39、ゴブリン三兄弟の末路
クレスは、三兄弟を蹴飛ばして、叩き起こした。
「な、なんだゴブゴブゴブ」
「痛いでヤスよ。ゴブゴブ」
「う~~ん、ま、まだ眠いんだな。ゴブ」
と三兄弟は寝起きの反応をしていたが、次第に状況が朧気ながら分かってきたようである。
「な、なんだこの縄は?ゴブゴブゴブ」
「さっさと外さないとひどい目に合わせてやるでヤス。ゴブゴブ」
「締め付けが、い、痛いんだな。緩めるだゴブ」
その様子を見ていたクレスは、呆れる様に“ヤレヤレ”と首を振った。
「お前たち、今の状況が分かっているのか?」
するとスネ次郎がクレスを睨みつける様に言った。
「人族のお前がゴブリン族である僕たちを拘束しているって事でヤス。さっさと解かないと村に戻ったら、他のボブリン族にもっとひどい目に合わせる様に頼んでやるから覚悟しろでヤスよ。ゴブゴブ」
「ほう。村に戻ったら他のゴブリン族がオレをひどい目にねえ?」
とクレスはニヤニヤしながら言った。
「そうでヤス。だからさっさとこの縄を解くでヤス。
そしたら、少しだけ痛めつけて今度はお前を奴隷を鎖で拘束するだけで勘弁してやるでヤス。だからさっさとこの縄を解くでヤス。ゴブゴブ」
「へえ~~。この状況でオレを拘束して奴隷にねえ…。そりゃまた大したモンだぜ♪」
クレスは思わず笑いだしてしまった。
“ハッハッハッハ”
「いやあ、スネ次郎よ。お前ってホントに笑わせてくれるな。
じゃあ聞くがこの状況でどうやって村のゴブリン族がこの状況を知るって言うだ?」
「そんなの分かり切っているでヤス。
僕たちが村に戻ったら知らせたら簡単でヤス。ゴブゴブ」
「ハッハッハ。スネ次郎、お前って本当に笑わせてくれるなあ。
この状況でどうやって村のゴブリン族が知るんだよ?」
「だからクレス、お前が僕たちを縛っている縄を解いて…」
するとクレスは思わず叫んだ。
「お前バカだろう?何でオレがお前らゴブリン三兄弟の縄を解かなければならないんだ?」
「何でって、人族のお前が偉大なるゴブリン族を縛ったりしたら、報復するに決まっているからでヤス。ゴブゴブ」
「だからあ~、どうやって村のゴブリン族がお前らが縛られている事を知るんだよ?
もしかして、本当にオレが縄を解くとでも思っているのか?」
「当然でヤスよ。それともこいのままずっと拘束しておくつもりでヤスか?ゴブゴブ」
クレスは思わず“はあ~~”とため息をついた。
「ゴブリン族ってここまでバカだったのか?
それともこのゴブリン三兄弟が特にバカなだけなのか?」
「な、なんだとう?どういう意味でヤスか?ゴブゴブ」
「お前らはここで死ぬんだよ」
それを聞いたゴブリン三兄弟はいきり立った。
「どういうつもりだ。クレス!ゴブゴブゴブ」
「僕たちゴブリン族を人族のお前が殺す?冗談は大概にするでヤスよ。ゴブゴブ」
「そ、そうなんだな。いいかげんこの縄を解くんだな。ゴブ」
「はあ~~。いいか!
前回お前らはこのオレを殺そうとしたり、今回は奴隷にして売り捌こうとした。
だっから、逆にオレがお前らを殺したり、奴隷にして売っても何も問題あるまい!」
「なにお~う、人族の癖に何一丁前にオレ達と同じ事ができると思っているんだ。
人族のクレスは、オレ達暗黒神の僕たるゴブリン族の為に奉仕すればいいんだ。ゴブゴブゴブ」
「クレスの癖に生意気でヤス。ジャイゴン兄貴の言う通りでヤス。ゴブゴブ」
「そ、そうなんだな。ゴブ」
「はあ~~、ダメだこりゃ」
クレスは大きなため息をついた。
「もう何を言っても無駄な気がしてきた。まずはお前らの財産を頂く!」
「ご隠居頼むぜ!」
「任せるがよかろう。フォフォ」
そう言うと、クレスとゴブリン三兄弟のギルドカードがそれぞれの目の前に表示された。
「え?オレ達は目の前に表示されるように思っていなかったぞ。ゴブゴブゴブ」
「そうでヤスよ。ゴブゴブ」
「い、一体なんで?ゴブ」
そう言っていたが、ゴブリン三兄弟のギルド銀行預金の残金がゼロとなった。
その一方でクレスの銀行預金が増加された。
「お、オレの金がなくなったあ~~~、オレの金はどこに行ったゴブか~?ゴブゴブゴブ」
「僕の預金も消えたでヤスよ。ゴブゴブ」
「ぼ、ぼくのお金も全部消えたよう~~。ゴブ(涙)」
その様子を見ていたクレスは“クククッ”と最初は低い声で笑っていたが、次第に大声で笑い始めた。
“ア~~ハハハ”
「いいか、お前らの金は全てオレが頂いた。いわゆる“強制執行“と言うヤツだぜ!」
それを聞いたゴブリン三兄弟は“まさか?!”と言う表情なのか“嘘に決まっている!”と言う様な表情を織り交ぜているような顔をしていた。
「そ、そんなバカな事があるか!ギルドカードの金には決して手出しできないはずだゴブ」
ジャイゴンはこの出来事を否定する様に大声で喚いた。
「ほう~、ではお前らのカードから預金が減った事をどう説明するつもりだ?」
クレスはニヤニヤしながら、言い放った。
「そ、それは何かギルドかギルドカードにでもトラブルが発生したからでヤスよ。ゴブゴブ」
「くくく、随分とご都合主義的に解釈するんだな?!
では、この預金の消滅はオレが関与していないって事か?」
「そ、そうだそうに決まっているでヤスよ。ゴブゴブ」
「ふ~~ん…そうかあ。では今度はどう反応するかな?」
そう言うとクレスはご隠居に話しかけた。
『今度は、このゴブリン三兄弟の所持品を残らず回収してくれ』
『フォフォ。よかろう。言われんでも強制執行するつもりじゃったからのう』
ご隠居はそう言うや否や、ゴブリン三兄弟の所持品を全て回収した。
武器・防具・ポーションの類を全てをクレスの前の前に積み上げた。
それを見たゴブリン三兄弟は、始めは何が起こったのが理解できなかった。
「え?アレってオレのロングソードか?いやもっとある。アレはオレの防具の革鎧か?ゴブゴブゴブ」
「あれは僕の武器の手斧でヤスよゴブゴブ」
「あ、あれは、ぼくのショートソードだ。ゴブ」
三兄弟は混乱していた。
「ふふふ。武器や防具だけではないぞ。
お前の所持品は全て回収した。
ポーションやモンスターのドロップアイテムなどの全てをな♪」
「それに今のお前らの姿を見ろ!丸裸だぜ♪」
それを聞いたゴブリン三兄弟は慌てて自分の恰好を確認した。
「お、オレの装備が…ない。それどころか丸裸だ…。これはウソだゴブゴブゴブ」
「何で丸裸でヤスか?おかしいでヤスよゴブゴブ」
「は、裸…うわ~~ん、しずリンちゃんの前に恥ずかしくて出られないよう。ゴブ」
クレスはその様子を悦に浸りながら“クククッ”と笑っていた。
「う~~ん。残念ながらお前らへの慰謝料はそれだけでは全然足りないんだよなあ…。
お前らはこのオレを殺そうとしたり、奴隷にしようと襲ってきたのだからな!」
「ふ、フザケルな。オレの武器や防具を返しやがれ、ゴブゴブゴブ」
「そうでヤスよ。さっさと返すでヤスよ。ゴブゴブ」
「は、裸はイヤだよう。早く返せゴブ」




