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お酒

「まさか、ソウイチにまで聞かれていたとは思ってなかったわ」


 人の顔を見て、ため息をつくのは失礼だと思う。


「ちなみに、アルミラの潜在能力が凄いと言ってましたがどう凄いんですか?」

 

 おっと、答えづらい質問をされてしまった。


 アルマは、少しでもいい方に話を進めようとしたのだろうが、詳しく俺が知っているわけではないので逆効果だったりする。


 どうって言われても、それは知らないので。


「どう凄いのか具体的にはわからないがとても凄いんだ。これは確実だ」


「……はあ、ソウイチは肝心な部分がダメダメですね」


 正直に答えたのだが、ミリカに呆れられてしまった。


 仕方ないだろ、言った本人がそれしか言ってなかったんだから。具体的に聞こうとしてもすでにいないし、確かめようがない。


「別にそんなことを言って、励まそうとしなくてもいいわよ」


「いや、本当のことなんだ。俺の清い眼を見てくれ」


「……はいはい」


 適当にあしらわれてしまった。


「それにその情報は誰から聞いたのよ?」


 またしても言いにくい質問が来たな。


 一番因縁のある相手からの情報だが、言ってしまっても良いものだろうか。


「どうしたのよ、黙っちゃって。やっぱり、嘘だったの?」


 黙ってる俺を見て、不審に思ったのか問いかけてくるアルミラに対してまあいいかと軽い気持ちで打ち明けることにした。


「……その情報はアスト=ウィーザから聞かされたんだ。戦闘狂のあいつが言ってたよ。将来は、僕を超える存在になれるってさ」


「……そう。だから、私だけを見逃したんだ。もしかして、襲ってきた原因も」


 アスト=ウィーザの名前を言ったのは失敗だったかと思うほどに、悲し気に呟いていた。


 あ、これは本人に言わない方が良かったか? 


 この微妙な空気を変えようとしたのか、アルマが口を開いた。


「私は友達として一緒にいたいんです! 初めての友達なんですから!」


 前後の脈絡が無いけど、空気は変わったな。重い方に。


「そうですよ。また、女子会をして話をしましょうよ!」


 これは、俺も続いた方が良いな。


「俺の武器選びだって、終わってないだろう!」


 俺の言葉にそれは無いだろうと2人が視線を向けてくる。


 ジョ、ジョークのつもりだったんだ。……空気読めてなくてすいません。


 俺たちの言葉に対して、アルミラは無言のままだった。


 このパーティーメンバーが嫌だったり、もう冒険者なんて危険な仕事をしたくないから村に帰るというならわかるが、そうではなく自分から身を引くのはあまりよろしくないと思う。……思うが、もう決めてしまったのなら、無理強いも良くないよな。


 俺はアルミラが注いだグラスをおもむろに手に取り。


「……まあ、俺たちが何を言おうと決めるのはアルミラだ。後悔しないように決めてくれ。ただ、これだけは言っておきたい。今のお前のパーティーメンバーは俺たちだ。昔の仲間も大切なのはわかるけど、飲むなら一緒に飲もうぜ」


 そして、俺はグラスに注がれていたお酒を一気に呷った。


 結構、度数きついな。喉が焼かれそうだ。 


 だが、それを表情には出さないようにしつつ、何でもないようにグラスをベンチに置く。


 あ、落とした。


「そうですね。一緒に飲みましょうよ。私だってもう大人で飲めるんですから」


 そう言いながら、ミリカもグラスを手に取り、一気に呷った。


 と思ったら、吹き出した。俺に向かって。


「げほっ……げほっ!」


 ミリカはこんなに度数がきついとは思ってなかったのか、咽ていた。


 うわー、服がとてもお酒臭い。というか、汚い。……いや、ご褒美なのか? いかん、酔ってきたみたいだ。


「アルミラの悲しみを理解することはできませんが、話すだけでも楽になることがあるんですよ?」


 アルマもグラスを手に取り、一気に呷る。


 さすがにミリカのように吹き出したりはしないだろうと思っていたのだが、一応距離を置くことにした。だが、飲み干したと思った瞬間に崩れ落ちた。


「は?」


 近寄ってみると寝ているようで、規則正しい寝息が聞こえてきた。


 まさか、こんなにお酒に弱いとは……。


 すると、突然アルミラがクスクスと笑い出した。


 何事だと振り向いてみると、ミリカもお酒にやられたのか眠ってしまったようで膝枕されながらベンチに横になっていた。


「どうしたんだ? いきなり、笑い始めて」


 お酒を飲んでいる風には見えなかったが、酔ったのか?


「何でもないわ。でも、そうよね。今のパーティーメンバーはここにいるみんななのよね」


 そんな言葉とともに持っていたグラスのお酒を一気に呷った。


 何事もないように飲み干し、笑顔を見せた。その笑顔は何か憑き物が落ちたような感じだった。




「寝ちゃった2人はどうしようか」


「教会に運びましょう。シンシアさんに頼めば、なんとかしてくれるでしょ」


 その言葉を聞くと同時にアルマをおんぶしようとしたのだが、倒れてる人をおんぶするのは中々難しいことに気づき、お姫様だっこをすることにした。


 夜だし、間違えてある部分に触ったとしても、不可抗力だよな。俺も酔ってるみたいだし。


「ソウイチ……」


 はい、そんなことはしませんし、なりません。


「明日になったら2人にも言うけど……これからもよろしくね」


 俺は、言葉の意味を理解し。


「ああ、こちらこそ」


 そう返した。

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