13、人族の境遇
「処で」
とライサスさんはクレスの容姿をチラっと観察しながら居住まいを正しつつ
「さきほど、クレスさんの戸籍簿を拝見しましたが、この村から出たことがないようですので、世間一般のよその村や町の事を一言申し上げておきますね。」
「よその村ですか?」
「はい。
この村は、コボルト族のザキ様がダンジョンマスター、ひいてはご領主様を務められております。
クレスさんがご存知かどうかは分かりませんが、コボルト族というのは、唯一と言っても良いくらい人族に対してとても寛容な種族です。
それ故、このラピス村では人族に対する差別がかなり緩和されております。」
「そうなのですか?」
クレスは過去の記憶を思い出しつつ、それまでにクレスが受けてきたきつい差別を回想していた。
「はい、そうなのです。
人族である以上、暗黒神を信仰する種族からは、度々差別や虐待を受けてきたかと思いますが、よその村や町と比較したらかなり恵まれているのです」
「あれで?」(汗
クレスは記憶を再度連想したが、とてもそうは思えなかった…
「はい。
普通ですと暗黒神を信仰している種族、例えばゴブリンなどの視界に入っただけでもすぐに虐待されても何らおかしくありません。
無論、反撃することは許されております。
然し、自然の呪いの影響で人族の反撃は殆ど無意味です。
すぐにゴブリンなどの相手に打ちのめされてしまいます。
何といっても地力が違い過ぎます。
腕力一つを比べてみても圧倒的な差があるので、まるで歯が立ちません。」
「全然ダメですか?」
「はい。全然ダメです!」
「加えて、クレスさんはいわゆる美形度が高いです。可愛いと言い換えても良い位です♪」
「男子に可愛い言わないでくれるかな!」
クレスは不機嫌そうに一言言い放った。
「あ、ゴメンなさい。つい…」
“コホン”
「え~とね。
自然の呪いの発動以降は、いわゆる美形さんや可愛い系の人やショタっ子は総じて戦闘力が激減しちゃっているのよねえ…。
特にクレスさんの容姿だと余計に……」
と言いつつ、“ショタっ子”発言したときに“チラッ”と一瞥をくれた事をクレスは見逃さなかった。
(このぅ~~「怒」)
「だからね、クレスさんは人族であり更にはショ〇 いえ、容姿が整っているから余計によその村や町では他種族から色々な意味で絡まれ易いと思うのよね…」
「いま、ショタって言いかけただろう!」(怒)
「あら~、気のせいですわぁ」(ニコリ)
(いつかギャフンと言わしたる「怒」)
ライサスは話を続けた。
「一方、このラピス村ではダンジョンマスターの眼が光っておりますので、むやみやたらと暴行をできなくなっております。
先ほども言いました通りいわゆる違法な犯罪行為に対しては直ちに“金縛り”となってしまいますからね。」
「そうか…」
「まあ、いきなり多くのギルドのルールや様々な事柄について説明しても覚えきれないと思いますので、おいおい折を見て良き機会のときでも改めて説明しますね。」
「あ、ああ…分かった。
じゃあ、まずは冒険者登録仕立ての二等兵の場合は、どういうクレスを受諾したらいいのか簡単な指針でもでも教えて貰えたら助かる。」
「そうですね。
いわゆる“兵卒”ランクの場合ですと、村内で行えるお使いクエストや軽労働クエストや採集クエストなどが一般的ですね。
ただクレスさんの場合ですと人族ですので、村の人たちと直接関わるクエストは差別されかねないのでちょっと…。
一方、薬草などの採集クエストですとクレスさんはリアンさんのお手伝いをされていた様ですので、そちらが向いているかと思いますね。」
「そうですね…。
薬草の採集ならある程度慣れていると思うので、当面はそれをメインにこなしてみようと思うよ」
「それが宜しいかと思います。
薬草の採集クエストは常時依頼されておりますので、クレスさんのペースでこなし易いと思います。
頑張って下さい」
「そうするわ。ライサスさん説明ありがとう。又来る。」
「お待ちしております♪」




