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天空城の主はこのオレだ!  作者: 日神 衛
36/88

36、初の地下3階への挑戦と子守歌2の効果

「いよいよ、地下3階へと初挑戦か…」


クレスは地下1階と地下2階は戦闘や罠を回避してショートカットして、地下3階へと急いだのであった。


そうしてクレスは地下3階へ入場できる扉の前に立っており、その重そうな金属製の扉が“ギギギギィ~~”重い音を軋ませつつゆっくりと開いていった。


「だけど、このダンジョンの入場料の出費ってほんと痛いよなあ…。なあご隠居?」


「そうさのう。さすがに各階層に潜る旅に入場料金を徴収されるのは痛いであろうのう…」


「だよなあ。

地下1階が5千ザガネ、地下2階が1万ザガネ、そして、この地下3階が1万5千ザガネ、合計で3万ザガネの出費だからなあ…。

思わずため息が出ちまうぜ…」

 そう言ってクレスは、盛大に嘆息したのであった。


「ただ、これまでの地下1階と地下2階の戦利品を鑑みると見返りもそれ相応に期待できるから、上手い事隠し部屋とかでお宝を頂戴できれば、収支は黒字にできそうだからな!なんとか頑張って見るぜ♪」

そう言いつつ、クレスは自身に気合を入れる様に“フン!”と一呼吸をしたのであった。


「さっきも地下1階で探索と索敵と暗視のスキルを使ったけど、念の為、もう一度使っておくか!」


クレスは再びスキルの“探索”・“索敵”・“暗視”を使用した。


そして、クレスは半透明のマップで状況を確認して探索する目星をつけた。


「そうだなあ…。

隠し部屋はここからほぼ北東の方角に5分ほど進んだ処にあるな。ならば、まずはそこから調べるとするか…」


クレスは小さな声で独り言ちると、徘徊しているモンスターや罠を迂回しつつ、目撃の隠し部屋まで移動したのであった。


隠し扉の前…


「ここか…」

そういうクレスの表情は優れなかった。


「フォフォ。どうしたのかのう。クレスよ?」


「ご隠居は気づかなかったかな?

マップ上に敵モンスターの反応がこの隠し扉を通して表示されているんだよ。

一瞬、マップ上で位置がずれて表示されているのかも知れないとも思ったけど、やっぱ表示の通りだったんだよな」


「ほう。つまり、隠し部屋にモンスターが居るという事かのう?」


「うん。そうなるんだよなあ。

今までは隠し部屋にはモンスターが居なかったんだよなあ。

こういう事は初めてだよな…」

そういうとクレスは少し困惑しているようであった。


「フォフォ。そうは言っても対処方法は通常部屋にいた場合のモンスターとさほど変わらないと思うが、クレスの考えはどうかのう?」


「い、いや。オレもそう思うよ。

ただちょっと初めての出来事で少し戸惑っただけさ…」

そう言うと、クレスは左腕に竪琴を用意して子守歌の発動の準備をしていた。


「さて、覚悟を決めて部屋に入るか!」


クレスは隠し扉を抜けて、隠し部屋に入って行った。


そこは、15メートル四方の部屋であり、中央に宝箱が安置されていた。


然し、問題はそんな事ではなかった…


(大蜘蛛が3体いるな。

凡そのサイズは3メートル位か…。

それが地上に2体。

天井に1体居る。かなり大きいな…。

然も、部屋にネット状の蜘蛛の巣が張り巡らされている。

これだけでもかなり厄介な状況だ)


クレスはゴクリと唾を飲み込み、かなり緊張した表情を浮かべた。

(ただ、問題はそれではない。

問題なのは、大蜘蛛も蜘蛛の巣の糸も本来であれば“見えない”と言う事だ…)


(オレはたまたま“索敵”スキルを使用していたから敵の反応や存在を察知できたに過ぎない。

本来ならば、この隠し部屋を見つけた冒険者は、確実にこの大蜘蛛の餌食になっていたと言う事だ…)


(これは、どう対処すべきか…)


『クレスよ!これはちとまずいのでは?』


『ご隠居!今回はしっかりとオレとリンクしてマップを見てくれた様だな』


『ふむ。このモンスターは可成り厄介じゃのう』


『ご隠居もそう思うか?

ヤツらオレの存在に気づいているはずなのに、微動だにしない。

これってどう考えてみても、自分自身の存在と蜘蛛の糸の存在が他者には見えていないと理解しているな!?』


『その様じゃのう。してどうするつもりだ。クレスよ?』


『まずは、いつも通りに子守歌2で眠らせている。

そして成功したら、次の手を考えてみる』


『なるほどのう』

ご隠居は相槌を打った。


『では、やるぜ!』


クレスは竪琴を構えて、子守歌2を使った…


“ポロ~~ン♪ ポロ~~ンポロ~~ン♪”


すると、天井に張り付いていた1体の大蜘蛛は床に落ちて来た。

床に居た2体の大蜘蛛は蜘蛛の糸の上に乗せていた8本の脚を“ダラ~ン”と伸ばして、胴体の腹の部分を床に接着させたのであった。


『どうやら、3体とも寝入った様だな』


『その様じゃのう。してクレスよ、この後はどうするのかのう?』


『幸いな事に大蜘蛛3体とも、部屋の出入り口のそばに居る。本来ならば、部屋に張り巡らされている蜘蛛の糸をどうにかしないとならなかったけど、今回は大蜘蛛に近寄って糸に触れずにトドメを刺せそうだ。だから、それで何とかやってみるぜ!』


そう言うやクレスは、ゆっくりと静かに音をたてない様に注意しつつ大蜘蛛一体ずつに接近していった。


そうしてクレスは、手槍で大蜘蛛の頭の中心を首筋の背後か斜め突きして脳?に達する様に突いて何とか3体の大蜘蛛を即死させていった。


「っふう~。やっと終わったか。緊張したぜ」


「お疲れじゃったのう。フォフォ」


すると大蜘蛛のドロップアイテムが発生した。


「魔石と蜘蛛の牙か…。これだけ苦労したんだ。

貴重な戦利品だからな。きっちり頂いておくとするか♪」

クレスは嬉しそうに“収納空間”にしまった。


「問題は、糸と部屋の中央にある宝箱だよなあ…。

切断するにしても粘着性が有りそうだしなあ…」


クレスは“ああでもない、こうでもない”とブツブツと考えていたが、やがて一つの結論に達した様である。


「一種の賭けだが、糸にランタン用の油を少しかけてみて燃やしてみよう。

上手く行けば糸だけが延焼してくれるかも知れない」


「そう上手く行くかのう?フォフォ」


「ご隠居。そうは言うがこの糸を力押しで突破しようとしても絡み取られて身動きできなくなるのが関の山だと思うぜ。

だったら、まだしても燃やす事に賭けた方が良いと思うぜ!」


「なるほどのう。フォフォ」


「では、やるか!」


クレスは、ランタン用の油を蜘蛛の糸の一部にかけた。

その次に何とか火種を作って引火させた。

すると…


引火した火は、瞬く間に糸に広がりあっという間に部屋中の糸に延焼して燃やしたのであった。


「へえ。かなり可燃性の高い糸だったんだなあ…。

あっと言う間に燃えてすぐに燃え尽きてしまったぜ」


「思った以上に上手く行った様じゃのう。フォフォ」


「ああ。これで宝箱を開けられる」


クレスは周囲に罠がない事を確認済みだったので、宝箱の近くに寄った。


「宝箱にも罠がなくて、鍵も施錠されておらず!か…。

ある意味大蜘蛛が番犬代わりだったと言えるだろうなあ」


「では、開けてみるか…」


クレスは宝箱を開けてみた。


「ほほう。中身は、ロングソードに巻物か?後はポーションが6本か…」


「フォフォ。戦利品としてはなかなかだと思うのう」


「だな。ご隠居♪」

クレスも嬉しそうに同意した。


「よし。次のお宝を探すか!」

そう言ってクレスは今いる隠し部屋を後にした…


「さて、次は、ここからだと北の方向に隠し部屋がるが、運悪く徘徊しているモンスターが居るなあ…。

仕方ないから迂回して次の隠し部屋に向かうか…」

と、クレスは呟きつつ次の隠し部屋へと向かった。


…歩くこと10分…


「ここか…。それにしてもまたもや、部屋の中に敵モンスターの索敵反応があるなあ…。この地下3階って隠し部屋にモンスターがいるのって、標準設定なのかあ?」

そう言って、クレスは“ヤレヤレ”とばかりに首を振った。


「まあ仕方ない。いつもの段取りで対応するか!」


クレスは隠し扉をくぐって中に入っていった。


部屋は15メートル四方で中央には宝箱が安置されている。


『5体いるな…』


部屋の中には5匹の大毒蛾が部屋の中を舞っていた。

大毒蛾のサイズは、2.5メートルほどである。

5匹もの大きな蛾が羽ばたいているので部屋中に鱗粉が撒き散らされている。


『クレスよ。この大量の鱗粉は毒じゃのう』


『毒?これ全部が?』


『そう。毒じゃのう。然も、毒性2の毒じゃのう』


『毒性2?それって強いのかな?』


『今まで出会ってきたモンスターの中で毒持ちの中では頭一つ抜けている毒じゃのう。

無論、クレスが12歳の時に出会って噛まれたフォレストコブラの亜種は別じゃのう。

アレの毒性は5レベルとこの辺りでは滅多にお目かかれないほどの毒性持ちのモンスターじゃったからのう』


『そう言えば、オレの状態異常耐性の毒レベル5って、もしかして以前に毒性5の毒に冒されたから?』


『恐らくそうじゃろうのう。

あの時は大変じゃったが、それ故に現在の毒耐性5レベルじゃからのう。

ある意味助かったと言えようのう』


『そうか。だからこの鱗粉にも平気でいられるのか…』

クレスは何だか複雑な表情を浮かべた。


『基本的に大毒蛾の攻撃手段はこの鱗粉だけなのじゃよ。

だから、最大の武器であるリンピンさえどうにかすれば後は簡単に倒せるモンスターと言えようのう。フォフォ』


『そうか。ただ、空中を飛び回っているのは攻撃しにくいから、いつも通りに子守歌で眠らせてからトドメを刺す事にするぜ♪』


そう念話でご隠居に伝えると、クレスは子守歌を使って5匹の大毒蛾を床に落とした後で、一体ずつトドメを刺していった。


その場には、ドロップアイテムが落ちた。


「大毒蛾の魔石と触覚か…。

これも先ほどの大蜘蛛のドロップアイテムと纏めて家に帰ってから鑑定するかな♪」


「そうそう、宝箱もあったな…」


クレスは宝箱に接近した。

「これまた、罠もなくて施錠もされていないのか…」


クレスは宝箱を開けて中身を確認した。

「ポーションが10本か…。渋い儲けなのか美味しい稼ぎなのか分からないなあ…」


「まあいいや。今考えても仕方ない。次の稼ぎだ。次々♪♪」


クレスは気持ちを切り替えて次の隠し部屋に向かうのであった。



……6時間経過……


「調子に乗って、ついつい探索しまくって結局は隠し部屋のお宝はおろか、全ての部屋を調べて、通常部屋の宝箱も調べまくってしまった…(苦笑)」


「フォフォ。本日は随分とサクサク進んだのう」


「ああ。特に大毒蛾はかなり美味しい敵と化していたな♪」


「フォフォ。それはクレスの様な毒の耐性持ちだけの特権じゃのう。

普通はあの鱗粉はかなり厄介だからのう」


「まあそうなるようなあ。逆に何回か大蜘蛛に出会ったけど、初回に出会った大蜘蛛の様に不可視の蜘蛛は後にも先にもあれ一度の遭遇だったよなあ?」


「そうじゃのう。ちと珍しい遭遇となったのう」


ご隠居は言葉を続けた。

「して、クレスはこれからどうするのかのう?

地下3階は隈なく調べたのであろう?これから地下4階に進むのかのう?」


「いや、もうあまりMPの余裕がないし。今回はこれで切り上げるつもりだ。

普段よりかは少し余裕があるけど、良い切り上げどきだと思うからな。

“まだはもう。もうはまだ!”とも言うからさ♪」


「フォフォ。中々意味深な言い回しじゃのう。じゃが一理あるのう」


「と言う訳で、取り敢えず撤収♪」


クレスは速やかにダンジョンを後にして帰路に着いたのであった。



その日、7月23日の日暮れ時…


クレスの自宅にて…


「さて、お宝お宝♪」


クレスは本日の戦利品をテーブルの上に並べた。


鑑定した結果は次の通りである。


ロングソード+1

状態:中古品。普通。

ギルド販売価格100万ザガネ。買い取り価格10万ザガネ。


巻物:“閉錠ロック”の呪文を習得可能。然し、一人しか習得できず。使用したら消滅する。

ギルド販売価格:時価。ギルド買い取り価格:時価。


呪文:ロックの詳細…扉・宝箱などをロックする。

消費MP:1

時間:一瞬


回復薬3:6本(1本当たりの販売価格16万ザガネ、販売価格1万6千ザガネ)


解毒薬2:20本(1本当たりの販売価格16万ザガネ、買い取り価格1本当たり1万6千ザガネ)

回復薬2:20本(1本当たりの販売価格8万ザガネ、買い取り価格1本当たり8千ザガネ)


大蜘蛛・シャドウタイプの魔石:5個(時価)

大蜘蛛・シャドウタイプの牙:5セット(時価)


大蜘蛛の魔石:10個

大蜘蛛の牙:10セット


大毒蛾の魔石:20個

大毒蛾の触覚:20セット


となった…。


「おおおう~~♪可成りの戦果じゃせいか♪

特に最初の3つの戦利品はあの不可視の大蜘蛛の部屋にあった宝箱から出た戦利品だな♪それにしてもやっぱ、あの大蜘蛛は特殊だったんだなあ…。

道理で面倒なモンスターだったよ」

とクレスは遠くを見る眼をしていた…


ご隠居は空気を読み?暫し、クレスを放置してから声をかけた。

「フォフォ。してどうするつもりかのう?」


するとクレス我に返ったように返答した。

「あ、ああ。まずロングソード+1だが自分用にする。巻物も自分で使う。

さっきまで使っていた手槍は売ってしまう♪ここまでは決定だな。

問題はポーションの取り扱いなんだよなあ…」


「そりゃまたどうしてかのう?フォフォ」


「ほら?オレってHPが少ないと思うんだよね?

それに耐久度も低くてすぐに瀕死状態になると思うし」


「それで?」

とご隠居は続きを促した。


「だからさ、当面の処の自分用の回復薬としては回復薬1で事足りると思うんだよね。

ただ、将来的にもしかしたら、あわよくばHPが伸びる可能性も否定できないから、回復薬2と3の売却も躊躇われるし…」


「なるほどのう。フォフォ」


「だから、ポーションは暫く状況を見ながら温存かな?」


「なるほどのう」


「一方、モンスターのドロップアイテムは大蜘蛛のドロップアイテム以外は全て売るつもり♪そちらの売り上げで稼ぎたいからさ♪」


「そうか。それが良かろうのう。フォフォ」


「では、早速ギルドに行って売ってくる事にするぜ!」

そう言ってクレスは、ギルドに向かった。



そうしてクレスは、ギルドに行き、不要となった手槍とドロップアイテム品を通常クエストを完了させて貢献点を稼ぎつつ、売却したのであった。



帰宅後のクレスのベッドの上

クレスはベッドの上でくつろいでいた。


「ふふふ。本日の稼ぎは手槍の販売5万ザガネ、通常クエストを達成させてギルド貢献点を稼ぎつつの大蜘蛛のドロップアイテムの販売の儲けが1万8千ザガネ。


同じく通常クエストを達成させてギルド貢献点を稼ぎつつの大毒蛾のドロップアイテムの販売の儲けが4万5千ザガネ。

合計11万3千ザガネの儲けだな。


これからダンジョン入場料金3万ザガネを差し引いても、8万3千ザガネの純利益だ。

つまり銀行預金40万4670ザガネになるな♪むふふ♪」


「あと、ポーションの在庫は、



解毒薬1:10本(1本当たり販売価格8万ザガネ、買い取り価格1本当たり8000ザガネ)

回復薬1:10本(1本当たり販売価格4万ザガネ、買い取り価格1本当たり4000ザガネ)

解毒薬2:20本(1本当たりの販売価格16万ザガネ、買い取り価格1本当たり1万6千ザガネ)

回復薬2:20本(1本当たりの販売価格8万ザガネ、買い取り価格1本当たり8千ザガネ)

回復薬3:6本(1本当たりの販売価格16万ザガネ、販売価格1万6千ザガネ)


だな♪」


「よっしゃよっしゃ♪」

クレスは悦に浸っていた。


「あそうだ。忘れる処だった。巻物を使って“ロック”のスペルを覚えておかないとな」


そういうやクレスは巻物を使用して“ロック”の魔法を覚えたのであった。


「よかったのうクレス。フォフォ」


「ああ。これでダンジョンの中の部屋で休みたい時には、施錠して安心できそうだぜ♪」


そう言うとクレスは大きく欠伸をした。

「あ~~あ…何だか急に眠くなってきた。ご隠居お休み」


「おやすみじゃのう。クレス♪」


ZZZ ZZZ




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