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「……街にある剣のどれかに移ったのは問題だと思うんだけど、さっきの様子ならそんなに焦る必要はないんじゃない?」


「ですが、もしもの場合も考えられると思いますので早急に街に戻った方が良いと思います!」


 ……いつもよりも、強い口調で俺たちに提案するアルマ。


「私も街に戻りたいのですが、怪我をして倒れてる冒険者さん方を魔物から守る役割をする人も必要だと思いますので、ここに残ります。みなさんは一刻も早く街に向かってください」


 ……街に戻るのは良いんだが、その前に確認しとこう。


「なあ、アルマ。俺の名前を呼んでみてくれないか?」


「こんなときに何を言ってるんですか、ソウイチさん。今はそれどころではないはずですよ」


「……変ね。アルマがソウイチのことをさんづけで呼ぶことは無くなったはずだけど?」


「あ、つい。昔のくせで呼んでしまったんです」


「なら、私たちの名前も呼んでみてくれない?」


「こんなときにみなさんどうしてしまったんですか?!」


 いや、どうしてしまったのはむしろこちらが聞きたいくらいで。


 俺たちは頷き合い、アルマを抑えつけた。


「ちょっと、なんで私を羽交い絞めにするんですか?!」


 俺がアルマを背後から羽交い絞めにし、アルミラとミリカが服の中を探り始めた。

 

 そもそも言葉を発していたのに、口が全く動いてなかったことにこいつは気づいてなかったのか。


 どうやって、アルマの声を真似たのか知らないが情報不足で演技するのは無理があったようだな。


「あれ、ネックレス付けてたのか?」


「そういえば……」


 ミリカが呟くと同時に上の服のボタンを外し始めた。


「ソウイチは目瞑っといて」


「ちょ、やめてください!!」


 目を瞑ると今まで意識してなかった髪から漂ういい香りが……。


 そして、当然のごとくアルマの主張は無視する。抵抗しているようだが、全然力を感じない。


「ありました。これが原因のようですね」


「え、どれ? 目瞑ってるからわからないんだけど。もう、目開けて良い?」


「駄目に決まってるでしょ」


「なんでばれたんだ。くそ!!」


 アルマの声真似はもう効き目が無いと悟ったのか、地の声になった。


 ごそごそやってるのは分かるが、何をやっているのかわからない。


「もういいわよ。目開けても」


 その言葉に俺は目を開き、前の方を確認すると。


「なんだ、服は戻したのか」


「当たり前でしょ。こんなときに何言ってんのよ。獣」


 あ、つい、本音が。


 服の上に出てたネックレスを確認すると、小さい剣の装飾が付いていた。しかも、血管のように細い線が浮いている。


 こんなものも依り代にできるのか。


「誤算だった。てっきり、こんなものにも憑依できてしまうとは……」


 あっ、俺は気付いてはいけないことに気づいてしまった。


「このネックレスの長さ……」


「長さがどうしたの?」


「アルマの胸にこいつは埋まってたってことか!!」


「……気持ち悪いですよ、ソウイチ」


 仕方ないだろ、男として考えてしまうんだよ。


「気持ち悪いソウイチは置いておいて。これ、どうすれば良いと思う? 下手に触って、操作されるの嫌だし」


 もう病原菌みたいな扱いになってるな。


「また自爆して、どこかに移るのも避けたいですよね」


「……僕を汚物みたいに言うのはやめてくれないかな」


 何か、隔離できる場所とかないものか。


「あ、思い出したんだけど、ソウイチ。あの女神様からお守り貰ってたでしょ。あれに何かあるんじゃないの?」


 アルミラの言葉にポケットの中に入れていたお守りを出す。


「これか? 特に何かある感じはしないけど」


「な、何だ? そのふざけた神気を放ってるものは?!」


 神気なんてものが出てるのか、このお守りは。


 あ、もしかして。


「ちょっと、それは迂闊すぎるんじゃない?!」


 俺はさっきこいつの剣を持っていたが、精神操作は受けていない。つまり、こいつを持っても影響を受けないんじゃないかと考え、アルマからネックレスを取った。


「さきほども僕の精神操作を受けなかったのはそれが原因か! 忌々しいものを持っていたものだね!」


 声からして悔し気な感じが伝わってくる。


 本当に女神パワーが詰まっていたらしい。今度会えたらお礼言っとくか。


 ネックレスを取ると同時に精神操作から解放されたアルマは、先ほど操られていた冒険者の男と同じように気絶した。ゆっくりと地面に横にさせていると、頭の中に響くような声が聞こえた。


『あーテステス。こちら女神でーす。こほん。いやー、助かったよ。あとはこちらでやっておくから。そのネックレスをお守りの中に入れてもらえるかな』


「はい?」


「どうしたの?」


「いや、何か女神様から声が……」


「女神様?」


『良いから早く入れなさいよ。こっちも暇じゃないんだから』


 この女神様は短気だな。


 俺は女神様の言葉に従い、お守りの巾着を開きその中にネックレスを入れた。


「待て、こんなふざけたものの中に入れ……」


 全部入った瞬間にネックレスの感触は消えた。


『はい、どうもー。後はこちらで始末しておくから。じゃ、機会があったらまた会おうね。ぷつん』


 そう言い残し、女神様からの声は聞こえなくなった。


 最後の擬音は自分で言うのか。

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