人の戦隊メンバーが、●姫仮面に果敢に攻撃を仕掛けたのだが、本来であれば怪人にトドメを刺す際に使用するジェットストリ〇ムアタックも跳ね返される始末じゃったのう。
で、業を煮やした紅一点の女性戦隊メンバーがブルーダイヤモンドビ〇ム砲を使って、●姫仮面を攻撃して命中させて、●姫仮面の傘は消滅して、同時に100カラットのブルーダイヤ10個も消失してしまうという、ある意味究極の任務失敗を戦隊メンバーが犯したとんでもない設定じゃったのう…(苦笑)」
クレスはご隠居の話を耳にしつつ空中に現れた画面で今回の指令の完了にて入手したアイテム“傘”の説明文をぼんやりと読んでいた。
「確かに強力そうな防御兵器だと思うけど、最初に受諾したときの個別指令には“防御効果の高い「盾」”と記述されていたはずなのに、実際に完了したら“防御効果の高い「傘」”に記述が変化しているし…。
一体どうなっているのやら……皆目見当がつかないぜ……」
そう言うとクレスは両手の手のひらを返して“ヤレヤレ”と肩を竦めた…。
「然し、これはこれでお前さんにとっては予想外の僥倖だったのはなかろうかのう?フォフォフォ」
と、ご隠居は底意地の悪そうな笑みをニヤリと浮かべていた。
“ギクッ”
クレスは何かの図星を突かれた様に一瞬体を震わせた。
「な、なんの事だよ…」
「フォフォ。隠すでない。
前世のお前さんが小さい頃に例の戦隊モノの再放送を見たときにアノ“傘”をしきりに欲しがって、お前さんの親御さんに強請って駄々をこねて困らせておったではないか…(ニヤリ)」
それを聞いたクレスは顔を赤らめて慌てて否定した。
「そ、それは違う!
あ、あのときは少し…そう、ほんの少し“あんな傘があればなあ…交通事故に遭っても大丈夫そうだなあ?!”とか思って少しだけ欲しいかも?!とか思っただけだ。
そ、そんな駄々なんてこねていないぞ!!(汗)」
「フォフォフォ。まあそういう事にしておくとするかのう」
ご隠居は尚もニヤリと邪笑を浮かべていた…
「そ、そうそう…そういう事さ」(汗)




