21、砂漠での狩り再び
7月11日の早朝…
「はあ、朝かあ…。
それにしても腹が減ったなあ…。
さすがに30日も絶食状態だと体もフラフラだぜ!」
「さもあらんのう」
と、ご隠居が相槌を打った。
「確か、備蓄してあった保存用の木の実があったよな。
ひとまずそれで急場をしのぐかな…」
「それがよかろうのう。フォフォ」
暫しの朝食タイム…
「はあ、一息ついたぜ。でだ…一つ問題がある」
「なんじゃな?フォフォ」
「30日も瞑想していたせいで、もう月末も過ぎてしまった」
「フォフォ。そうじゃのう。で?」
「つまり…」
「フォフォ、つまり?」
「住民税の支払い日が来たんだよぅ(汗)。」
「なんともはや。フォフォ」
「てな訳でギルドまでダーーシュ(滝汗)」
ギルド前…
“ぜいはあ~、ぜいはあ~”
「やっとついたぜ…」
「急ぎ、ライサスさんの処に行かないと…」
(あ、居たいた。今日もカウンターで業務をこなしているなあ。)
クレスはカウンター前まで歩み寄った。
「ライサスさん。おはよう」
「あら、クレス君おはよう。ご用事は何かしら?」
「えと、住民税の支払いです(汗)」
「立派立派、それが正解よ。
だってあまり支払いが遅れるようだと記録に残ってしまうからね。
では、カードを机の上に掲示して」
「はい。」
クレスはカードを掲示した。
「はい。確かに。住民税の支払い完了しました。カードの預金の残高に間違いがないか確認してね」
クレスはカードから内容を確認して
「確かに。間違いありません」
(ああ、これでカードの預金残高は27万4000ザガネかあ…30日断食したから、食費は殆ど掛からなかったけど、こまごまとした出費もあったから500ザガネは消えていったしなあ)
(まあ気持ちを切り替えよう。まずは、昇進試験の続きだな)
「ライサスさん。それでは今日はこの辺で♪」
「おやまあ、忙しそうね…」
「ええ。ちょっとね…」
そう言い、クレスはギルドを後にした。
村はずれの森の中…
『フォフォ、クレスよ、急いで森に来たようじゃが、どうしたのじゃ?』
『怪我をしても回復できる様に、回復魔法1を習得できたのは嬉しいんだけどよ。』
『ふむふむ』
『それだけだと、ウサギを倒せそうにないなあ!と思えてしまったんだよ』
『ほう。確かにそうかもしれんのう。フォフォ』
『だろ?でだ。少し良い事を思い出した。というか思いついたんだ♪』
『フォフォ、良い事じゃと?』
『ああ。ほら、狼を狩るのに罠・落とし穴で仕留めたるつもりだと言っただろ?』
『そうじゃったのう。フォフォ』
『それで思いついたんだけど、落とし穴って、ただ穴を掘るだけでは獲物・狼を仕留めるのは厳しいと思ったんだ』
『ふむ。そうかも知れんのう』
『だったら、落とし穴の底に鋭い刃物の様なものを沢山仕掛けたら致命傷を与えられると考えたんだよ』
『ほう♪それはなかなか良さそうなアイディアじゃのう。フォフォ』
『だろ!♪ただ、その刃物を用意するのは些か困難かと思ったんだけど、ふと思い出した』
『何をじゃ?』
するとクレスは目の前に広がる竹林を指し示した。
『これだよ。竹だよ』
『竹?……おうおう、わかった。クレスは竹槍を作ろうというのじゃな?』
『大正解♪
竹槍を落とし穴に沢山突き刺しておけば、罠にかかった狼に致命傷を与えられそうだし』
『それに竹槍ならリーチと言う長さの有利性があるから、ウサギを狩る場合にもナイフより成功率が高そうに考えられるしな♪』
『フォフォ。クレスよ、よく考えたのう』
『だろだろ♪と言う訳でまずは、竹槍を沢山作らないとダメだな…。
と言う訳で本日は竹槍生産日だな(苦笑)』
クレスはその日、竹槍の生産に明け暮れたのであった…。
夕刻
「やっと竹槍を予定数作れたな…。結構面倒だったぜ。コツコツと切っていくのって…」
「然し、これで罠に使う竹槍と狩りで使う竹槍を用意できたのじゃろう?」
「まあな♪」
「ならば、“よし“とすべきじゃろう?フォフォ」
「だな。ちょうど日も暮れて村の外の砂漠の気温も下がった頃合いだろうし。
まずは、竹槍一本持ってウサギの狩りに行って見るとするか♪」
そう行ってクレスは水筒などの準備をして砂漠へと出かけて行った。
村から1キロほど離れた砂漠…
「さてと、では“索敵”を発動っと♪」
するとクレスの視界内に一角ウサギの姿が映りだしてきた。
(をし。一角ウサギはっけ~~ん♪でわ、風下からゆっくり近づきつつ気配を消してえ~)
クレスは、“そう~っ”とウサギへと近づいて行った。
(もうちょいだ…)
距離が10メートルくらいにまで接近したときであろうか?
“キュ?!”と一角ウサギは何かの気配を察したかのように半立ちして周囲を警戒し出した。
(やばい。気づかれたか?)
クレスは、これ以上気取られずに接近するのは無理だと判断して一気に距離を詰めるべく、掛け声と共に疾く跳び出して行った。
「てやあ~~~」
クレスは竹槍をウサギの胴体目掛けて突き刺そうとした。
が…
「キュキュ」
殺気を感じ取ったウサギは直上に大きくジャンプして竹槍の一撃を寸での処で躱した。
「く、外したか!」
「キュ」
ウサギは、砂地に着地するやいなら、三段跳びの様に後方に大きく二回大きく跳躍してクレスとの距離を取った。
「キュ~~」
一声大きく鳴いたかと思えば、ウサギは文字通り脱兎の勢いで一目散に逃げ去ってしまった…
「くっそう。失敗かあ…」
クレスは、両ひざを砂地に突いて“ガックリ”と大きく項垂れた…。
「そうしょげる事もあるまい。
1度目は反撃を食らい大けがを負っての退散。
二度目はナイフを大きく空振りしての失敗じゃった。
然し、今回の3度目は竹槍がもうちょっとで一角ウサギの胴体をかすめそうじゃったのうが?!惜しかったのう。もうちょいじゃよ。フォフォ」
それを聞いたクレスは、気を取り直して立ち上がった。
「そうだな。何度でも成功するまで挑戦してみるさ。をし。頑張るか♪」
「その意気じゃ。フォフォ」
クレスは再び、狩りを再開した………
翌日の夜明け頃……
「畜生めぇ~。全然狩りが成功しない……」
「そうじゃのう」
「あれから何度も挑戦して結局20回だぞ。
20回!
それだけ挑戦しても狩りが全然性交しない。
そればかりか、大体半分の確率で逆襲にあって、少なからず怪我を負っちまった…。
回復魔法1を使えなかったら確実におっちんでいたぜ……」
「あ~あ~。もう夜明けだし疲れも溜まったからひとまず帰る事にするな。ご隠居」
「それがよかろう。フォフォ」




