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魔術師の少女

あの後は特に問題が起こることもなく、砕けた岩を全て運び終わった。


「シンシアさん、砕けた岩を広場に運び終わりました」


「……休憩なしでずっと働き続けてましたが、大丈夫なんですか?」


「体力には自信があるので」


「そ、そうですか……」


 若干、引いてる気がする。


 自分自身でも森の中を歩いた時から体力が強化されているなとは感じていたが、まさかこんなにも強化されているなんて思ってなかった。


 苦しくなったら、一度休憩をしようかと思ったのだが特にそんなこともなく終わってしまった。


「では、完了した旨の書類を準備しますので、少々お待ちください」


 そういうと、シンシアさんは教会の中に歩いて行った。


「よし。これで初クエストクリアだな!」


 俺は、初めてのクエストをクリアしたということに達成感を感じていた。


「おや? 中庭にあった大きな岩がいつの間にか無くなっていますね……」


 と、突然背後から声がした。


 振り向くと、そこにはローブを着てとんがり帽子を被ったいかにもな格好をした魔術師みたいな少女がいた。肩まで伸ばした栗色の髪に赤い瞳が特徴的だ。


 ……魔術師? 参拝者か?


「あなた、ここにあった岩がどうなったか知ってますか?」


 ……俺に話しかけてるんだよな?


「どかしたけど……」


「……どうやって、どかしたんです?」


「普通にハンマーで砕いて、教会の裏にある広場に置いたけど」


「ハンマーで……砕いた?」


 なぜか、この魔術師のような格好をした少女は驚いているようだった。


「まあ、普通のハンマーではなく、魔力の宿ったハンマーでだけどな」


「……そのハンマーは、どこにありますか?」


 えーっと、さっきも大きめの岩を砕くのに使ったから……あ、あった。


「これだよ」


「……」


 彼女はハンマーを片手で持とうとして……落とした。


「重い!!」


 そんなに重たかったか? 


 何とか両手で持とうとするが、持ち上がる気配がない。


「ふう、ならば」


 彼女は気合を入れ、何か雰囲気が変わったかと思った瞬間。


「ふん!」


 先ほどまで、全く持ち上がる気配のなかったハンマーが持ち上がった。腕はぷるぷるしているが……。

 

「くっ……なるほど、この魔力の宿ったハンマーで地道に砕いたというわけですか。このハンマーなら納得です」


 いや、一撃で砕けたけれど……。


「ふっふっふ、なら次はこのハンマーでさえ壊せない魔力純度の高いものを作ってやります!」


 こいつか! あんな大きな岩を作ったっていう、傍迷惑な魔術師は!?


「あら、大きな声がすると思ったら、魔力欠乏症で動けなくなった間抜けな魔術師さんじゃないですか。もう動けるようになったんですか?」


 シンシアさんがいつの間にか戻ってきていた。


「私を誰だと思ってるんですか? 魔力欠乏症程度、ポーションを飲んでればすぐに回復します」


「なら、この中庭の荒れ果てた状態を何とかしてもらいましょうか」


 ……なんだろう。シンシアさんは笑顔なのに、怖い感じがする。


「あー……きゅ、急用を思い出しました。私はこれで失礼、ぐえっ」


 逃げようとしたところをシンシアさんに首根っこを摑まえられてしまった。


「あなたがあんなことをしなければ、わざわざ冒険者さんに来ていただく必要もなかったんですよ? 教会としても余計な出費になりましたし」


「……わ、私は注文通りのことをしようとしただけ」


「確かに中庭にも女神様の像を置きたいと考え、少し大きめの岩をお願いしますとは言いましたが……誰が中庭を破壊するような岩を注文したんですか?」


「……」


 そういう経緯であの岩は作られたのか。


「魔法の制御には自信がある。絶対に注文通りの大きさの岩を作ってみせると豪語していたのは、どこのどなたでしたかしら?」


「……くっ」


「……はあ、あなたの魔法の才能はすごいと思います。制御不能なところを除けばですが」


「ぐぬぬ」


 傍迷惑な魔術師さんは、とても悔しそうにしている。


 でも、実際あんな大きな岩を生み出せるのはすごいよな。異世界の魔法の常識は知らないけれど。

 

「ソウイチさん、すいません。お時間がかかってしまいましたが、こちらが今回のクエストを達成された旨を記入した書類となります。これを冒険者ギルドに提出すればクエスト達成となります」


「ありがとうございます。……余計なお世話かもしれませんが、中庭の掃除手伝いましょうか?」


「それには及びませんよ。こちらの魔術師さんに直してもらいますから。それと、ミリカ。ソウイチさんに自己紹介なさい」


 シンシアさんに促され、彼女はしぶしぶといった感じで


「……ミリカです。魔術師で、冒険者ランクはDです」


「ソウイチと言います。冒険者ランクは……えーっと、登録したてなのでFランクです」


「え?」


 なぜか、シンシアさんに驚かれた。なぜ?


「ソウイチさんはギルドに登録されたばかりなのですか?」


「はい、本日登録したばかりです」


「そうだったのですか」


 何だ? 考え込んでしまったが……。とりあえず、ギルドに戻るか。


「クエストも達成できましたので、ギルドに戻ろうと思います。失礼します」

 

 そういって、帰ろうとしたが。


「ソウイチさん、お願いしたいことがあるのですが……」


「はい、何でしょう?」


 あれ? このパターンは……。


「ミリカとパーティーを組んであげて欲しいのです」


 やっぱりか!!

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