17、人族は喰われ易い?いや狙われ易い!
「あ、でもクレス君の場合は…」
とライサスは気まずそうに言葉を言いどもった。
「うん?どうかしましたか?」
「あ、うん。えとね。クレス君は人族よね?」
「そうですね…」
「これまでにこの村でも多かれ少なかれ差別的な出来事には出くわしてきたはずよね?」
「そ、そうですね…。残念ながら…」
「でも、それでもダンジョンマスターの眼が光らせていたから、犯罪行為・暴行や傷害などには遭遇してこなかったはずよね?」
「そうですね。
…あったのは商品の売り惜しみやボッタクリ販売とかが主な嫌がらせですね…」
そう、クレスは言葉を綴った。
「でもね、村の外やダンジョンの地下1階を除いてダンジョンの中ではダンジョンマスターの眼は適用されないの。
つまり治外法権・無法地帯なのよ。
つまりは…」
「つまり?」
「村の外で、クレス君が狩りの途中に村人のゴブリン族やオーク族に襲われてもどうしょうもないのよ。」
「それって、ダンジョンの中でも?」
「そう、ダンジョンの中でもね」
「クレス君は結構結構狙われ易いと思うわ。
人族は弱いわ。
抵抗不能・行動不能にしてしまえば、あとは“奴隷の鎖“に繋いで奴隷商人にでも売れば、良い稼ぎになるはずだからね…」
「“奴隷の鎖”?いい稼ぎ?」
「奴隷の鎖と言うのはね。
それを使用すると相手を奴隷状態にできるの。
そして、良い稼ぎと言うのは、人族は結構高値で取引されているのよ。
クレス君にとっては辛い事だろうけども…」
「それは一体なぜ?」
クレスは不思議に思って聞いてみた。
「それはね。人族を食べたら、いろいろな意味で能力値などが増加するの」
「食べる?」
クレスは恐る恐る聞いた。
「確保・奴隷化する人間が同性の場合は、文字通り食欲的に食べてしまうの。
例えば、ゴブリンが男の場合で人族が男の場合は、文字通り食事的に食べる事ね」
「人族って、喰われるの?」
“ゴクリ”とクレスは喉が鳴った。
「そうね。自分の能力値が簡単に増加するから、かなりの確率で狙われているわね」
ライサスは尚をも話を続けた。
「そして、例えば襲うゴブリン族が女の場合は、人族の男を性的に食べるの」
「た、食べる?」
「そう、食べてしまうの。
特に性的に食べてしまうの。
そしたら、性的に食べた場合もその喰った本人の能力値が極めて増加するの。
更には、妊娠・出産した場合は、かなりの大きな確率で生まれた子の能力値などは優れて生まれてくるの。
因みに、生まれてくる種族は、人族と人族以外の組み合わせの場合だと100パーセントの確率で人族以外の種族の子が生まれてくるの」
「100パーセントの確率で人族以外の種族の子供が?」
「そう。100パーセントの確率で…」
「だから、特に暗黒神側の種族は己や種族の繁栄を強くしたいという観点から率先して人族を襲っているわね。
取り分け、性的な意味で襲って自己の種族の繁栄を企図する意味合いから人族をペットのように飼い殺して子供産ませるようにしている事が多々あるわね…」
「そしてね。クレス君は可愛いショタっ子よね?」
「可愛いショタっ子言うなし。
シリアスな話している処でなんてこと言うんだよ。
緊張感が台無しだよ」
「勘違いしないで、クレス君。
これも“喰われる”事柄に関係した重要なことなの!」
と、ライサスは真剣な表情で話しかけてきた。
「どういう意味?」
「あのね。
可愛い・綺麗・美人・美形だとね。
“喰う”場合、能力値がすごく増加するの。
同性の人族を食欲的に“喰った”場合や、直接的に“喰った”人物の能力値がね。
一方、異性の人族を性的に喰った場合も能力値がすごく増加するの」
「それって本当ですか?にわかには信じがたいのだけど…」
クレスは震える声で尋ね返した。
「本当なのよ。
因みに、異性の種族、例えばゴブリン族から性的に喰われる可能性についてだけど、余りに美形の場合だと逆に狙われる可能性が減る事もあるみたいね」
「それってどういう意味?」
「えとね。
1000年以上前の昔とは違ってね。
今は、
“美形=弱い=魅力的でない=性的に燃えない”
という論法が成り立っていてね。
性的対象から外される傾向が高いのよ。」
「はあ?何ですかそれって?」
「ズバリ“やりたくない”らしいわ(苦笑)」
(おいおい。なんじゃそりゃあ?)
己が喰われるかもしれない可能性についての重要な説明を受けているシリアスの場面であるにも拘らず、クレスは思わず唖然とした。
「あと、もう一つ重要な説明があるわ」
「重要な説明?」
“ゴクリ”とクレスはつばを飲みこんだ…
「それはね…」
「それは?」
「クレス君がショタだと言う事よ!」
ライサスは、笑うセールス〇ンの某主人公のように“ド~~~~~ン!”とクレスを指さして背後に雷鳴を轟かせたかの様に大きく宣告したのであった。
クレスはつい、椅子からずりこけた。
やや、間をおいてクレスは地面から這い出しつつ、椅子に座りなおして目の前の机を両手で“バンバンと叩きつつ“ラサイスに突っ込みを入れた。
「ど、どういう理屈でここにショタ要素が出てくるんだよ!ふざけるのも大概にしとけ!」
するとライサスは落ちついた素振りでゆっくりと被りを振って否定した。
「いいえ、大いに関係してくるのよ。
その前に一つ確認しておくわね。
クレス君ってズバリ“童貞”でしょ?!」
「いきなり、なんてことを聞いてくるんだよ。
このエロ娘。エロバニーガールめっ」
クレスは、半ば慌てるように言葉を放った。
「いいえ、ふざけていないわ。
クレス君は知らないようだけど、童貞と言う言葉の隠語が“ショタ”なの。
そして、処女と言う言葉の隠語が“乙女”なのよ。
因みに、非童貞は“オジン”。
非処女は“オバン”と言う隠語で揶揄されているわ♪」
「だ、だったらそれがなんだって言うんだよ!(怒)」
「いい事、クレス君。
人族の乙女またはショタを“食事的に喰ったり”、或いは“性的に喰ったり”するとね本来の能力値と将来伸びる能力値が凄まじく増加すると言われているの。
そして、寿命も大きく伸びると言われているのよ」
「更には、ショタと乙女同士でセックスすると信じられないくらい能力値や寿命が増加すると言われているの」
「だからね、裕福な家庭、それこそ貴族などはやっきになって人族を狩るのよ。
入手しようとするの。
だから、クレス君はかなり狙われ易いと思うから気を付けないとならないの!分かった?」
(なんつう設定なんだ。この世界は狂ってやがるぜ!)
(あ、でも待てよ…)
「質問です。
人族同士の乙女とショタがセックス・性交した場合も、能力値の増加や生まれてくる子供の能力値の増加ってするのですか?」
(だったら、この“自然呪い”克服の一助として考慮の余地があるかも…)
「あ、その疑問ね。残念ながら、それはないの」
「な、なしてえ~」
“ずるずる”クレスは椅子からずり落ちた。
「それはここ1200年の統計から明らかね。だから、まずあり得ないと断言していいわ」
「あとね、人族が非人族に性的に喰われる場合だけど、非人族がショタ・乙女だと人族の能力値なども一応は増加するみたい。
或いは、人族がショタ・乙女の場合も同様に能力値などが増加するみたい…。
でも、もともとの能力値が低いから暗黒神側の種族からしてみたら許容範囲らしいのよねえ…。
ほら、暗黒神側の種族の信仰修正や美醜度修正ってとっても高いらしいから…。
ただ、その情報も錯綜している部分があるから正確にはちょっとわからないわねえ…」
「つまりは…
〇人族がオジン・オバン&非人族もオジン・オバンのカップリングだと…非人族のみ能力値増加
〇人族がオジン・オバン&非人族のみショタ・乙女のカップリングだと…人族能力値等増加&非人族も能力値等増加。
〇人族がショタ・乙女&非人族がオジン・オバンのカップリングだと…非人族のみ能力値増加
〇人族がショタ・乙女&非人族もショタ・乙女のカップリングだと…人族能力値等大幅増加&非人族も能力値等大幅増加。
と言う事になるのだろうか?」
「ええ、そういう事になるわ。要するに“ショタ・乙女の価値が高い。
特に、人族がね…”と言う事になるわね。」
とライサスが軽く吐き出す様に言葉を綴った。
「そういうことか…」
(つくづく、人族にとっては過酷な世界になっているんだなあ…)
それを聞いたクレスは“遠い目”をしつつ、暫し黄昏れていた…
ライサスは、黄昏れているクレスを気遣うように暫し声をかける事を控えていたが、このまま放置しても仕方ないと思い。話を切り出した。
「本当は、この話はクレス君が昇進試験に合格してダンジョンに入場可能になってから話そうかと思っていたのだけど、試験の為に村の外に出る事を考えたら、村の外も少なからず危険な無法地帯である事に変わりがないから、少しでもクレス君の危機管理に関しての認識を高めてほしいと思ってお話したの」
クレスもその言葉の意味が段々と心に染みてきた。
「ライサスさんどうもありがとう。
ちゃんと用心して準備してから村の外にでる事にするよ。どうもありがとう。
では、準備したいからまたね」
「いってらっしゃい。クレス君。十分気を付けてね」
クレスはギルドを後にした…




