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誤魔化す方法

「人工的に神を造り出すなんて、ふざけた話は置いておくとして。アルマの話から、ギルドマスターに渡した魔導書が他にもあるってことよね。しかも、人々から精霊の力を集めている。嫌な予感がしてきたわ」


「……神を人工的に造り出す」


 アルミラの勘は良く当たるから、これは気をつけておいた方が良いな。前回も復活したアスト=ウィーザと戦うことになったし。


 ミリカの方を見ると、神を造り出すという言葉に思うところがあったのか小さい声で呟いていた。


 言葉を吟味するように反芻しているところ悪いが、たぶん狂言とかその類だと思うぞ。神をぽんぽん作れるわけ無いんだし、考えるだけ無駄だ。


「精霊が苦しむほどのことをしてまで、力を集めている理由がそれだけとは限りません。知ってしまった以上、見て見ぬふりはしたくありませんから、私たちなりにこの件を調査してみませんか?」


 このエリーサという女性から得た情報は、ギルドマスターであるイヴァンさんに説明していない。魔導書を渡してあるとはいえ、この情報まですぐにはたどり着けないだろう。明日の朝に来るみたいだし、その時に伝えるか。


「調べるのは賛成だけど、アルマが入手した情報をイヴァンさんに伝えておくべきだよな? 相手の規模が大きそうだし、ギルドから協力を得た方が良い気がする」


 伝えたところで、すぐに協力を得られるとは限らないけど。


「でも、どうやってその情報を入手したかの説明がいるんじゃない? 誤魔化して伝えるにしても嘘を見抜ける魔法を使われたら、不審に思われちゃうし。もしかしたら、アルマが禁止指定されている魔法を使ったことがばれちゃう可能性もあるわよ」


 味方のはずだったのに、こうなると嘘を見抜く魔法って面倒くさい。


「だからと言って、俺たちだけで行動するのは得策じゃないよな。……何か、誤魔化す方法があれば良いんだけど」


 何か言い方法が無いかと考え込んでいると、ふと気になることを思い出した。


「……なあ、俺たちがグランデシャトーのギルドに入った時、職員からヴィオラさんの料理を勧められたことがあったよな?」


「そんなこともあったわね。それがどうかしたの?」


 俺の言葉にヴィオラさんの料理を思い浮かべたのか、3人が微妙な顔をした。


 あの料理はインパクトあったから、それを食べるに至った記憶は残ってるんだろう。


「その時、アルミラ達は全くの嘘で逃げようとしていたか?」


「まあ、そうね。咄嗟に浮かんできたのを言っただけよ。実際に、急用なんてなかったし」


 ミリカとアルマも、その通りだと頷いていることを確認した俺は言葉を続けた。


「俺はその前の会話でカンナさんに呼ばれていたことを思い出し、それを理由に逃げようとしたんだ。いつでも来てくれとは言われていたけど、すぐに行く用事は無かったんだから、これも嘘にはなるよな。たとえ、言葉足らずだったとしても。でも、嘘とは思われなかった」


「あ、なるほど、そういうことですか」


 アルマは俺が何を言いたいか理解してくれたようで、手をポンと打って笑顔になっていた。


「つまり、イヴァンさんの嘘を見抜く魔法も完璧ではないってことだ。これは推測だけど、嘘の中に真実の結果を少しでも紛れさせたら、それは真実として認識されるんじゃないか?」


「ああ、そういうことね」


 アルミラも理解してくれたようだ。


「ですが、その推測が間違っている場合もありますよね? 例えば、真実でないにしても違和感を覚えるとか」


「推測だからな。悪いけど、100%確実に合っているという自信は無い」


「間違っていた場合はどうするんですか?」


「そうなったら、その時に考えよう!」


「……行き当たりばったり過ぎませんか?」


「なんとかするさ」


 ミリカが心配する気持ちもわかるが、案外どうにかなると思う。本当にどうしようも無くなった場合の最終手段は、またアルマに頼ってしまうが仕方ない。確か、記憶を消せる魔法が使えた気がする。


 罪を犯そうが、どっかの偉い人も言ってたようにばれなければどうとでもなる。


 これでイヴァンさんの魔法に対しては、誤魔化せそうな気がする。


「あとは、真実を引き出す方法だ。最初は普通に問いかけてみるけど、こういう輩は素直に答えないと思う。そこでアルマが作った魔道具を使おうと考えている」


「私が作った魔道具ですか?」


 アルマはどの魔道具を使うのか、ピンときていないようで小首を傾げていた。


「王都に来る道中で初日に紹介してくれたあの本だ。あれを持たせた状態で質問をすれば、何かしらは心の中で秘密を考えちゃうんじゃないかなって思ったんだ」


「そううまくいくでしょうか? それに、本への書き込みが成功したとしてもそのページを見つけるのに苦労しそうですよ」


「問題ない。そこはアルミラがそつなくこなしてくれる。というわけで、任せた」


「別に良いけど、見つけられなくても文句言わないでよ?」


「大丈夫。アルミラなら、絶対見つけられるよ。1回でも秘密をこの方法で知ることができれば、全部これで見つけたということにしてしまおう。細かく説明しなければ、勘づかれることもないはずだ」


 とりあえずは、といった感じで了承してくれる3人。


 明日の朝まで時間はたくさんあるんだ。色々、試していけばいい。


「これで情報はそのまま言えるし、聞き出し方も正常だ。問題ないな!」


 俺が言葉を言い終わった瞬間、寝ていたエリーサという女性が目を覚ましたようで、ベッドの方から声が聞こえた。


「ん、ここは……? あ、あれ?」


 体を動かせないことに気づいたみたいで、困惑している様子がその声から聞き取れた。


 さて、尋問といきましょうか。

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