26、ゴブリン三兄弟の登場
すると背後から…
「ああ~~ん、人族風情が下士官ランクだとう??何かの間違いだろう?ゴブゴブゴブ」
と言う汚いだみ声が聞こえてきた。
「ジャイゴン兄貴の言う通りでヤス、ゴブゴブ」
「ぼ、僕もそう思うんだな。ゴ、ゴブ」
クレスは後ろを振り返って見た。
するとそこには3体のゴブリン族がいた。
「お前らか。ジャイゴン、スネ次郎、ノビ三」
クレスはややげんなりした表情で言葉を発した。
3体の中で一番ガタイの大きい165センチほどのだみ声の主のゴブリンが長男のジャイゴン。
一番体が小さく、クレスとほぼ同じ身長で145センチほどの次男のゴブリンで語尾に“ヤス”を付けるのが、スネ次郎。
身長が150センチほどで、3兄弟の中で一番トロくて話すときにどもりガチなのが、三男のゴブリンのノビ三である。
この3兄弟は、クレスと年齢が近いせいか、度々クレスに絡んできていたのであった。
「なんだとう?人族のくせに俺たちゴブリン族に対して“お前”呼ばわりだとう?!ゴブゴブゴブ」
「そうだそうだ。人族のくせに生意気でヤス!ゴブゴブ」
「ひ、人族の、ク、クレスが伍長だなんて、お、おかしいんだな!ゴブ」
「お前ら、またイチャモンを付けに来たのかよ?
すげえ暇人なんだな…つくづく感心するぜ」
「なんだとう?
おい、クレス!お前がこのオレ様と同じ伍長だなんてどう考えても可笑しい!
何かイカサマでもやったんだろう!ゴブゴブゴブ」
するとスネ次郎に追随した。
「そうだそうだ。この僕でさえ上等兵なんだぞ!人族のクレスが伍長になれるはずがないでヤス。ゴブゴブ」
「ぼ、僕もそう思うんだな。ゴブ」
のび三も右に倣えと如く同調した。
「おい、クレス。
さっさとイカサマしたと言え。言ってそのギルドカードを破棄しろ。ゴブゴブゴブ」
「そうだそうだ。そうでないとどうなるかわかっているんだろうな?ゴブゴブでヤス」
「ひ、人族のクレスは二等兵で十分だと、お、思うゴブ」
クレスはこれ見よがしに大きくため息をついた。
「で、オレがイカサマを働いた証拠でもあるのか?ジャイゴンよ?」
「それで、オレがギルドカードを破棄しなかったらどうなるのかなあ?スネ次郎?」
「ノビ三は、自分がいつまでも二等兵だからって、オレまで同列に巻き込むな。いい迷惑だ」
それを聞いたゴブリン三兄弟は、いきり立った。
「なにおう。おいクレス。いまここで思い知らせてやってもいいんだぞ!」
とジャイゴンが、クレスに詰め寄ろうとしたとき…
「いい加減にして下さい。
ジャイゴンさん、スネ次郎さん、ノビ三さん。
これ以上このギルド、いえ、このラピス村で無法を働くというのでしたら、ダンジョンマスターの眼が働いても知りませんよ。
勿論、その時には、その経緯を私から証言させて頂きます。」
それを聞いたゴブリン三兄弟は、やや怯んだ表情を浮かべた。
「くっそう、ダンジョンマスターの眼か…。
おいクレス。幾ら安全な村の中だからと言っていい気になるなよ。
伍長に昇進したんなら、お前もダンジョンに潜るんだろう?だったらせいぜい背中には気を付けるんだな。
ダンジョンの中はラピス村とは違って、無法地帯だからな。
力が全てだ。覚えておくんだな!」
そう、ジャイゴンは言い放つとゴブリン三兄弟は足音を大きく響かせつつ、ギルドを出ていった。
「ライサスさん。ありがとう。」
「いいえ、ギルドの受付業務を円滑に進めるのも受付担当の私の仕事ですからね。
でも、クレス君は気を付けた方がいいわ。
あのゴブリン三兄弟のセリフではないけど、ダンジョンの中はいわゆる無法地帯ですからね。
それこそ何されてもどうしょうもないの」
「はい。分かりました」
クレスは素直にそう返答した。




