表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/179

ルリの眼

 エルストの街よりも巨大な冒険者ギルド前に着くと、そわそわしているみんなの姿が見えた。


 あー、俺たちが迷子になっていたから、心配しているみたいだな。


「おーい、みんなー。待たせて悪かったなー」


「そんなに待ってないから大丈夫だよ」


 俺たちに気を使ってくれたのか、カンナさんはそんなデートに遅れてきた相手を許すような言葉を言ってくれた。


 俺たちが無事に冒険者ギルドに着いた事で、ホッとしたように胸を撫でおろしている面々。


 ギルドの入り口から大きい順に並んでいるな。


「……まったく、迷子になったのはソウイチの方じゃないですか。どうせ、物珍しさに惹かれてキョロキョロしていたのでしょう? 女性と手をつないでいるのなら、きちんと案内してあげないといけませんよ」


「ミリカも余所見してて途中でよく立ち止まってたわよ。手をつないでなかったら、はぐれてたと思うけど」


 ミリカからの言葉が痛い。真実だけに何も言い返せないが、ブーメランって武器を教えてあげたい。


「そちらの2人はどちら様ですか?」


「ああ、迷子になっていた俺たちをここまで案内してくれたんだ」


 リカさんからの質問に案内してくれた2人を紹介する。お互いに自己紹介していると、ルリちゃんはみんなを見渡すように顔を動かし、全員を見た後にミリカをじーっと視始めた。


 気になることでもあったのだろうか。


「どうしたの、ルリちゃん。このお姉ちゃんに何かあった?」


 聞いてみると、予想していた通りの答えが返ってきた。


「……このお姉ちゃんも見えない」


 ルリちゃんが観察するように視ていた結果、俺と同様ミリカにも精霊が視えないらしい。


 俺に近づいてきたのは、精霊が視えなかったから珍しいということじゃなかったのか。


「え?!」


 アルマはひどく驚いたような声を出していた。


「どうした?」


「いえ、でも……」


 また、自分の世界に入っていってしまったようだ。


「見えないって、何が見えないんですか?」


 ミリカもその言葉に疑問を持ち、ルリちゃんに質問するが本人はじーっと視ているだけで返事はしない。


「こら、ルリ。質問されたらきちんと答えなさい」


「……精霊」


 セリちゃんに怒られ、渋々といったように答えるルリちゃん。


「「精霊?」」


「……ふむ」


「先生、これって……」


 それぞれ反応が違うな。冒険者側は疑問符が浮かんでいるような顔をしており、研究者側は何かに気づいたかのように思案顔になってしまった。


 ちなみに、当然だが俺もさっきから頭の中に疑問符が浮かんでいる。


「確認なのだが、ルリ君だったね。視えている精霊というものは人の形をしているかい?」


「……そっちのおっぱいが重なって見えるお姉ちゃんのが人に近い形をしているけど、他の人のはよくわからない」


「おっぱいが重なっている?」


 ルリちゃんの表現方法から推測するに、幻影の魔法で盛っているのを看破してそういう見え方をしているんだろうな。


 ここは、アルマのことを気遣ってやるべきだな。


「カンナさん、その件については聞き流してあげてください」


「……? わかったよ。それにしてもこんなところで魔眼持ちに出会うことができるとはね」


「そうですね。しかも、精霊を視ることができるというのは珍しいですよね」


 やっぱり、魔眼なのか。


 俺も何かに覚醒して、魔眼が発眼したりしないものだろうか。服を透視する魔眼なんかは魅力的だな。


「その魔眼っていうのは、危なかったりしますか? 体に害があったり……」


 さすがに研究者が言ってると信憑性が増したのか、姉として心配になったセリちゃんは2人に対して質問をしていた。


「いや、特にそういった事例はなかったはずだ。ルリ君、その精霊を視ていて体調が悪くなったりしているかい?」


 ふるふると首を横に振っている姿を見て安堵しているようだ。


「君たち2人は今から時間があるかい? ここで会ったのも何かの縁だし、私の研究所まで来てくれないか? 確認しておきたいことがあるんだ」


「はい、大丈夫ですけど一度家に戻ってお母さんに言っておきたいんですけど、良いですか?」


「もちろんだよ。では、私たちはこれで失礼させてもらおう。あ、これは私の研究所の場所を記した紙とそこに入るための証みたいなものだ。いつでも来てくれてかまわないから、遊びに来てくれ。それとソウイチ君にはこちらの鍵を渡しておこう。私の家の合鍵だよ。失くさないようにしてくれると嬉しい」


 そう言うなり、俺にその証と地図のようなものを書いた紙、さらに鍵を渡してくるカンナさん。


 いや、合鍵はいらないんですが。


 挨拶をして別れる4人に向かって、お礼を言いつつ見送った俺たちは正直何が何だかといった形で立ち尽くしてしまった。


「全く、会話に入れなかったわ」


「私もです。精霊ってどういう存在なんですかね?」


 唯一、話を理解していたであろうアルマは4人を見送ってからもずっと何かを考えている様子だ。


 精霊という存在が何なのかわからないが今すぐ何かあるということはないだろう。アルマが考え終わってから聞いてみることにしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ