姉妹
「あれ、俺たち言葉に出して会話してたっけ?」
「いえ、そんなことはなかったと思いますが……」
この子は俺たちが行きたい場所を最初から知っていたのか? でも、アルマの方を向いて何かを理解したように頷いてたしな。
「なあ、アルマに聞きたいんだが心の中を覗ける魔法とかってあるのか?」
「あるにはありますが、制御が難しいので使える人は限られると思います。それに魔法の発動は感じませんでしたから、この子が使ったとは考えづらいですよ?」
心の中を覗ける魔法ってあるんだ、怖いな。それにしても、魔法でないとするとやっぱり魔眼的なやつか?
この少女は俺たちの会話を聞いていても飴を舐めながら、無表情にこちらを見つめているだけだ。
周囲を見渡してみても親が探しているといった様子はない。
「親はどこにいるか、わかるかい?」
「親?」
親という単語には反応したようで小首を傾げながら、聞いてくる。
やばい、可愛い。……これは事案発生待ったなし。
「そう、親。一緒にいたんじゃないのかい?」
なるべく優しい声を意識して問いかけてみると、思いもよらない言葉が返ってきた。
「私の親はエルドレーネ様」
おっと、神様が親とは驚いてしまったぜ。わかった、きっとこの子は精霊だな。俺の知識が訴えかけてくるからそうに違いない。
「すべての母はエルドレーネ様と言われているくらいですし、きっと御伽話を信じてるんですね」
アルマはこの少女のことを御伽話を信じる子供だと微笑ましく思っているのだろうが、俺は本当のことだと思う。でなければ、さっきのことに説明がつかない。
「冒険者ギルド、行かないの?」
無表情ながらもこちらを急かしてくるように少女はもう一度言った。
よく見てみるとこの銀髪も深い青色をした瞳も神秘的な気がしてきた。
名前を聞かれても言わなかったのは、ひょっとして無いからという理由なのかもしれない。生み出しておいて名前を決めないなんて、これだから神という存在は……。
冒険者ギルドにも行きたいが、まずは名前を決めてしまおう。いつまでも、少女とかではいけないだろう。うーむ、何て名前が良いだろう。
「あ、ルリ! こんなところにいた。駄目じゃない。はぐれちゃ」
ルリという名前か、良いな。
「え? ルリ?」
俺はいきなり背後から聞こえた声に振り返った。そこには、髪の毛をツインテールにしているルリと呼ばれた少女を大きくしたような子がいた。
あれれ? 精霊のお姉さんの登場ですか?
ルリちゃんと手をつないでいた俺のことが視界に入ったのか、まるで不審者でも見るかのような視線を向けてくる少女。
ふむ、誤解を招いているようだな。
「あの、どちら様ですか? ルリと手をつないでいるみたいですけど……まさか、誘拐!!」
「いや、これは違うんだ。これはルリちゃんの方から」
「ルリの名前を知ってる! 確信犯ですね!」
「違います!」
誤解を解くのに時間はそうかからなかった。アルマという強力な味方がいたからだ。1人だった時を思うと、完全にアウトだっただろうな。
ちなみに、この2人は普通に人間の親から産まれてきたそうだ。
俺の推理は、完璧だったと思ったのにな。
「すいません。あまり人に懐くことのない妹が男の人と手をつないでいるのを見てしまったもので、気が動転してました」
2人で買い物をしようと大通りに来ていたのだが、目を離した隙にルリちゃんがどっかに行ってしまい、焦っていたそうだ。
やっと見つけたと思ったら、男と手をつないでる状況だった。……うん、驚くな。
「誤解が解けたようで安心したよ。それにしても、出会ったばかりの時にアルマの方を見て何か理解したように頷いてたけどあれは何だったのかな?」
どうしてもあの時のことが気になった俺は、ルリちゃんに質問をすることにした。モヤモヤしているよりも解決したいのだ。
「精霊に頼まれたの。案内してあげてって」
「また、そんなことを言って」
姉のセリちゃんはため息をついていた。
精霊が視える魔眼なのか? ここはアルマに聞いた方が良いな。
アルマに聞こうと顔を見ると驚いた顔をしていた。
「精霊が視えるんですか?」
「うん。よく目を凝らさないと見えないけど、小さいのが人にくっつくように宙に浮いているのが視えるよ。お姉ちゃんみたいな耳の長い人は、他の人に比べてはっきり視えてたけど頼まれたのは初めて」
それを聞くなり思案顔になってしまった。
「あの、この子の言うことは適当なことが多いので精霊が視えるというのも空想のことだと思いますよ? 自分のことをエルドレーネ様の娘と信じているような子なので」
セリちゃんは信じていないようでそう言ってくるが、俺たちはつい先ほどのことがあるからな。……エルドレーネ様の件は置いておく。
あれ、待てよ。確かルリちゃんは俺の方を見て、「見えない」と言ってたよな。さっきの話から推測すると普通の人には精霊がついてるみたいだから、ついてない俺に興味を持って近づいてきたということか。
「冒険者ギルド、行かないの?」
すっかり忘れてたが、ルリちゃんの言葉に俺たちは冒険者ギルドに向かおうとしていたことを思い出した。
「せっかくだし、冒険者ギルドまで案内してもらおうか。どっちみち誰かに聞こうと考えていたし、問題ないだろう」
「そうですね。冒険者ギルドに行ってみんなと合流したほうが良いですね」
何かを考えるようにしていたアルマは俺の言葉にハッと我に返り、賛同してくれた。
後で何を考えていたか教えてもらおう。
俺たちは姉妹に案内されながら、冒険者ギルドに向かった。




