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再会

「あ、すっかり忘れてた」


 俺はDランクへの昇級試験のため、ギルド職員の人と西の森に来ていた。


 討伐目標はポイズンバタフライという魔物で、森の奥の方に行けば比較的簡単に遭遇するそうなのだが。


「あのー、ハイドの魔法を使ってもらうことってできますか?」


「ハイドの魔法ですか?」


 俺の体質を忘れていた。奥の方に歩いて移動しているのだが、今回もまったく魔物に遭遇しない。


「試験に対して、職員である私が援助を行うのは禁止されてます」


 ……詰んだ。これでは、試験を合格することができない。


「職員でない方からなら良いんですよね?」


「今回の試験は個人の力量を試すものですから、あまり他の方から援助を受けるのは好ましくないですよ。できれば、自分自身の力で解決して欲しいです」


 試験受ける前に魔法かけてもらえばよかった。


 何とかして見つける方法を考えないと。


 


 ……まあ、無理ですよね。


 あの後、森の中をひたすら歩き回ったのだがやっぱり遭遇しない。


「おかしいですね。森の中をこれだけ歩いているにも関わらず、魔物に遭遇しないなんて」


 ギルド職員の方は汗を拭いながら疑問の言葉を口にする。


 やっぱり、ここは魔法をかけてもらおう。いくら歩いてもこれでは無理だ。それにこの状況を知ってもらえたし、納得してくれるだろう。 


「自分は虫の魔物に嫌われてるみたいなんですよ。森の中に入っても魔物に遭遇しないので、いつも仲間にハイドの魔法をかけてもらってるくらいなんです」


「そんな体質聞いたことありませんが、この状況では……。確認なんですが、虫系の魔物が寄ってこない魔道具等は使ってないですよね」


「はい、使ってないです」


 そんな魔道具もあるのか。


「うーん……初めての事例すぎて私では判断できないので、一度ギルドに戻って上に相談してみないと何とも言えないですね」


 俺たちは冒険者ギルドに戻ることになった。




 冒険者ギルドに戻ると、試験を終えたのかアルマがアルミラとテーブルに座って談笑していた。


「あら、おかえり。合格おめでとー」


「おめでとうございます」


 2人はもう俺が合格したと思ったのかお祝いの言葉を言ってくれる。


「いや、まだ試験自体できてない。俺の体質忘れててポイズンバタフライに遭遇できなかった」


 そう言うと、アルミラは呆れたように。


「ギルド職員の人はかけてくれなかったの?」


「個人の力量を試すものだから、そういうことはできないんだってさ」


「ふーん、もう少し柔軟に考えても良いと思うけどね。なら、私がかけとく?」


 そんな話をしていると、いきなり出入り口の扉が勢いよく開け放たれた。


 何事だとみんなが注目していると、扉のところにいるギルド職員が叫んだ。


「魔王の幹部が!! 魔王の幹部が、南の草原に!!」


 その職員の服は所々刃物で斬られた跡があり、血だらけだ。その男性はとても焦ってきたのか汗だくで切羽詰まったような顔をしていた。


「南の草原にはミリカが護衛試験で行ってるわ!!」


 俺たちは席を立ち上がり、急いで南門に向かった。

 



 南門にいた衛兵の制止を振り切り、草原を南下していくと何本ものアイスランスが突き刺さった大地や焦土になっている場所を所々に見かけた。


 無事でいてくれと願いながら、走っていくと。


「ミリカ!!」


 倒れてる人たちを守りながら、魔王の幹部と相対してるミリカと1人の冒険者を見つけた。


「ソウイチ!!」


 ミリカは無傷のようだが、前衛の役目を果たしていたその男の冒険者は血だらけだった。


「おや? 誰かと思えばあの時の人間じゃないか。また会えるなんてね」


 俺に声をかけてきたのは、やはりというか魔王の幹部アスト=ウィーザだった。前回会った時と変わらない姿でそこにいた。手には折ったはずの明滅している剣を持っている。


 近いうちって言ってたけど、あまりにも近すぎだろう。しかも、本当に復活してたのか。


 倒れてる冒険者やギルド職員たちは、まだ息があるがとても動ける状態じゃない。


 アスト=ウィーザは遊んでいたのか、その人たちは多くの切り傷を負っているが腕や足を切り落とされたりといったことはなかった。


 それでも、周辺を赤く染めている光景は凄惨だ。


「……加勢か。助かる」


 血だらけになった冒険者は俺の方を見ずに敵から目を背けまいと相対していた。


 俺は歩き、その冒険者の隣に立つ。俺だけ先行していたようで、まだアルミラとアルマは来ていない。


 アスト=ウィーザは俺たちの方をただ見ているだけで襲ってこなかった。剣を構えず持っているだけなのを見るに強者の余裕だろうが、俺に一度消滅させられているのを忘れてしまったのだろうか。


「お前、1人だけか?」


「後から増援が来ます。先行してきてしまったので……」


「そうか。なら、それまで持ちこたえるぞ」


 別に増援が来る前にあれを倒してしまっても構わないのだろうとか、言ってみたかったがこの雰囲気ではさすがに言うのは躊躇われた。それにフラグになりそうだし。


「別に増援が来る前に倒してしまっても構いませんよ、ソウイチ!!」


 まさか、ミリカに言われるとは……。

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