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報告

 アルマも意識を取り戻したので、街に戻ることにした。その道中で操られていた時のことを説明し、大金をはたいて買ったアクセサリーを神様の元に送り届けてしまったことを告げる。


「お役に立ったのなら、良かったです。特にまだ加工はしてませんでしたし」


 本人はあまりあのネックレスに固執してるようではないことに安堵した。


 大事な物だったんですと言われたら、後味悪い結末になってただろうしな。この場合は仕方ないとも思うが。


「それよりも女神様が何とかしてくださるのでしたら、もう安心ですね。アストさんもこれで成仏できますし、一件落着というやつですね」


 それもそうだな。今は、誰一人怪我を負うことなくアスト=ウィーザを倒せたことを喜んでおこう。




「お前らか。前回一度会ったきりだがよく覚えてるぞ」


 冒険者ギルドに今回のことを報告し、国から賞金を懸けられていたアスト=ウィーザを倒したと言ったらまたギルドマスターの部屋に呼ばれた。


 Aランクの魔物を発見するだけでも大事だったが、今度は魔王の幹部を倒したというんだから、それ以上の大事だしな。呼ばれるだろうことは容易に想像できた。


「あー、あらましは受付嬢から聞いてるがお前たちの口から直接聞きたい。ここで話してくれるか?」


 ということなので、打ち合わせ通りミリカが話すことになった。最初に遭遇してたのはミリカだから、ということでの人選だ。


「わかりました。では、私からお伝えします。私がCランクへの昇級試験を行ってるときに奴は何処からともなく道に出現したんです。そして、こう言いました。”君たちはここで死んでもらう”と。その直後にいきなり斬りかかられて戦闘になったんです」


 ……うーん、最初から思ってたが狂ってるやつという感想しか出てこないな。


「私と他の冒険者たちは、必死に抵抗しました。ですが、抵抗虚しく一人、また一人と倒れていく中で咄嗟の機転により、私の……私の撃った最上級魔法が3発命中したのです!」


 なんか、どんどんヒートアップしていってるな。


 特に魔法を放ったくだりの声はとても力を感じた。


「ですが、あろうことか私の最強の魔法を受けても彼は耐えていたのです。最後には、魔力の無くなった私と名前は知りませんが剣を構えた冒険者だけとなったのです。私の魔法で著しく消耗していた彼に止めを刺すにはあと一手足りませんでした」


 俺が到着した時に、あいつはそんなに消耗してたっけ?


「そこに来たのが私の仲間たちだったのです。私の華麗な指揮により、哀れ魔王の幹部であるアスト=ウィーザは倒れ、灰となって消えてしまったのです」


 俺の知ってる話と食い違いがあるな。わかるよ? 全部のことを正直に話しても信じてくれないだろうことは……。女神様の下りとかは特に。でも、もう少し言い方を変えても良いと思うんだ。


 俺がじとーっと見ているのが分かったのか、サムズアップしてどや顔になったミリカ。


 打ち合わせでの話と違うじゃねーか。と目で伝えようとしたのだが、全然伝わらない。何が、”真実はあまり変えず現実味を帯びた報告をしてあげましょう”だよ。

 

 人選ミスった感がある。


「なるほどな。でも、証拠は無いんだよな」


「疑っているということですか?」


「まあ、はっきり言うとそうだ。お前たちは最高でもそこにいる赤い髪の嬢ちゃんがCランクだ。実力的に信じられないというのが本音だ」


「人の強さはランクでは測れませんよ?」


 何か今良いこと言ったな。


「それもそうなんだが……」


「わかりました。そんなことを言うのでしたら、ソウイチの出番ですね」


 俺の出番?


「ソウイチの蹴りの威力を見れば、納得するはずです。かつて、武器屋を半壊させたソウイチの蹴りの威力を見れば」


 ちょ、ちょっと、待て! その言い方だと、俺が武器屋を直接破壊したみたいじゃないか。俺にそんな破壊衝動は無いからな!


「そ、そんなことしたのか、お前……。人は顔で判断できないというのは本当らしいな」


「ち、違います。誤解です。あれは直接ではなく、間接的にと言いますか……」


「でも、破壊したことは事実なんだろ?」


「……はい」


 まさか、ギルドマスターにまで引かれることになろうとは……。


「はあ、ったく。分かったよ。信じる……ただ、今回は事が事だ。賞金も王都に行かなければ払えない額だから。……ちょうど、良いか。王都にいる魔術師には嘘を見抜ける魔法の使い手がいる。そこに行って真実を報告してこい、紹介状は書いてやるから」


 なんだろう。王都に行けるというわくわく感よりも、このやるせない感じは……。

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