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ミリカの筆記試験

「では、Cランクへの昇級試験を行います。制限時間は1時間。……始め!」


 昇級試験の会場は、冒険者ギルドの2階にある部屋。普段、俺たち冒険者は入室できない場所だ。そこで今、ミリカや他の受験生が試験を受けている。


 それにしても大きな声だな。1階にまで響いてきたぞ。


「なあ、Cランクへの昇級試験って何やるんだ?」


 俺たちや他のパーティーのメンバーだろう人たちはミリカ達が昇級試験を行っている間、ギルド内で談笑して時間を潰している。


「1次試験が筆記試験で2次試験が護衛試験ね。Cランクから上になるためには、それ相応の知識も必要となるの」


 日本の試験を思い出すな。


「どういった知識を試してるんですか?」


「Cランクへの試験だから、魔物の生態や色々な薬草の特徴などね。私が受けたときは意外に簡単だったわよ。クエスト受けてれば自然と身に着いた知識だったからね。アルマなら楽勝よ」


 そこに俺は含まれないの?


 一瞬俺をちらっと見たけど、すぐに視線を逸らすのはやめて欲しい。


 昨日はあの後、女子会をやったようで冒険者ギルドで合流した時にアルミラから話を聞かされた。起こったことは全て話したそうで、2人とも協力してくれるそうだ。アルマは元同僚を倒すわけだが。


「アストさんとは交流も無かったですし、人を殺すことに快楽を得ていたような人だったので倒すのに躊躇はしませんよ。それにこの世界全体に悪影響を及ぼすのなら、なおさら放っておけません」


 逆に倒してやると意気込んでいたほどだったとのこと。


 魔王の幹部同士の仲って、結構悪かったのか? よく一緒のところに住んでたな。


 それと今日、筆記試験があるにもかかわらず女子会なんてやっていて大丈夫なのかとミリカのことが心配になった。


 2人に聞いてみると問題は無いらしい。


 筆記試験と聞くと身構えてしまうのは、俺だけのようだ。




 そして、ミリカ達受験生が試験を開始し、1時間が経過したようで。


「そこまで! ペンを置き、試験用紙を回収するまで座ったままでいること」


 また2階から大きな声が響いてきた。


 時間がかからず受験生たちが降りてくる中にミリカがいたので、手を振ってやる。


「それでどうだったんだ?」


「私を誰だと思ってるんですか? 博識で有名なミリカですよ。筆記試験程度余裕ですよ」


 有名だったのか。それにしては初めて聞いたぞ。


「お疲れ様。採点後だから、護衛試験はお昼過ぎてからよね?」


「そうですね。それまでは暇ですね」


「でしたら、少し早いですけど昼食でも取りませんか? 良い喫茶店を見つけたんです」

 

 アルマはフットワークが軽いな。いつも同じ店で済ませる俺とはえらい違いだ。


「時間もありますし、行きましょうか」


「特に甘味が絶品でして。やみつきになると思いますよ」


 さすが、女の子。アルマの一言で2人の目が鋭くなった。


 どこの世界でもスウィーツは大人気だな。


「そうと決まったら、すぐに行きましょう!」


「迅速に席を確保しましょう!」


 ……あれ、俺何も発言してないけど決定なの? いや、別に反対するわけではないけど意見を聞いてくれても良いと思うんだ。


 2人は立ち上がり出口に歩いて行ってしまった。


「……ええと、ソウイチは良かったですか? 勝手に決めてしまいましたが」


「問題ないよ。俺もお腹が空いてたんだ」


 優しさが心に染みる。




 昼食を済ませた俺たちは冒険者ギルドに戻ってきた。


 クエストを張り出しているボードとは別のボードに今回の筆記試験の結果が張り出されているとのことで確認すると。


「ふっ、私にかかればCランクの筆記試験ごとき敵ではありません」


 合格者の名前にミリカの名前が入っていた。


 まあ、5人中5人が合格していたからアルミラの言う通りそんなに難しくなかったんだろう。


 これで1次試験が合格になるので、お昼から2次試験である護衛試験ができる。


 当然と言ってはいるが、やはり合格は嬉しいのか舞い上がっているようだ。


「ちなみに護衛試験って何をやるんだ?」


「ギルド職員を指定の場所まで護衛するのよ。職員は基本何もしないけど、危なくなったら助けてくれるから本物の護衛クエストとは違うんだけど、慣れておきましょうという考えらしいの」


 なるほど、予行演習というか雰囲気を感じるためのクエストなのか。


「アルマとソウイチもお昼からの試験になったんだっけ?」


「はい。頑張ってきます!」


「そうだな」


 実は俺とアルマも朝に昇級試験の申請をしていた。俺たちの試験内容は至ってシンプルで指定された魔物を職員の前で討伐するだけだ。


「一応、アスト=ウィーザの件もあるから気をつけてね」


 心配してくれるのは嬉しいんだが、どうにもフラグに聞こえてしまう。

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